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本編
研究所と呪いの再現1
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◆ ◆ ◆
婚約者との生活はおそらくうまくいっているのだと思う。
王城との行き来は転移陣を使って行えるので通勤に不便はないし、生活は快適に整えられている。
婚約者である王子は最近特に忙しそうにしていてあまり顔を合わせられないが、メッセージカードは毎日の様に送られてくる。
一応毎日返事を書いている。
何を書いたらいいのか分からないので、疲労回復の魔法をカードに込めただけという日もある。
婚約者との付き合い方はこれで正しいのかは分からない。
そもそも俺は人と付き合ったことが無いので、男同士ということと相手が王族だということを差っ引いてもよくわからない。
魔法使いは皆俺がこの国の第三王子と婚約中だと知っていて遠巻きにされている。
前と変わらず話しかけてくれるのは、研究所の中でも一握りの人間だけだ。
その中で呪いに精通していて、手伝いを頼める人間を考えたとき思い浮かんだのは数人しかいなかった。
人選は任せると言われた。自分の信頼できる人間を選んでいいということなのだろう。
絶対に秘密を口外せず、買収にも応じないであろう人間。
秘密の口外は本人が許すならば、口外厳禁の契約魔法で縛ることが魔法使いの間では一般的だ。
勿論契約魔法は使うつもりだが、自分できちんと見極めて選びたい。
結局、呪いの検証に選んだ魔法使いは二人。
緋色の魔法使いと呼ばれている男性と、白緑の魔法使いと呼ばれている年上の女性の二人に内密にお願いしたところ二つ返事でOKをもらえた。
特に白緑からは「結婚祝い何にしようか悩んでたからちょうどよかった~」と言って笑った。
解呪する際に呪いについてとれるデータはすべて取ってあるし、構造式はすべて別途記してある。
口外無用の契約ののち誰の呪いかを明かさず、呪いの構成を二人に説明する。
「黒、これは、一旦展開してみた方が早いだろ」
緋色の魔法使いがそう言う。
俺も同意見だ。
にやりと笑うと、「そのための俺たちか」と言われた。
まあ、そのための二人だ。
二人は俺の研究室の隅でこちらを見ている。
魔法陣を展開してあの時に見たルイスの呪いを再現していく。
人間に呪いを再現しないと意味が無い。
一番手っ取り早く、状況を確認できるのは自分だ。
だから、あの時の呪いと全く同じものを自分の体に再現していく。
魔力がルイスより自分の方が圧倒的に多いためルイスよりは呪いは進行しないだろう。
その、観測手と万が一のための補助を二人にお願いしたのだ。
メリメリと体を浸食される不快感と痛みが体内を走る。
魔法使いの癖はあるだろうか。
あの日俺自身がとったデータからは対象の魔法使いは絞り込めなかったが、もう一度確認していく。
術式構築の癖、効率化の癖、逆に妙に非効率な部分はその魔法使いの癖の可能性がある。
筆跡の様に、必ず癖というやつは出てしまう。
それが魔法だ。
婚約者との生活はおそらくうまくいっているのだと思う。
王城との行き来は転移陣を使って行えるので通勤に不便はないし、生活は快適に整えられている。
婚約者である王子は最近特に忙しそうにしていてあまり顔を合わせられないが、メッセージカードは毎日の様に送られてくる。
一応毎日返事を書いている。
何を書いたらいいのか分からないので、疲労回復の魔法をカードに込めただけという日もある。
婚約者との付き合い方はこれで正しいのかは分からない。
そもそも俺は人と付き合ったことが無いので、男同士ということと相手が王族だということを差っ引いてもよくわからない。
魔法使いは皆俺がこの国の第三王子と婚約中だと知っていて遠巻きにされている。
前と変わらず話しかけてくれるのは、研究所の中でも一握りの人間だけだ。
その中で呪いに精通していて、手伝いを頼める人間を考えたとき思い浮かんだのは数人しかいなかった。
人選は任せると言われた。自分の信頼できる人間を選んでいいということなのだろう。
絶対に秘密を口外せず、買収にも応じないであろう人間。
秘密の口外は本人が許すならば、口外厳禁の契約魔法で縛ることが魔法使いの間では一般的だ。
勿論契約魔法は使うつもりだが、自分できちんと見極めて選びたい。
結局、呪いの検証に選んだ魔法使いは二人。
緋色の魔法使いと呼ばれている男性と、白緑の魔法使いと呼ばれている年上の女性の二人に内密にお願いしたところ二つ返事でOKをもらえた。
特に白緑からは「結婚祝い何にしようか悩んでたからちょうどよかった~」と言って笑った。
解呪する際に呪いについてとれるデータはすべて取ってあるし、構造式はすべて別途記してある。
口外無用の契約ののち誰の呪いかを明かさず、呪いの構成を二人に説明する。
「黒、これは、一旦展開してみた方が早いだろ」
緋色の魔法使いがそう言う。
俺も同意見だ。
にやりと笑うと、「そのための俺たちか」と言われた。
まあ、そのための二人だ。
二人は俺の研究室の隅でこちらを見ている。
魔法陣を展開してあの時に見たルイスの呪いを再現していく。
人間に呪いを再現しないと意味が無い。
一番手っ取り早く、状況を確認できるのは自分だ。
だから、あの時の呪いと全く同じものを自分の体に再現していく。
魔力がルイスより自分の方が圧倒的に多いためルイスよりは呪いは進行しないだろう。
その、観測手と万が一のための補助を二人にお願いしたのだ。
メリメリと体を浸食される不快感と痛みが体内を走る。
魔法使いの癖はあるだろうか。
あの日俺自身がとったデータからは対象の魔法使いは絞り込めなかったが、もう一度確認していく。
術式構築の癖、効率化の癖、逆に妙に非効率な部分はその魔法使いの癖の可能性がある。
筆跡の様に、必ず癖というやつは出てしまう。
それが魔法だ。
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