50 / 50
本編
伴侶との明日
しおりを挟む
翌朝目を覚ますと体だけはざっと拭かれているようだった。
隣で横たわるルイスはすでに起きていた。
「おはよう」
「おはようございます」
こうやって目を覚まして一番に挨拶ができるようになるのは結婚をしたものの多分特権だろう。
「貴族の婚姻だから、これで侍従がシーツを取り換える」
湯あみをしたければ浴室まで抱きかかえていくがどうする? と聞かれて腰を確認する。
腰が半分抜けたみたいな違和感はあるし、鈍い痛みもある。
甘えてしまっていいのだろうか。
甘やかな優しい雰囲気を漂わせるルイスに思わずそう思う。
「じゃあ、ご提案に甘えます」
そういうと俺のことを軽々とルイスは抱え上げる。
それから浴室に向かう。
浴室にはすでに湯がはってあって準備は万端だった。
ルイスはすでに体をさっぱりとさせたのか、家着を着ている。
「湯あみをしたら朝食にしよう」
終始何もかも甘い雰囲気でルイスに言われ、俺はこれが新婚の雰囲気なのかと気恥ずかしい気持ちになった。
* * *
それからいくらかの新婚期間が過ぎた。
第二王子の王太子指名が内定した。
正式な戴冠についてはまだもう少し先になるけれど事実上のお披露目となる夜会があるらしい。
俺の胸元にはルイスから最初に贈られたクラバットピンが輝いている。
ルイスの胸元には今日の日のために俺が作ったクラバットピンが輝いている。
何を贈ろうか悩んだけれど、結局これにした。
色は結果として真っ黒で『黒の魔法使い』である俺のものと言っているようで少しだけ気分がいい。
「いつか僕の色のものも贈るね」
そう言ってルイスは笑っている。
呪いがまっさらになった第三王子をみて、貴族たちは皆困惑気味だ。
呪いについて悪しざまに言ってきた人間は、もうそれが無いルイスにどう対応したらいいのかが分からないらしい。
しかもルイスは王太子となる第二王子と協調していくことを宣言している。
そう。ルイスは将来有望は若い王子となったのだ。
第二王子から挨拶がある。
こちらも馬鹿王子と陰で呼ばれてたのが嘘かの様に、知的な話をさらりとしている。
ルイスと二人でいると、一人の貴族が話しかけてくる。
「この度はご婚姻おめでとうございます」
ルイスが愛想笑いで会釈をしている。
「その石はオニキスですかな」
ルイスのしているクラバットピンについてその貴族が聞く。
侯爵なのだとルイスが耳打ちをして教えてくれた。
「ガラス玉ですよ」
俺が答える。
侯爵の顔がものすごく人を見下しているというのを隠さないものになる。
「平民からの贈り物ですか」
ニヤニヤとしながら言う。俺への侮蔑を隠しもしないのは、ある意味すごいなと思う。
真似はしたくはないけれど。
侯爵についていた魔法使いがルイスのクラバットをみて「ひっ……」と悲鳴を飲み込む。
それから侯爵に耳打ちをした。
クラバットピンの元にしたのは透明なガラスのついたポピュラーな平民向けのものだ。
そこに、呪殺無効をはじめとして様々な効果の魔法を付与した結果、真っ黒になってしまったのだ。
今もガラス玉を透かすと魔法に使った文様がガラス玉の中で漂っているのが見える。
そういう、魔法をこめた物は貴族では貴重とされているのは知っている。
魔道具の様に回路として規格のあるものではないオーダーメイド品はロストテクノロジーしてしまったものも多く大変に貴重らしい。
ルイスが喜んだのはやっぱり俺の髪の色の様な色だったので、それでいい。
侯爵はお付きの魔法使いに言われて顔色を変えていた。
「私の伴侶殿は中々のものでしょう?」
ルイスが第三王子の顔をしていう。
美しい宝石の様な瞳を細めてこちらを見た。
俺たちの間には子はできない。
だから、妾をと言われないためのけん制だったのだけれど、どうやらとりあえず成功したようだ。
二人で顔を見合わせて笑みを浮かべる。
ルイスが給仕から受け取ったシャンパンを片方もらって、乾杯をするように掲げる。
グラスを合わせないことはちゃんと勉強した。
「これからもよろしくお願いしますね、伴侶殿」
俺にしか聞こえない音量でルイスが言う。
俺も笑顔を浮かべながら「こちらこそ、末永く」と返すとルイスは一瞬きょとんとした後嬉しそうに笑った。
了
隣で横たわるルイスはすでに起きていた。
「おはよう」
「おはようございます」
こうやって目を覚まして一番に挨拶ができるようになるのは結婚をしたものの多分特権だろう。
「貴族の婚姻だから、これで侍従がシーツを取り換える」
湯あみをしたければ浴室まで抱きかかえていくがどうする? と聞かれて腰を確認する。
腰が半分抜けたみたいな違和感はあるし、鈍い痛みもある。
甘えてしまっていいのだろうか。
甘やかな優しい雰囲気を漂わせるルイスに思わずそう思う。
「じゃあ、ご提案に甘えます」
そういうと俺のことを軽々とルイスは抱え上げる。
それから浴室に向かう。
浴室にはすでに湯がはってあって準備は万端だった。
ルイスはすでに体をさっぱりとさせたのか、家着を着ている。
「湯あみをしたら朝食にしよう」
終始何もかも甘い雰囲気でルイスに言われ、俺はこれが新婚の雰囲気なのかと気恥ずかしい気持ちになった。
* * *
それからいくらかの新婚期間が過ぎた。
第二王子の王太子指名が内定した。
正式な戴冠についてはまだもう少し先になるけれど事実上のお披露目となる夜会があるらしい。
俺の胸元にはルイスから最初に贈られたクラバットピンが輝いている。
ルイスの胸元には今日の日のために俺が作ったクラバットピンが輝いている。
何を贈ろうか悩んだけれど、結局これにした。
色は結果として真っ黒で『黒の魔法使い』である俺のものと言っているようで少しだけ気分がいい。
「いつか僕の色のものも贈るね」
そう言ってルイスは笑っている。
呪いがまっさらになった第三王子をみて、貴族たちは皆困惑気味だ。
呪いについて悪しざまに言ってきた人間は、もうそれが無いルイスにどう対応したらいいのかが分からないらしい。
しかもルイスは王太子となる第二王子と協調していくことを宣言している。
そう。ルイスは将来有望は若い王子となったのだ。
第二王子から挨拶がある。
こちらも馬鹿王子と陰で呼ばれてたのが嘘かの様に、知的な話をさらりとしている。
ルイスと二人でいると、一人の貴族が話しかけてくる。
「この度はご婚姻おめでとうございます」
ルイスが愛想笑いで会釈をしている。
「その石はオニキスですかな」
ルイスのしているクラバットピンについてその貴族が聞く。
侯爵なのだとルイスが耳打ちをして教えてくれた。
「ガラス玉ですよ」
俺が答える。
侯爵の顔がものすごく人を見下しているというのを隠さないものになる。
「平民からの贈り物ですか」
ニヤニヤとしながら言う。俺への侮蔑を隠しもしないのは、ある意味すごいなと思う。
真似はしたくはないけれど。
侯爵についていた魔法使いがルイスのクラバットをみて「ひっ……」と悲鳴を飲み込む。
それから侯爵に耳打ちをした。
クラバットピンの元にしたのは透明なガラスのついたポピュラーな平民向けのものだ。
そこに、呪殺無効をはじめとして様々な効果の魔法を付与した結果、真っ黒になってしまったのだ。
今もガラス玉を透かすと魔法に使った文様がガラス玉の中で漂っているのが見える。
そういう、魔法をこめた物は貴族では貴重とされているのは知っている。
魔道具の様に回路として規格のあるものではないオーダーメイド品はロストテクノロジーしてしまったものも多く大変に貴重らしい。
ルイスが喜んだのはやっぱり俺の髪の色の様な色だったので、それでいい。
侯爵はお付きの魔法使いに言われて顔色を変えていた。
「私の伴侶殿は中々のものでしょう?」
ルイスが第三王子の顔をしていう。
美しい宝石の様な瞳を細めてこちらを見た。
俺たちの間には子はできない。
だから、妾をと言われないためのけん制だったのだけれど、どうやらとりあえず成功したようだ。
二人で顔を見合わせて笑みを浮かべる。
ルイスが給仕から受け取ったシャンパンを片方もらって、乾杯をするように掲げる。
グラスを合わせないことはちゃんと勉強した。
「これからもよろしくお願いしますね、伴侶殿」
俺にしか聞こえない音量でルイスが言う。
俺も笑顔を浮かべながら「こちらこそ、末永く」と返すとルイスは一瞬きょとんとした後嬉しそうに笑った。
了
70
お気に入りに追加
217
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした
ナイトウ
BL
BL小説大賞にご協力ありがとうございました!!
CP:不器用受ガチ勢伯爵夫攻め、女形役者受け
相手役は第11話から出てきます。
ロストリア帝国の首都セレンで女形の売れっ子役者をしていたルネは、皇帝エルドヴァルの為に公式愛妾を装い王宮に出仕し、王妃マリーズの代わりに貴族の反感を一手に受ける役割を引き受けた。
役目は無事終わり追放されたルネ。所属していた劇団に戻りまた役者業を再開しようとするも公式愛妾になるために偽装結婚したリリック伯爵に阻まれる。
そこで仕方なく、顔もろくに知らない夫と離婚し役者に戻るために彼の屋敷に向かうのだった。
森のエルフと養い子
マン太
BL
幼い頃、森の大樹の根元に捨てられたタイド。そんな彼を拾ったのは、森に住むエルフ、スウェル。
直ぐに手放すつもりがそうもいかず…。
BL風味のファンタジーものです。毎回ですが、絡みは薄いです。
エルフ設定は「指輪物語」に近いですが、勝手に妄想した設定も。
やんわりお読みいただければ幸いです。
よろしくお願いします。
※小説家になろう、エブリスタにも掲載しております。
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺(紗子)
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(10/21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
※4月18日、完結しました。ありがとうございました。
異世界のんびり料理屋経営
芽狐@書籍発売中
ファンタジー
主人公は日本で料理屋を経営している35歳の新垣拓哉(あらかき たくや)。
ある日、体が思うように動かず今にも倒れそうになり、病院で検査した結果末期癌と診断される。
それなら最後の最後まで料理をお客様に提供しようと厨房に立つ。しかし体は限界を迎え死が訪れる・・・
次の瞬間目の前には神様がおり「異世界に赴いてこちらの住人に地球の料理を食べさせてほしいのじゃよ」と言われる。
人間・エルフ・ドワーフ・竜人・獣人・妖精・精霊などなどあらゆる種族が訪れ食でみんなが幸せな顔になる物語です。
「面白ければ、お気に入り登録お願いします」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
すごく面白かったです!ストーリーが楽しくて一気に読みました😆
頭の良い受けが大好物なもので、シキさんが大変美味でした✨ぜひお時間ある時にでもおかわりお願いします!
読んでくださってありがとうございます!!
シキ頭がいいと思ってくださってありがとうございます(作者の頭が良くないのでそれに引っ張られてないか心配しながら書いていたのでそう言っていただけてうれしいです)
番外編、そうですね。確約はできませんが考えているお話はあるので機会がありましたら書きたいと持っております!