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本編
伴侶との明日
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翌朝目を覚ますと体だけはざっと拭かれているようだった。
隣で横たわるルイスはすでに起きていた。
「おはよう」
「おはようございます」
こうやって目を覚まして一番に挨拶ができるようになるのは結婚をしたものの多分特権だろう。
「貴族の婚姻だから、これで侍従がシーツを取り換える」
湯あみをしたければ浴室まで抱きかかえていくがどうする? と聞かれて腰を確認する。
腰が半分抜けたみたいな違和感はあるし、鈍い痛みもある。
甘えてしまっていいのだろうか。
甘やかな優しい雰囲気を漂わせるルイスに思わずそう思う。
「じゃあ、ご提案に甘えます」
そういうと俺のことを軽々とルイスは抱え上げる。
それから浴室に向かう。
浴室にはすでに湯がはってあって準備は万端だった。
ルイスはすでに体をさっぱりとさせたのか、家着を着ている。
「湯あみをしたら朝食にしよう」
終始何もかも甘い雰囲気でルイスに言われ、俺はこれが新婚の雰囲気なのかと気恥ずかしい気持ちになった。
* * *
それからいくらかの新婚期間が過ぎた。
第二王子の王太子指名が内定した。
正式な戴冠についてはまだもう少し先になるけれど事実上のお披露目となる夜会があるらしい。
俺の胸元にはルイスから最初に贈られたクラバットピンが輝いている。
ルイスの胸元には今日の日のために俺が作ったクラバットピンが輝いている。
何を贈ろうか悩んだけれど、結局これにした。
色は結果として真っ黒で『黒の魔法使い』である俺のものと言っているようで少しだけ気分がいい。
「いつか僕の色のものも贈るね」
そう言ってルイスは笑っている。
呪いがまっさらになった第三王子をみて、貴族たちは皆困惑気味だ。
呪いについて悪しざまに言ってきた人間は、もうそれが無いルイスにどう対応したらいいのかが分からないらしい。
しかもルイスは王太子となる第二王子と協調していくことを宣言している。
そう。ルイスは将来有望は若い王子となったのだ。
第二王子から挨拶がある。
こちらも馬鹿王子と陰で呼ばれてたのが嘘かの様に、知的な話をさらりとしている。
ルイスと二人でいると、一人の貴族が話しかけてくる。
「この度はご婚姻おめでとうございます」
ルイスが愛想笑いで会釈をしている。
「その石はオニキスですかな」
ルイスのしているクラバットピンについてその貴族が聞く。
侯爵なのだとルイスが耳打ちをして教えてくれた。
「ガラス玉ですよ」
俺が答える。
侯爵の顔がものすごく人を見下しているというのを隠さないものになる。
「平民からの贈り物ですか」
ニヤニヤとしながら言う。俺への侮蔑を隠しもしないのは、ある意味すごいなと思う。
真似はしたくはないけれど。
侯爵についていた魔法使いがルイスのクラバットをみて「ひっ……」と悲鳴を飲み込む。
それから侯爵に耳打ちをした。
クラバットピンの元にしたのは透明なガラスのついたポピュラーな平民向けのものだ。
そこに、呪殺無効をはじめとして様々な効果の魔法を付与した結果、真っ黒になってしまったのだ。
今もガラス玉を透かすと魔法に使った文様がガラス玉の中で漂っているのが見える。
そういう、魔法をこめた物は貴族では貴重とされているのは知っている。
魔道具の様に回路として規格のあるものではないオーダーメイド品はロストテクノロジーしてしまったものも多く大変に貴重らしい。
ルイスが喜んだのはやっぱり俺の髪の色の様な色だったので、それでいい。
侯爵はお付きの魔法使いに言われて顔色を変えていた。
「私の伴侶殿は中々のものでしょう?」
ルイスが第三王子の顔をしていう。
美しい宝石の様な瞳を細めてこちらを見た。
俺たちの間には子はできない。
だから、妾をと言われないためのけん制だったのだけれど、どうやらとりあえず成功したようだ。
二人で顔を見合わせて笑みを浮かべる。
ルイスが給仕から受け取ったシャンパンを片方もらって、乾杯をするように掲げる。
グラスを合わせないことはちゃんと勉強した。
「これからもよろしくお願いしますね、伴侶殿」
俺にしか聞こえない音量でルイスが言う。
俺も笑顔を浮かべながら「こちらこそ、末永く」と返すとルイスは一瞬きょとんとした後嬉しそうに笑った。
了
隣で横たわるルイスはすでに起きていた。
「おはよう」
「おはようございます」
こうやって目を覚まして一番に挨拶ができるようになるのは結婚をしたものの多分特権だろう。
「貴族の婚姻だから、これで侍従がシーツを取り換える」
湯あみをしたければ浴室まで抱きかかえていくがどうする? と聞かれて腰を確認する。
腰が半分抜けたみたいな違和感はあるし、鈍い痛みもある。
甘えてしまっていいのだろうか。
甘やかな優しい雰囲気を漂わせるルイスに思わずそう思う。
「じゃあ、ご提案に甘えます」
そういうと俺のことを軽々とルイスは抱え上げる。
それから浴室に向かう。
浴室にはすでに湯がはってあって準備は万端だった。
ルイスはすでに体をさっぱりとさせたのか、家着を着ている。
「湯あみをしたら朝食にしよう」
終始何もかも甘い雰囲気でルイスに言われ、俺はこれが新婚の雰囲気なのかと気恥ずかしい気持ちになった。
* * *
それからいくらかの新婚期間が過ぎた。
第二王子の王太子指名が内定した。
正式な戴冠についてはまだもう少し先になるけれど事実上のお披露目となる夜会があるらしい。
俺の胸元にはルイスから最初に贈られたクラバットピンが輝いている。
ルイスの胸元には今日の日のために俺が作ったクラバットピンが輝いている。
何を贈ろうか悩んだけれど、結局これにした。
色は結果として真っ黒で『黒の魔法使い』である俺のものと言っているようで少しだけ気分がいい。
「いつか僕の色のものも贈るね」
そう言ってルイスは笑っている。
呪いがまっさらになった第三王子をみて、貴族たちは皆困惑気味だ。
呪いについて悪しざまに言ってきた人間は、もうそれが無いルイスにどう対応したらいいのかが分からないらしい。
しかもルイスは王太子となる第二王子と協調していくことを宣言している。
そう。ルイスは将来有望は若い王子となったのだ。
第二王子から挨拶がある。
こちらも馬鹿王子と陰で呼ばれてたのが嘘かの様に、知的な話をさらりとしている。
ルイスと二人でいると、一人の貴族が話しかけてくる。
「この度はご婚姻おめでとうございます」
ルイスが愛想笑いで会釈をしている。
「その石はオニキスですかな」
ルイスのしているクラバットピンについてその貴族が聞く。
侯爵なのだとルイスが耳打ちをして教えてくれた。
「ガラス玉ですよ」
俺が答える。
侯爵の顔がものすごく人を見下しているというのを隠さないものになる。
「平民からの贈り物ですか」
ニヤニヤとしながら言う。俺への侮蔑を隠しもしないのは、ある意味すごいなと思う。
真似はしたくはないけれど。
侯爵についていた魔法使いがルイスのクラバットをみて「ひっ……」と悲鳴を飲み込む。
それから侯爵に耳打ちをした。
クラバットピンの元にしたのは透明なガラスのついたポピュラーな平民向けのものだ。
そこに、呪殺無効をはじめとして様々な効果の魔法を付与した結果、真っ黒になってしまったのだ。
今もガラス玉を透かすと魔法に使った文様がガラス玉の中で漂っているのが見える。
そういう、魔法をこめた物は貴族では貴重とされているのは知っている。
魔道具の様に回路として規格のあるものではないオーダーメイド品はロストテクノロジーしてしまったものも多く大変に貴重らしい。
ルイスが喜んだのはやっぱり俺の髪の色の様な色だったので、それでいい。
侯爵はお付きの魔法使いに言われて顔色を変えていた。
「私の伴侶殿は中々のものでしょう?」
ルイスが第三王子の顔をしていう。
美しい宝石の様な瞳を細めてこちらを見た。
俺たちの間には子はできない。
だから、妾をと言われないためのけん制だったのだけれど、どうやらとりあえず成功したようだ。
二人で顔を見合わせて笑みを浮かべる。
ルイスが給仕から受け取ったシャンパンを片方もらって、乾杯をするように掲げる。
グラスを合わせないことはちゃんと勉強した。
「これからもよろしくお願いしますね、伴侶殿」
俺にしか聞こえない音量でルイスが言う。
俺も笑顔を浮かべながら「こちらこそ、末永く」と返すとルイスは一瞬きょとんとした後嬉しそうに笑った。
了
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すごく面白かったです!ストーリーが楽しくて一気に読みました😆
頭の良い受けが大好物なもので、シキさんが大変美味でした✨ぜひお時間ある時にでもおかわりお願いします!
読んでくださってありがとうございます!!
シキ頭がいいと思ってくださってありがとうございます(作者の頭が良くないのでそれに引っ張られてないか心配しながら書いていたのでそう言っていただけてうれしいです)
番外編、そうですね。確約はできませんが考えているお話はあるので機会がありましたら書きたいと持っております!