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そう言われても私には関係の無いことです
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「は?」
オリヴァーが意味の分からないという顔をしている。
私も意味が分からない。
確かに結婚式では羨ましいことでと言われた気がするが社交辞令だろう。
「彼女には、魔法を無意識に魔法を増幅する力があるんだよ。
魔法使いにとっては何よりも欲しい力だね」
セオはオリヴァーをその横にいるエリザを馬鹿にするように見た。
それを君は今自らの意思で手放したんだ。
そうセオは言うと、目の前が光り輝いた気がした。
光がひいて目に映ったのはこの前彼と面会した教会の一室だった。
「すみません。勝手に連れ出して」
「いえ、それよりも侍女やメイドが心配です」
離縁は書類上なされたけれど、言いがかりはかけられたままだ。彼女達がそのとばっちりを受けるのは避けたかった。
「相変わらず従者にお優しい」
セオが笑った。それは幼いころの表情と同じに見えた。
「安心してください。彼女たちの保護もぬかりなく」
そう言ってからセオは私から視線を逸らした。
彼の視線がそわそわと揺れている。
「勝手に離縁させてしまってすみません」
「別に、それは……。私もスッキリとしましたし」
言ってから改めて自覚する。
とてもスッキリした。むしろすがすがしい気分だった。
けれど、これからどうしよう。
実家に戻れば叱責されるだろうか。
こんな投資が端から無かった形にされてきっと父はカンカンに怒っているだろう。
「それで、……ですね……」
セオは歯切れが悪い。
私の今後が少しばかりまずことに思い至ってるのだろうか。
「実家からは何かしらあるかもしれませんが、大丈夫です。あの生活よりは大概マシですから」
私が答えると「そうじゃなくてですね!! お嬢様はそうやってすぐに自分で決めつけてしまうっ!」とセオが叫ぶように言った。
「あなたの実家とはもう話し合い済みです……。というか、そうじゃなくて」
セオが大きく息を吸って吐いた。
それから私の事をじいっとみて「ずっとお嬢様の事をお慕いしておりました。僕と結婚していただけませんか?」と聞いた。
彼は教会をまかされている魔導士様だ。魔導伯になった話も知っている。
「私の特別な力とやらが必要なんですか?」
「それは違う!」
セオが眉根を寄せて、眉間にしわが出来ている。
彼が困った時にいつもする表情だ。
「僕は本当に、あなたの事をずっと、ずっとっ……」
声がつまって、それから抱きしめられた。
「あなたに特別な力があることを隠していてすみません。
それを伝えればあの家であなたはもっと大切にされたかもしれない」
それに、迎えに来るのが遅くなってすみません。
耳元で言われた声は心細い様な音がしていた。
「いいわ。許してあげる」
子供の時の様に言う。
実家ににも根回し済みみたいだし、私はずっと昔、彼といた時間がとても好きだった。
「その代わり、ちゃんと私と結婚してね、セオ」
昔の様に名前を呼ぶと、至近距離のセオは目を細めて泣きそうな顔をしながら笑った。
* * *
その後、伯爵家がもはや魔法使いではないという通知は取り消されたが、その力にふさわしいという辺鄙な場所の領地が与えられたらしい。
借金もかさんでいてとても伯爵家の領地を保ちきれないと判断された部分も大きかったらしい。
その領地から実質出てこれないらしいよとセオは笑った。
贅沢な暮らしが大好きな義姉にはとても辛い生活だろう。
そんな場所で貴族を招くパーティーは開けないし、その状況になってしまった彼らにまともな援助をしてくれる人間はもういないだろう。
しかも、私にした酷い行動の数々が噂として広がっている。
「もしかして貴方何かしましたの?」
「まさか。お嬢様が命令して無いのにそんな事はしないよ。
魔法使いであるという価値観ではかられる場所にはとてもじゃないけど顔を出せないってだけさ」
そう言っていたけれどあの後知った彼の今の交友関係を考えると怪しいものだ。
けれど、いま私がそれを言ってもどうしようもない。
かわいそうだと言っていた義姉もあの人も今の私には何も関係ない人達なのだから。
「それよりも、お嬢様って呼ぶのはいつおやめくださるのかしら、魔導士様は」
彼との結婚をひかえているというのにいまだにセオは私の事をお嬢様と呼ぶ。
癖になってしまっていると彼は言うけれど、夫婦になるのだから名前で呼ばれたい。
「……マーガレット、様」
様は別にいらないのだけれど、セオが顔を赤くしてるという珍しい表情を見ることができたのでよしとする。
「そう言えば、その手紙は」
私の元に届いた手紙を指さしてセオが聞く。
「さあ、私には関係の無いものでしたから、処分するところです」
かわいそうと言われても私には関係ないんですよ。
そう、思いながら家令に繰り返し送られてきている手紙を処分するように伝えた。
了
オリヴァーが意味の分からないという顔をしている。
私も意味が分からない。
確かに結婚式では羨ましいことでと言われた気がするが社交辞令だろう。
「彼女には、魔法を無意識に魔法を増幅する力があるんだよ。
魔法使いにとっては何よりも欲しい力だね」
セオはオリヴァーをその横にいるエリザを馬鹿にするように見た。
それを君は今自らの意思で手放したんだ。
そうセオは言うと、目の前が光り輝いた気がした。
光がひいて目に映ったのはこの前彼と面会した教会の一室だった。
「すみません。勝手に連れ出して」
「いえ、それよりも侍女やメイドが心配です」
離縁は書類上なされたけれど、言いがかりはかけられたままだ。彼女達がそのとばっちりを受けるのは避けたかった。
「相変わらず従者にお優しい」
セオが笑った。それは幼いころの表情と同じに見えた。
「安心してください。彼女たちの保護もぬかりなく」
そう言ってからセオは私から視線を逸らした。
彼の視線がそわそわと揺れている。
「勝手に離縁させてしまってすみません」
「別に、それは……。私もスッキリとしましたし」
言ってから改めて自覚する。
とてもスッキリした。むしろすがすがしい気分だった。
けれど、これからどうしよう。
実家に戻れば叱責されるだろうか。
こんな投資が端から無かった形にされてきっと父はカンカンに怒っているだろう。
「それで、……ですね……」
セオは歯切れが悪い。
私の今後が少しばかりまずことに思い至ってるのだろうか。
「実家からは何かしらあるかもしれませんが、大丈夫です。あの生活よりは大概マシですから」
私が答えると「そうじゃなくてですね!! お嬢様はそうやってすぐに自分で決めつけてしまうっ!」とセオが叫ぶように言った。
「あなたの実家とはもう話し合い済みです……。というか、そうじゃなくて」
セオが大きく息を吸って吐いた。
それから私の事をじいっとみて「ずっとお嬢様の事をお慕いしておりました。僕と結婚していただけませんか?」と聞いた。
彼は教会をまかされている魔導士様だ。魔導伯になった話も知っている。
「私の特別な力とやらが必要なんですか?」
「それは違う!」
セオが眉根を寄せて、眉間にしわが出来ている。
彼が困った時にいつもする表情だ。
「僕は本当に、あなたの事をずっと、ずっとっ……」
声がつまって、それから抱きしめられた。
「あなたに特別な力があることを隠していてすみません。
それを伝えればあの家であなたはもっと大切にされたかもしれない」
それに、迎えに来るのが遅くなってすみません。
耳元で言われた声は心細い様な音がしていた。
「いいわ。許してあげる」
子供の時の様に言う。
実家ににも根回し済みみたいだし、私はずっと昔、彼といた時間がとても好きだった。
「その代わり、ちゃんと私と結婚してね、セオ」
昔の様に名前を呼ぶと、至近距離のセオは目を細めて泣きそうな顔をしながら笑った。
* * *
その後、伯爵家がもはや魔法使いではないという通知は取り消されたが、その力にふさわしいという辺鄙な場所の領地が与えられたらしい。
借金もかさんでいてとても伯爵家の領地を保ちきれないと判断された部分も大きかったらしい。
その領地から実質出てこれないらしいよとセオは笑った。
贅沢な暮らしが大好きな義姉にはとても辛い生活だろう。
そんな場所で貴族を招くパーティーは開けないし、その状況になってしまった彼らにまともな援助をしてくれる人間はもういないだろう。
しかも、私にした酷い行動の数々が噂として広がっている。
「もしかして貴方何かしましたの?」
「まさか。お嬢様が命令して無いのにそんな事はしないよ。
魔法使いであるという価値観ではかられる場所にはとてもじゃないけど顔を出せないってだけさ」
そう言っていたけれどあの後知った彼の今の交友関係を考えると怪しいものだ。
けれど、いま私がそれを言ってもどうしようもない。
かわいそうだと言っていた義姉もあの人も今の私には何も関係ない人達なのだから。
「それよりも、お嬢様って呼ぶのはいつおやめくださるのかしら、魔導士様は」
彼との結婚をひかえているというのにいまだにセオは私の事をお嬢様と呼ぶ。
癖になってしまっていると彼は言うけれど、夫婦になるのだから名前で呼ばれたい。
「……マーガレット、様」
様は別にいらないのだけれど、セオが顔を赤くしてるという珍しい表情を見ることができたのでよしとする。
「そう言えば、その手紙は」
私の元に届いた手紙を指さしてセオが聞く。
「さあ、私には関係の無いものでしたから、処分するところです」
かわいそうと言われても私には関係ないんですよ。
そう、思いながら家令に繰り返し送られてきている手紙を処分するように伝えた。
了
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