42 / 50
本編
第二王子2
しおりを挟む
「まず、最初からお話しましょう」
「はじめは、ローゼニア公爵が兄上、第一王子に呪いをかけたことが始まりでした」
「やめてっ!!」
王妃が叫ぶ。
彼女は誰が自分の息子に呪いをかけたのかを知っていた様に見える。
「兄上は幼少のころ病弱だったとお聞きしております」
「それがどうしたというのだ」
第一王子は憎しみの籠った目で第二王子を見る。
「それが、呪いの第一段階だったのですよ、兄上」
第二王子は哀れむ様にそう言った後、「それにいち早く気が付いたのは魔法使いでもある王妃陛下ですね」と言った。
「王妃陛下は兄上にかけられた呪いを解くために奔走されたそうです。
当時の宮廷魔術師の残した手記を発見しております」
第二王子はそう言うと王妃から国王に視線を戻す。
「しかし当時の魔法使い達に呪いを解くことはできなかった。
ただ、呪いを解析した中で、この呪いは王家の血筋に対してオーダーメイドされたものだという事が分かった」
だから――
第二王子の手を聖女が握りしめたのが見えた。
「同じ血筋であれば呪いを転嫁できると気が付いた彼らは、私に呪いを押し付けようとした。
けれど、それは失敗して弟が呪われてしまった。
呪いが目に見えて分かる様になって、公爵家は焦ったでしょうね。
呪いの影響が全くない私と婚約を結んで、かつて呪われて体にダメージのある兄上と、その時呪われている弟を追い落として私を王位につかせる方向に計画を変更した」
国王はごくりと唾を飲み込む。
「けれど、思っていたよりも第二王子は“馬鹿”だった」
そう自分自身で言ってから第二王子はにやりと口角を上げた。
とても馬鹿がする反応だとは思えなかった。
「そこで公爵家は、結局兄上と組むことにした」
ねえ、兄上。私の評判が悪くなってからしばらくしてから公爵家はあなたにすり寄って来たでしょう?
第二王子が歌う様に言う。
「そこからは簡単ですよ。
婚約者である公爵家の娘を使って俺を殺そうとして、ついでに地位が高まりつつある聖女も亡きものにしようとした。
だから、私は婚約解消となる様に進めて、聖女を地方に逃がした。
その後、確実性をとるために呪いに蝕まれた弟まで毒殺しようとしたのはさすがにどうかと思いますね」
毒殺の言葉に第一王子が酷く反応したのが分かった。
「ああ、そこは公爵家の独断なんですね。
兄上は、呪われている弟は平民の男と婚姻さえさせれば問題ないと考えたんですね」
「しょ、証拠はあるのか!!」
優秀で腹黒だと評判の第一王子が唾を飛ばしながら言う。
第二王子は国王に話しかけていたのだ。
兄とはいえ、それを途中から話に入っていいのか、平民の自分には分からない。
「あるに決まっているでしょう」
第二王子が合図をするとぞろぞろと彼の配下と思わしき人間が書類や魔道具を持って大聖堂に入ってくる。
俺も今とった王妃の魔力の波長をとらえた魔道具のうちの一つを配下の一人に手渡す。
王妃の魔力の波長がこの国の魔法使いのリスト一覧に無かったのはおそらく王妃がその権力を使って抹消していたからだろう。
証拠の検分は一朝一夕にはできないだろう。
専門家の目が必要なものも多い。
それは国王にもわかっているようで、書類のいくつかを確認すると頷いただけだった。
「はじめは、ローゼニア公爵が兄上、第一王子に呪いをかけたことが始まりでした」
「やめてっ!!」
王妃が叫ぶ。
彼女は誰が自分の息子に呪いをかけたのかを知っていた様に見える。
「兄上は幼少のころ病弱だったとお聞きしております」
「それがどうしたというのだ」
第一王子は憎しみの籠った目で第二王子を見る。
「それが、呪いの第一段階だったのですよ、兄上」
第二王子は哀れむ様にそう言った後、「それにいち早く気が付いたのは魔法使いでもある王妃陛下ですね」と言った。
「王妃陛下は兄上にかけられた呪いを解くために奔走されたそうです。
当時の宮廷魔術師の残した手記を発見しております」
第二王子はそう言うと王妃から国王に視線を戻す。
「しかし当時の魔法使い達に呪いを解くことはできなかった。
ただ、呪いを解析した中で、この呪いは王家の血筋に対してオーダーメイドされたものだという事が分かった」
だから――
第二王子の手を聖女が握りしめたのが見えた。
「同じ血筋であれば呪いを転嫁できると気が付いた彼らは、私に呪いを押し付けようとした。
けれど、それは失敗して弟が呪われてしまった。
呪いが目に見えて分かる様になって、公爵家は焦ったでしょうね。
呪いの影響が全くない私と婚約を結んで、かつて呪われて体にダメージのある兄上と、その時呪われている弟を追い落として私を王位につかせる方向に計画を変更した」
国王はごくりと唾を飲み込む。
「けれど、思っていたよりも第二王子は“馬鹿”だった」
そう自分自身で言ってから第二王子はにやりと口角を上げた。
とても馬鹿がする反応だとは思えなかった。
「そこで公爵家は、結局兄上と組むことにした」
ねえ、兄上。私の評判が悪くなってからしばらくしてから公爵家はあなたにすり寄って来たでしょう?
第二王子が歌う様に言う。
「そこからは簡単ですよ。
婚約者である公爵家の娘を使って俺を殺そうとして、ついでに地位が高まりつつある聖女も亡きものにしようとした。
だから、私は婚約解消となる様に進めて、聖女を地方に逃がした。
その後、確実性をとるために呪いに蝕まれた弟まで毒殺しようとしたのはさすがにどうかと思いますね」
毒殺の言葉に第一王子が酷く反応したのが分かった。
「ああ、そこは公爵家の独断なんですね。
兄上は、呪われている弟は平民の男と婚姻さえさせれば問題ないと考えたんですね」
「しょ、証拠はあるのか!!」
優秀で腹黒だと評判の第一王子が唾を飛ばしながら言う。
第二王子は国王に話しかけていたのだ。
兄とはいえ、それを途中から話に入っていいのか、平民の自分には分からない。
「あるに決まっているでしょう」
第二王子が合図をするとぞろぞろと彼の配下と思わしき人間が書類や魔道具を持って大聖堂に入ってくる。
俺も今とった王妃の魔力の波長をとらえた魔道具のうちの一つを配下の一人に手渡す。
王妃の魔力の波長がこの国の魔法使いのリスト一覧に無かったのはおそらく王妃がその権力を使って抹消していたからだろう。
証拠の検分は一朝一夕にはできないだろう。
専門家の目が必要なものも多い。
それは国王にもわかっているようで、書類のいくつかを確認すると頷いただけだった。
27
お気に入りに追加
217
あなたにおすすめの小説
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
森のエルフと養い子
マン太
BL
幼い頃、森の大樹の根元に捨てられたタイド。そんな彼を拾ったのは、森に住むエルフ、スウェル。
直ぐに手放すつもりがそうもいかず…。
BL風味のファンタジーものです。毎回ですが、絡みは薄いです。
エルフ設定は「指輪物語」に近いですが、勝手に妄想した設定も。
やんわりお読みいただければ幸いです。
よろしくお願いします。
※小説家になろう、エブリスタにも掲載しております。
嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした
ナイトウ
BL
BL小説大賞にご協力ありがとうございました!!
CP:不器用受ガチ勢伯爵夫攻め、女形役者受け
相手役は第11話から出てきます。
ロストリア帝国の首都セレンで女形の売れっ子役者をしていたルネは、皇帝エルドヴァルの為に公式愛妾を装い王宮に出仕し、王妃マリーズの代わりに貴族の反感を一手に受ける役割を引き受けた。
役目は無事終わり追放されたルネ。所属していた劇団に戻りまた役者業を再開しようとするも公式愛妾になるために偽装結婚したリリック伯爵に阻まれる。
そこで仕方なく、顔もろくに知らない夫と離婚し役者に戻るために彼の屋敷に向かうのだった。
異世界のんびり料理屋経営
芽狐@書籍発売中
ファンタジー
主人公は日本で料理屋を経営している35歳の新垣拓哉(あらかき たくや)。
ある日、体が思うように動かず今にも倒れそうになり、病院で検査した結果末期癌と診断される。
それなら最後の最後まで料理をお客様に提供しようと厨房に立つ。しかし体は限界を迎え死が訪れる・・・
次の瞬間目の前には神様がおり「異世界に赴いてこちらの住人に地球の料理を食べさせてほしいのじゃよ」と言われる。
人間・エルフ・ドワーフ・竜人・獣人・妖精・精霊などなどあらゆる種族が訪れ食でみんなが幸せな顔になる物語です。
「面白ければ、お気に入り登録お願いします」
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
僕の宿命の人は黒耳のもふもふ尻尾の狛犬でした!【完結】
華周夏
BL
かつての恋を彼は忘れている。運命は、あるのか。繋がった赤い糸。ほどけてしまった赤い糸。繋ぎ直した赤い糸。切れてしまった赤い糸──。その先は?糸ごと君を抱きしめればいい。宿命に翻弄される神の子と、眷属の恋物語【*マークはちょっとHです】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる