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本編
婚姻の儀
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結婚指輪はルイスの前で作った。
古の魔法が文様として蔦の様に刻まれた指輪をルイスはしげしげとみている。
「美しいですね」
ルイスは嬉しそうに笑った。
「これであればまるで、奇跡が起きてもおかしくは無いですね」
そう言われて、他の準備についても進んでいることをルイスに説明した。
「他国からの来席はどうなりそうですか?」
「呪われて碌な爵位も次げない第三王子の結婚式に力の強いものは来ないよ」
ルイスは笑った。
権力を持っている者は必然として力のある魔法使いを侍らせている。
彼の考えていることを実現するためには、婚姻の儀には力の強い魔法使いは少なければ少ない方がいい。
自分としては位の高いものは珍しい魔道具を自慢するようにつけているのでそれを盗み見たいという気持ちが大きいがこればっかりはどうしようも無い。
「それでは他のものの準備も進めますね」
俺がそう言うと「頼んだよ」とルイスは答えた。
◆ ◆ ◆
婚姻の儀の衣装をどうするか? と聞かれたとき、どうでもよかったので「どうでもいいですね」と答えた。
ルイスはとてもいい笑顔で笑みを浮かべた後、「シキは一応僕に嫁ぐという体になっているので、きちんと希望を出さないと勝手にウェディングドレスと作られてしまう可能性がありますよ」と言われた。
ウェディングドレスを着てみたいと思ったことは無いし、着て晒しものの様になりたくはない。
この国では結婚の際の衣装は白を基調としたものになっている。
「では、魔法使いの正装の一つであるチュニックの上にマントを羽織る形で」
あれであれば女性の衣装の様にふわふわとはしない。
聖職者も着る衣装なので問題があるかと思ったけれど、俺の希望はすんなり通った。
出来上がった衣装は真っ白な絹に金の刺繍を施した贅沢なものだった。
大聖堂の控室でルイスは俺にむかって微笑みかけながら「細かいデザインは僕が決めさせてもらったけれど、やっぱり君の清楚さにぴったりだね」と言った。
清楚、の意味は知っているが俺がそれに当てはまるのかは知らない。
誰かに清楚だと言われたことは無いし、多分これから一生誰にも言われない言葉だと思った。
「ルイス殿下もお似合いです」
真っ白なフロッグコートには俺と揃いの様に金色の美しい刺繍がされていた。
王命で仕方がなく婚姻を結ばされる王子の衣装だとは思えない力の入れように正直驚いてしまった。
「両陛下と第一王子殿下、それから第二王子と聖女はお揃いですか?」
俺が尋ねるとルイスはしっかりとうなずく。
今日この場に絶対に必要な人間がそろっていることを知り、ほっと息を吐く。
これまで調べたこと、それから今日起こる出来事。その両方を彼らは知らねばならない。
ルイスにかけられた呪いの真実にかかわる人間たちなのだから。
古の魔法が文様として蔦の様に刻まれた指輪をルイスはしげしげとみている。
「美しいですね」
ルイスは嬉しそうに笑った。
「これであればまるで、奇跡が起きてもおかしくは無いですね」
そう言われて、他の準備についても進んでいることをルイスに説明した。
「他国からの来席はどうなりそうですか?」
「呪われて碌な爵位も次げない第三王子の結婚式に力の強いものは来ないよ」
ルイスは笑った。
権力を持っている者は必然として力のある魔法使いを侍らせている。
彼の考えていることを実現するためには、婚姻の儀には力の強い魔法使いは少なければ少ない方がいい。
自分としては位の高いものは珍しい魔道具を自慢するようにつけているのでそれを盗み見たいという気持ちが大きいがこればっかりはどうしようも無い。
「それでは他のものの準備も進めますね」
俺がそう言うと「頼んだよ」とルイスは答えた。
◆ ◆ ◆
婚姻の儀の衣装をどうするか? と聞かれたとき、どうでもよかったので「どうでもいいですね」と答えた。
ルイスはとてもいい笑顔で笑みを浮かべた後、「シキは一応僕に嫁ぐという体になっているので、きちんと希望を出さないと勝手にウェディングドレスと作られてしまう可能性がありますよ」と言われた。
ウェディングドレスを着てみたいと思ったことは無いし、着て晒しものの様になりたくはない。
この国では結婚の際の衣装は白を基調としたものになっている。
「では、魔法使いの正装の一つであるチュニックの上にマントを羽織る形で」
あれであれば女性の衣装の様にふわふわとはしない。
聖職者も着る衣装なので問題があるかと思ったけれど、俺の希望はすんなり通った。
出来上がった衣装は真っ白な絹に金の刺繍を施した贅沢なものだった。
大聖堂の控室でルイスは俺にむかって微笑みかけながら「細かいデザインは僕が決めさせてもらったけれど、やっぱり君の清楚さにぴったりだね」と言った。
清楚、の意味は知っているが俺がそれに当てはまるのかは知らない。
誰かに清楚だと言われたことは無いし、多分これから一生誰にも言われない言葉だと思った。
「ルイス殿下もお似合いです」
真っ白なフロッグコートには俺と揃いの様に金色の美しい刺繍がされていた。
王命で仕方がなく婚姻を結ばされる王子の衣装だとは思えない力の入れように正直驚いてしまった。
「両陛下と第一王子殿下、それから第二王子と聖女はお揃いですか?」
俺が尋ねるとルイスはしっかりとうなずく。
今日この場に絶対に必要な人間がそろっていることを知り、ほっと息を吐く。
これまで調べたこと、それから今日起こる出来事。その両方を彼らは知らねばならない。
ルイスにかけられた呪いの真実にかかわる人間たちなのだから。
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