僕の輝ける伴星

本編

一方の聖女様は

◆　◆　◆

「ふざけないでよ！」

聖女であるカタリナは叫んだ。

「別に困りはしないだろう。
君は豪華な宝石もドレスにも豪華な食事にも興味はないのだから」

第二王子にそういわれた聖女は「そういう問題じゃない！」と怒鳴る様に返した。

「そういう歯にきぬ着せぬところも好きだよ」

うっとりという王子に聖女はため息をつく。
いつもこの人はそうだ。

「私は私を貴族の争いごとに巻きこまないでって言ってるの！」

聖女がそう言うと「だからこそ、俺たち二人は地方を周って、病人を癒し、やせた土地を豊饒の土地に変える旅に出るべきなんだ」王子は使命感にあふれる目で言った。

「でも、そのプランってあなた関係ないわよね」

人を癒すことも、やせた土地を変えるのも聖女の力であれば可能だ。
けれど、魔法使いですらない王子に何かできることは何もない。

「だからこそ、俺が付いていくべきだと思ったんだよ」

先ほどまでの正義感を押し付けるような態度から一瞬王子は柔和な笑みを浮かべてカタリナの耳元に口を寄せた。

「俺には何の利益も能力もないからこそ、教会も王家も俺たちを見逃す。
そうすれば君は高位貴族からも、教会のゲスからも逃げられる」

第二王子はそう耳元で彼女にしか聞こえない音量で言うと顔を離す。
それから「民のために尽くすのは王子としての務めだ！」と部屋の外まで聞こえる大きな声で言った。

聖女カタリナはため息ををついた。
それから「王子わかりました」と答えた。

ただ、一つ聖女は条件を付けた。

出立する前にある魔法使いに二人を守るための魔法をかけてもらいたい。それが彼女の条件だった。

実際聖女はドレスにも宝石にも、おおよそお金のかかるものすべてに興味がなかった。
聖女にそんなものが与えられたことは今までなかったし、教会での暮らしを考えると、きっと野宿でも天国だろう。


そうして、“真実の愛”に目覚めた第二王子と平民出身の聖女は愛を伝道するための旅に出ることとなったという。
王宮に通う貴族は皆、馬鹿な第二王子がさらに馬鹿なことを言っていると扱われていた。
むしろその馬鹿王子を王宮から追い払えるのならばその旅とやらに行かせるのがいいだろうという意見が大半を占めていた。