僕の輝ける伴星

渡辺 佐倉

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本編

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実は、自分の体に呪いを展開してみてわかったことがある。

ルイスへの呪いは黒く広がっていた。
俺の再現した呪いは鈍色をしていた。

同じ構成だったのに違っていた。
勿論、俺が魔法使いだからという理由の場合もある。

けれど、俺で再現されて分かったこともあるのだ。

この呪いはルイスと血の近い人間向けに作られた特注のものだろう。
自分の体に展開してみた違和感がいくつかあった。

全く血のつながりの無い人間に移すのは極めて難しく、できたところで呪いが暴走してしまうのでルイスがここまで生きながらえることはできない。

帰りなよと送り出されて転送陣で屋敷の近くまで飛ぶ。
それから二人きりになれるよう小さな結界を展開して今日分かったその事実をルイスに伝えた。

「僕に呪いを押し付けたのは、僕の親族だってことだね」

ルイスの顔は悲し気にゆがんでいた。
何と言って声をかけたらいいのか分からなかった。

「別に気にしないで。うつされたって聞いた時覚悟はしてたから」


そもそも他国の人間が呪いを押し付けるならわざわざ第三王子なんて中途半端な権力しかない人間なんか選ばないんだよ。
そういってルイスは笑った。

「この国の王族と高位貴族に連なる魔法使いの中から犯人を探すところからだな」

と王子は言った。

◆ ◆ ◆

甘ったるい雰囲気になるのが好きって訳じゃなかったけれど、何となく今日はいつもより居心地が悪いと思った。
だからだろうか。

二人のために用意された食事が並んだあと、手持ちぶたさみたいな感覚で慌てて料理を口に含んだ。

刹那、異変に気が付く。

治療魔法の被検体として協力したことがある。
自分の魔法薬の研究のためにも知識があった。

だからすぐにわかったとしか言いようが無いのだけれど、口に含んだそれの中に毒が含まれていた。

なんていう一日だ。と思いながらルイスに声をかけようとする。
いつもは優し気にこちらを見る王子と目が合わなかった。

仕方がなく乱暴に椅子を転がすように立ち上がって、それから「食べるな!!」と叫びながら王子の持つフォークを手で払った。

かしゃんと金属質な音を立てて、フォークが床に落ちてバウンドした。

「え?」

物思いにふけっていたのだろう。
突然俺の出した大声にルイスは驚いているようだった。

「なに? え?」

ルイスは困惑していた。

「おそらく毒が混入されています」

俺がそういうと、一瞬ルイスは王子の様な顔をして、それから「そう……」と言った。
あまり驚いていないようで、慣れてることなのかもしれないと思った。

そうだとしたら嫌な慣れだ。
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