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嫌われ者の魔法使い3
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王様は息をのむ。
魔法使いではない王様は、何が起こったのか理解できなかったのだ。
「本当に国境に魔法がかけられたのか確認を!」
王様が大臣に命令する。ペテンにかけられて戦争直前に宝石を奪われるのだけは御免こうむりたい。
夜露は「対価を」と言ったが王様は「確認の方が先だ」と言い返した。
魔法使い達は今までの光景にざわめき、魔法使い以外は困惑の表情を浮かべて何かを囁きあっていた。
結果が確認されるまでの期間、夜露は自宅待機を命じられた。
王族も貴族もだれも宮殿の客室にみすぼらしい夜露を案内したいとは思わなかったからだ。
王都に屋敷を持つものも、誰も夜露を家に招きたいとは思わなかった。
ぼろぼろのみすぼらしい魔法使いが本当に何らかの奇跡を起こせるとは疑わしかった。
王様は王国と懇意にしていた魔法使いと騎士たちに確認を命じた。
魔法使いと騎士たちが国境付近に実際に向かって魔法の効力を確認した。
魔法は確かにかけられていた。
国の外へ行こうとすると、いつの間にか、国境付近の元の場所に戻ってしまう。
それに外からその森に入ろうとしても同じだった。
普段は通る筈の商人たちですら人っ子一人国内に入ってくる人影は無かった。
それはどの国境付近でも一緒だった。
魔法使い達は慌てて、札を作り始めた。
このままでは貿易も何もできなくなってしまうからだ。
外交だって必要だ。
荷馬車一台通れない国ではやっていけない。
魔法使い達が作った迷い避けの札は外交官を中心に配布され関所にも置かれた。
けれど、夜露には誰も連絡をしなかった。
夜露には友も誰もいなかったから誰も彼に連絡しようと思わなかったのだ。
夜露は迷いの森が実際どうだったのか、札はちゃんと機能しているのか、何も聞かされることは無かった。
夜露はひとり王様が対価についての連絡をくれるのを待っていた。
結局、隣国の兵士は夜露の魔法で王国にたどり着くことはできなかった。
どんな素晴らしい武器を持っていても、どんなに速く走る馬をもってしても、どんなに訓練された兵でもそこにたどり着けないのであれば意味が無い。
戦争は回避された。
しばらく隣国はあの手この手で王国に兵を送ろうとしていたけれど、どの方法も失敗して、ついに戦争を起こすこと自体を断念したようだった。
けれど、その事実を喜ぶ人はあまりいなかった。
外からも中からも行き来が難しくなってしまった。王国の生活を立て直すのに精いっぱいだったからだ。
救国の英雄が誰だったかを考えるよりも、新しくなった関所の仕組み、貿易の仕方になじむことで皆頭がいっぱいだった。
だれも夜露の働きを思い出すことも無ければねぎらうことも無い。
感謝することも無かった。
あの時王宮にいた王侯貴族でさえもそうだった。
ただ、紅玉だけは、国王様に「くれぐれも対価をお支払いするように」と伝えていたが、国王はそのことをすぐ忘れてしまっていた。
夜露は少しずつ呪いに変わっていく魔法を抱えたまま、王国からの連絡を待ち続けた。
それがいけなかったのかもしれない。
何も言わない魔法使いはいつしか『迷いの森』を作った悪い魔法使いだ。と言われ始めた。
望まれて使われたはずの魔法はいつしか、迷惑で酷いものと思われるようになっていた。
それを使った魔法使いが王国の民から嫌われるのにさほどの時間はかからなかった。
結局この国に隣国の兵士は攻めてこなかったのだ。
本当に戦争がおきようとしていたかを、民たちは知ることができない。
みな、意地悪な魔法使いが迷いの森を作ってしまったと信じ込んでしまった。
しばらく経ってから夜露は王宮に対価を支払う様にと連絡をした。
けれど王様は悪いうわさが立ったことををいいことに、夜露からの連絡を無視して、褒賞を与えることは無かった。
嫌われ魔法使いに関わってはいけない。
悪く言われる人間には言われるなりの理由があるのだろう。
皆そう考えて、誰も夜露と連絡を取ろうとしなかったし会いたいとも思わなかった。
魔法使いではない王様は、何が起こったのか理解できなかったのだ。
「本当に国境に魔法がかけられたのか確認を!」
王様が大臣に命令する。ペテンにかけられて戦争直前に宝石を奪われるのだけは御免こうむりたい。
夜露は「対価を」と言ったが王様は「確認の方が先だ」と言い返した。
魔法使い達は今までの光景にざわめき、魔法使い以外は困惑の表情を浮かべて何かを囁きあっていた。
結果が確認されるまでの期間、夜露は自宅待機を命じられた。
王族も貴族もだれも宮殿の客室にみすぼらしい夜露を案内したいとは思わなかったからだ。
王都に屋敷を持つものも、誰も夜露を家に招きたいとは思わなかった。
ぼろぼろのみすぼらしい魔法使いが本当に何らかの奇跡を起こせるとは疑わしかった。
王様は王国と懇意にしていた魔法使いと騎士たちに確認を命じた。
魔法使いと騎士たちが国境付近に実際に向かって魔法の効力を確認した。
魔法は確かにかけられていた。
国の外へ行こうとすると、いつの間にか、国境付近の元の場所に戻ってしまう。
それに外からその森に入ろうとしても同じだった。
普段は通る筈の商人たちですら人っ子一人国内に入ってくる人影は無かった。
それはどの国境付近でも一緒だった。
魔法使い達は慌てて、札を作り始めた。
このままでは貿易も何もできなくなってしまうからだ。
外交だって必要だ。
荷馬車一台通れない国ではやっていけない。
魔法使い達が作った迷い避けの札は外交官を中心に配布され関所にも置かれた。
けれど、夜露には誰も連絡をしなかった。
夜露には友も誰もいなかったから誰も彼に連絡しようと思わなかったのだ。
夜露は迷いの森が実際どうだったのか、札はちゃんと機能しているのか、何も聞かされることは無かった。
夜露はひとり王様が対価についての連絡をくれるのを待っていた。
結局、隣国の兵士は夜露の魔法で王国にたどり着くことはできなかった。
どんな素晴らしい武器を持っていても、どんなに速く走る馬をもってしても、どんなに訓練された兵でもそこにたどり着けないのであれば意味が無い。
戦争は回避された。
しばらく隣国はあの手この手で王国に兵を送ろうとしていたけれど、どの方法も失敗して、ついに戦争を起こすこと自体を断念したようだった。
けれど、その事実を喜ぶ人はあまりいなかった。
外からも中からも行き来が難しくなってしまった。王国の生活を立て直すのに精いっぱいだったからだ。
救国の英雄が誰だったかを考えるよりも、新しくなった関所の仕組み、貿易の仕方になじむことで皆頭がいっぱいだった。
だれも夜露の働きを思い出すことも無ければねぎらうことも無い。
感謝することも無かった。
あの時王宮にいた王侯貴族でさえもそうだった。
ただ、紅玉だけは、国王様に「くれぐれも対価をお支払いするように」と伝えていたが、国王はそのことをすぐ忘れてしまっていた。
夜露は少しずつ呪いに変わっていく魔法を抱えたまま、王国からの連絡を待ち続けた。
それがいけなかったのかもしれない。
何も言わない魔法使いはいつしか『迷いの森』を作った悪い魔法使いだ。と言われ始めた。
望まれて使われたはずの魔法はいつしか、迷惑で酷いものと思われるようになっていた。
それを使った魔法使いが王国の民から嫌われるのにさほどの時間はかからなかった。
結局この国に隣国の兵士は攻めてこなかったのだ。
本当に戦争がおきようとしていたかを、民たちは知ることができない。
みな、意地悪な魔法使いが迷いの森を作ってしまったと信じ込んでしまった。
しばらく経ってから夜露は王宮に対価を支払う様にと連絡をした。
けれど王様は悪いうわさが立ったことををいいことに、夜露からの連絡を無視して、褒賞を与えることは無かった。
嫌われ魔法使いに関わってはいけない。
悪く言われる人間には言われるなりの理由があるのだろう。
皆そう考えて、誰も夜露と連絡を取ろうとしなかったし会いたいとも思わなかった。
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