1 / 10
政略結婚と”かわいそう”な義理姉
しおりを挟む
もともと私と伯爵様の結婚は政略的な意味合いの強いものでした。
私の実家は新興貴族と言うやつで、伝統のある昔ながらの貴族との縁が欲しかった。
伯爵家は領地が大きな災害にみまわれて、援助が必要だった。
そして、その災害で両親を失った伯爵は爵位を継ぐために健康な妻と結婚後に生まれるであろう子供が必要だった。
ただそれだけだという事は結婚前から分かっていました。
だから、それほどの期待もしていなかったし冷めた目で「マーガレット」と名前を呼ばれたときにも、ああこんなものかと思っていました。
けれど、伝統のある伯爵家の当主。貴族としての体面を保つために、私を妻として扱って、そして私との間にできた子供は伯爵家の跡取りとして大切にしてくださるものだとばかり思っていました。
「本当にお前は人としての優しさというものがないんだな」
夫である伯爵オリヴァーは私にそう言いました。
「金に意地汚いのは親譲りなのか?」
馬鹿にした様に私に言う彼の顔は私を馬鹿にする気持ちがにじみ出ている様に歪んでいる。
容姿が整ってると社交界で噂されるかんばせがこれでは台無しだ。
「ですが、あの方の開くパーティーはその月だけでももう二度目の予定ですよ」
彼と言い争っているのには理由があった。
私のものを買うのであれば実家からもたされたお金で買えばいい。
伯爵家の財政と切り離されているそれで、生活には別に困りはしない。
今、彼に話しているお金の使い道は、離縁して伯爵家に戻ってきている彼の姉の行動によるものだ。
彼女が伯爵家に戻ってきたのは私たちが結婚してすぐの事だった。
離縁の理由はよく分からない。
配下の者に探らせてみたところ、彼女の性格が多大に影響しているらしいが、この家でそれを口にすることはタブーな様だった。
オリヴァー曰く『婚家で酷い目にあわされた』そうだ。
だから、しばらくはわがままも許してやって欲しい。
そう言われて頷いたのは私だ。
けれど、それがここまでのもので、しかもいつまで続くか分からないものだとは思わなかった。
辛い生活を忘れるために、豪華なドレスや宝石が必要だ。
そう言っては夫は彼女にドレスや宝石を買い与えていた。
しかも商人に態々二人で会って、ドレスや宝石を選んでやっているそうだ。
私はその場に招かれたことが無いから分からないけれど、噂好きのメイドたちによればそういう事らしい。
私にはドレスの1枚も準備しない夫が随分お優しい事だと思った。
結婚指輪でさえ先代の使っていた物にしたいと言っていて了承したのだ。
勿論古いものでもいいものもある。代々受け継がれているものもある。
けれど、それはそういうものではなかった。
災害の負債を返すためにそういう伝統的なもの以外のものを売り払おうとしたときに値のつかなかったガラクタだ。
そう、申し訳なさそうに頭を下げた執事長の顔を私は忘れられない。
その位困窮していたはずの伯爵様は婚家を追い出された義理姉に対しては大層甘い。
口癖は「姉上はかわいそうな方なのだ」だ。
私の実家は新興貴族と言うやつで、伝統のある昔ながらの貴族との縁が欲しかった。
伯爵家は領地が大きな災害にみまわれて、援助が必要だった。
そして、その災害で両親を失った伯爵は爵位を継ぐために健康な妻と結婚後に生まれるであろう子供が必要だった。
ただそれだけだという事は結婚前から分かっていました。
だから、それほどの期待もしていなかったし冷めた目で「マーガレット」と名前を呼ばれたときにも、ああこんなものかと思っていました。
けれど、伝統のある伯爵家の当主。貴族としての体面を保つために、私を妻として扱って、そして私との間にできた子供は伯爵家の跡取りとして大切にしてくださるものだとばかり思っていました。
「本当にお前は人としての優しさというものがないんだな」
夫である伯爵オリヴァーは私にそう言いました。
「金に意地汚いのは親譲りなのか?」
馬鹿にした様に私に言う彼の顔は私を馬鹿にする気持ちがにじみ出ている様に歪んでいる。
容姿が整ってると社交界で噂されるかんばせがこれでは台無しだ。
「ですが、あの方の開くパーティーはその月だけでももう二度目の予定ですよ」
彼と言い争っているのには理由があった。
私のものを買うのであれば実家からもたされたお金で買えばいい。
伯爵家の財政と切り離されているそれで、生活には別に困りはしない。
今、彼に話しているお金の使い道は、離縁して伯爵家に戻ってきている彼の姉の行動によるものだ。
彼女が伯爵家に戻ってきたのは私たちが結婚してすぐの事だった。
離縁の理由はよく分からない。
配下の者に探らせてみたところ、彼女の性格が多大に影響しているらしいが、この家でそれを口にすることはタブーな様だった。
オリヴァー曰く『婚家で酷い目にあわされた』そうだ。
だから、しばらくはわがままも許してやって欲しい。
そう言われて頷いたのは私だ。
けれど、それがここまでのもので、しかもいつまで続くか分からないものだとは思わなかった。
辛い生活を忘れるために、豪華なドレスや宝石が必要だ。
そう言っては夫は彼女にドレスや宝石を買い与えていた。
しかも商人に態々二人で会って、ドレスや宝石を選んでやっているそうだ。
私はその場に招かれたことが無いから分からないけれど、噂好きのメイドたちによればそういう事らしい。
私にはドレスの1枚も準備しない夫が随分お優しい事だと思った。
結婚指輪でさえ先代の使っていた物にしたいと言っていて了承したのだ。
勿論古いものでもいいものもある。代々受け継がれているものもある。
けれど、それはそういうものではなかった。
災害の負債を返すためにそういう伝統的なもの以外のものを売り払おうとしたときに値のつかなかったガラクタだ。
そう、申し訳なさそうに頭を下げた執事長の顔を私は忘れられない。
その位困窮していたはずの伯爵様は婚家を追い出された義理姉に対しては大層甘い。
口癖は「姉上はかわいそうな方なのだ」だ。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
146
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる