24 / 50
本編
ぬいぐるみ1
しおりを挟む
◆ ◆ ◆
その変な贈り物が届いたのは毒物混入事件があってから数日後のことだった。
魔法使いはわざわざこんな風に人伝てで贈り物はしない。
王子宛てのものは普通王宮に贈る。
この家宛てという時点で怪しいとなって隔離された小包を前に防御用の魔法を展開する。
他の魔法使いを呼ばないのは俺を信頼している証と思っていいのだろうか。
そう思いながら、その怪しい小包を開けていく。
特に罠も呪いも毒もなにも無かった。
小包に入っていたのは、赤い宝石の様な石の目をした白いウサギのぬいぐるみが入っていた。
「ぬいぐるみ?」
なんでこんなものがと思う。
この家には小さな子供はいない。
使用人の子宛ての小包が誤って混ざったとも考えにくい。
「あら、やっと受け取ったのね」
ぬいぐるみが突然ぴょんと起き上がってこちらを見るように顔を向けてそう言った。
魔法の発動は一切関知できなかった。
それにこの声……。
「もしかして聖女か!」
ぬいぐるみに向かって言うと「あら、よくわかったわね」と聖女が答えた。
「こんな、いかにも女の子が喜びそうな術ばかりなのよ、聖女の奇跡ってやつは……。
ホント嫌になる」
「なら、ウサギじゃなくてもっと気持ち悪いモンスターのぬいぐるみとかにしたらどうだ?」
「そういう事じゃなくて!!」
聖女が「あなたホントなんもわかってないわね」と言った。
この術はすごいと思う。
遠隔操作でぬいぐるみを動かしながら周りに聖女の結界まで張って外部からの盗聴等に備えている。
女の好むようなものが嫌なら見た目を変えればいいと思うのだけれど、どうやらそういう話ではないらしい。
「で、用件は?」
この話は平行線にしかならなさそうだったので用件を聞く。
ぬいぐるみは俺をみて、それから隣にいたルイスを見た。
「もう、命は狙われた?」
聖女は当たり前の様にそう聞いた。
絶対の確信があってそう聞いている。という言い方だった。
「君が私たちの命を狙ったという犯罪告白かい?」
ルイスが聖女に聞く。
「まさか。そんなことをすれば私は聖女の力を失いますよ」
それは過去の伝承からも明らかでしょう? と聖女は言った。
ルイスがこちらを見る。少なくとも俺が過去調べたことのある聖女関連の資料からは悪しきことに手を貸した聖女はその力を失っていたので、ルイスに向かってうなずく。
「ふうん。じゃあ、君は何故私たちにそれを?
気をつけろって警告をしてくれているつもりかい?」
「私たちと同じ目に合ってるかの確認ですよ」
聖女は面白そうにそう言った。
その言葉はまるで、彼女たちも命を狙われている様な言い方だった。
その変な贈り物が届いたのは毒物混入事件があってから数日後のことだった。
魔法使いはわざわざこんな風に人伝てで贈り物はしない。
王子宛てのものは普通王宮に贈る。
この家宛てという時点で怪しいとなって隔離された小包を前に防御用の魔法を展開する。
他の魔法使いを呼ばないのは俺を信頼している証と思っていいのだろうか。
そう思いながら、その怪しい小包を開けていく。
特に罠も呪いも毒もなにも無かった。
小包に入っていたのは、赤い宝石の様な石の目をした白いウサギのぬいぐるみが入っていた。
「ぬいぐるみ?」
なんでこんなものがと思う。
この家には小さな子供はいない。
使用人の子宛ての小包が誤って混ざったとも考えにくい。
「あら、やっと受け取ったのね」
ぬいぐるみが突然ぴょんと起き上がってこちらを見るように顔を向けてそう言った。
魔法の発動は一切関知できなかった。
それにこの声……。
「もしかして聖女か!」
ぬいぐるみに向かって言うと「あら、よくわかったわね」と聖女が答えた。
「こんな、いかにも女の子が喜びそうな術ばかりなのよ、聖女の奇跡ってやつは……。
ホント嫌になる」
「なら、ウサギじゃなくてもっと気持ち悪いモンスターのぬいぐるみとかにしたらどうだ?」
「そういう事じゃなくて!!」
聖女が「あなたホントなんもわかってないわね」と言った。
この術はすごいと思う。
遠隔操作でぬいぐるみを動かしながら周りに聖女の結界まで張って外部からの盗聴等に備えている。
女の好むようなものが嫌なら見た目を変えればいいと思うのだけれど、どうやらそういう話ではないらしい。
「で、用件は?」
この話は平行線にしかならなさそうだったので用件を聞く。
ぬいぐるみは俺をみて、それから隣にいたルイスを見た。
「もう、命は狙われた?」
聖女は当たり前の様にそう聞いた。
絶対の確信があってそう聞いている。という言い方だった。
「君が私たちの命を狙ったという犯罪告白かい?」
ルイスが聖女に聞く。
「まさか。そんなことをすれば私は聖女の力を失いますよ」
それは過去の伝承からも明らかでしょう? と聖女は言った。
ルイスがこちらを見る。少なくとも俺が過去調べたことのある聖女関連の資料からは悪しきことに手を貸した聖女はその力を失っていたので、ルイスに向かってうなずく。
「ふうん。じゃあ、君は何故私たちにそれを?
気をつけろって警告をしてくれているつもりかい?」
「私たちと同じ目に合ってるかの確認ですよ」
聖女は面白そうにそう言った。
その言葉はまるで、彼女たちも命を狙われている様な言い方だった。
17
お気に入りに追加
217
あなたにおすすめの小説
異世界のんびり料理屋経営
芽狐@書籍発売中
ファンタジー
主人公は日本で料理屋を経営している35歳の新垣拓哉(あらかき たくや)。
ある日、体が思うように動かず今にも倒れそうになり、病院で検査した結果末期癌と診断される。
それなら最後の最後まで料理をお客様に提供しようと厨房に立つ。しかし体は限界を迎え死が訪れる・・・
次の瞬間目の前には神様がおり「異世界に赴いてこちらの住人に地球の料理を食べさせてほしいのじゃよ」と言われる。
人間・エルフ・ドワーフ・竜人・獣人・妖精・精霊などなどあらゆる種族が訪れ食でみんなが幸せな顔になる物語です。
「面白ければ、お気に入り登録お願いします」
二度目の異世界に来たのは最強の騎士〜吸血鬼の俺はこの世界で眷族(ハーレム)を増やす〜
北条氏成
ファンタジー
一度目の世界を救って、二度目の異世界にやってきた主人公は全能力を引き継いで吸血鬼へと転生した。
この物語は魔王によって人間との混血のハーフと呼ばれる者達が能力を失った世界で、最強種の吸血鬼が眷族を増やす少しエッチな小説です。
※物語上、日常で消費する魔力の補給が必要になる為、『魔力の補給(少しエッチな)』話を挟みます。嫌な方は飛ばしても問題はないかと思いますので更新をお待ち下さい。※
カクヨムで3日で修正という無理難題を突き付けられたので、今後は切り替えてこちらで投稿していきます!カクヨムで読んで頂いてくれていた読者の方々には大変申し訳ありません!!
*毎日投稿実施中!投稿時間は夜11時~12時頃です。*
※本作は眷族の儀式と魔力の補給というストーリー上で不可欠な要素が発生します。性描写が苦手な方は注意(魔力の補給が含まれます)を読まないで下さい。また、ギリギリを攻めている為、BAN対策で必然的に同じ描写が多くなります。描写が単調だよ? 足りないよ?という場合は想像力で補って下さい。できる限り毎日更新する為、話数を切って千文字程度で更新します。※
表紙はAIで作成しました。ヒロインのリアラのイメージです。ちょっと過激な感じなので、運営から言われたら消します!
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
不幸少女は二度目の人生でイージーモードを望む
天宮暁
ファンタジー
人生なんてクソゲーだ。
それが、16年生きてきた私の結論。
でもまさか、こんな結末を迎えるなんて……。
しかし、非業の死を遂げた私をあわれんで、神様が異世界に転生させてあげようと言ってきた。
けど私、もう人生なんて結構なんですけど!
ところが、異世界への転生はキャンセル不能。私はむりやりチートを持たされ、異世界に放り出されることになってしまう。
手に入れたチートは「難易度変更」。世界の難易度を強制的に変える力を使い、冒険者となった私はダンジョンに潜る。
今度こそ幸せな人生を送れるといいんだけど……。
オネエが悲劇の皇后エリザベートに転生したけどなんとかなる件について
カトリーヌ・ドゥ・ウェルウッド
ファンタジー
アラフォーも近い35歳の髭面熊系の高橋勝也は
化粧品会社で「かわいい」化粧品を生み出す企画の仕事をしながらゲイライフを満喫していた……。
しかし、旅行で訪れたスイス・レマン湖の畔で
暴漢に襲われて刺されて死ぬ。
儚くも華やかな短い生涯の幕が閉じるはずだった!!
でも目が覚めたら栗色の髪を持つ美少女になっていた
喜ぶのも束の間「シシィ」と呼ばれて気づく
ミュージカルでみた19世紀ハプスブルク家に嫁ぎ
皇后になる悲劇のオーストリア皇后・ハンガリー王妃の
エリザベートに生まれ変わっていることに……
いったいどうなる?
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺(紗子)
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(10/21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
※4月18日、完結しました。ありがとうございました。
美しくも残酷な世界に花嫁(仮)として召喚されたようです~酒好きアラサーは食糧難の世界で庭を育てて煩悩のままに生活する
くみたろう
ファンタジー
いつもと変わらない日常が一変するのをただの会社員である芽依はその身をもって知った。
世界が違った、価値観が違った、常識が違った、何もかもが違った。
意味がわからなかったが悲観はしなかった。
花嫁だと言われ、その甘い香りが人外者を狂わすと言われても、芽依の周りは優しさに包まれている。
そばに居るのは巨大な蟻で、いつも優しく格好良く守ってくれる。
奴隷となった大好きな二人は本心から芽依を愛して側にいてくれる。
麗しい領主やその周りの人外者達も、話を聞いてくれる。
周りは酷く残酷な世界だけれども、芽依はたまにセクハラをして齧りつきながら穏やかに心を育み生きていく。
それはこの美しく清廉で、残酷でいておぞましい御伽噺の世界の中でも慈しみ育む人外者達や異世界の人間が芽依を育て守ってくれる。
お互いの常識や考えを擦り合わせ歩み寄り、等価交換を基盤とした世界の中で、優しさを育てて自分の居場所作りに励む。
全ては幸せな気持ちで大好きなお酒を飲む為であり、素敵な酒のつまみを開発する日々を送るためだ。
森のエルフと養い子
マン太
BL
幼い頃、森の大樹の根元に捨てられたタイド。そんな彼を拾ったのは、森に住むエルフ、スウェル。
直ぐに手放すつもりがそうもいかず…。
BL風味のファンタジーものです。毎回ですが、絡みは薄いです。
エルフ設定は「指輪物語」に近いですが、勝手に妄想した設定も。
やんわりお読みいただければ幸いです。
よろしくお願いします。
※小説家になろう、エブリスタにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる