けだものだもの

渡辺 佐倉

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本編13

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俺たちはそれからすぐにもう一回顔を合わせた。なんてことはない。
だって、人間だから。

俺はバイトから帰って来たばかりで今日の夜もバイトはある。
休みはその後の二日。

安藤さんは体質で抑制剤を飲むとまた入院になりかねない。だから俺が休みの日に会おうということになった。
安藤さんはその日休みなんですか? と聞いたら「大丈夫」と答えられただけだった。

別に安藤さんに好きって言われた訳じゃないし、俺も好きだと伝えていない。
けれど、何となく重くて甘い雰囲気があった気がするというだけだ。

シャワーを浴びて眠ってそれから、バイトに行った。
いつも通りの生活だった。

ただ、バイトを終えてクラブを出たところで安藤さんが待っていた。

甘い匂いがする気がした。
それは多分誰にも気が付かない位のほのかな匂いでだけど、頭の中にじんわりと広がる様な匂いだった。

◆◇◆


案内された部屋は安藤さんの自宅らしい。
マンション的なところに住んでるっぽい感じだと思ったので案内されたのが一軒家で少し驚いた。

「一人暮らしだから、どうぞ」

安藤さんが玄関のドアを開けてそういった。
おずおずと入ると、安藤さんの匂いがした気がした。

ばたんと玄関のドアが閉まる音がする。
玄関に入ってすぐにキスをするのは、獣だろうか、人間だろうか。

そもそもキスをするのが初めてで普通の人がどんなふうにキスをするのかを俺もよく知らない。

彼が俺の耳元に手を置いてホールドするみたいに頭を撫でる。
それから舌が口内に滑り込む。

安藤さんの匂いが強まった気がした。
俺の匂いはどうだろう。

自分ではよく分からない。

安藤さんの熱くなった舌が俺の上あごをなぞる。
ビクリと体が跳ねる気がして自分でも驚く。

そんな場所普段意識することも無い。
安藤さんの手が優しく俺の髪を撫でる。

それから一旦、ちゅっと音を立てて俺の唇から口を話すと、嬉しそうに笑って再び唇を重ねた。
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