僕の輝ける伴星

渡辺 佐倉

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本編

解呪1

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「解呪いたしますか?」

俺が聞くと「い、今すぐにかい?」と驚いた様子でルイスが聞き返した。
この人にも公務があるだろう。予定があるのであれば、と一瞬思うが、見た限り酷い苦痛を呪いはルイスに与えているはずだ。
集中できない状態で仕事をするよりも解いてしまって安心して仕事をした方がいいのかもしれない。

「それとも、呪いがとけると第一王子派に目を付けられますか?」

厄介払いをしたい人間の懸念事項がはれるのは、問題があるのだろうか。
結婚するまで待つべきなのか、その辺は平民である自分にはよくわからなかった。

ルイスは初めてこちらをちゃんと見てそれから面白そうに笑った。

「ちゃんと今の状況がわかってるんだ」
「……少なくとも、王子様と結婚できるぅって舞い上がるような状況ではないですよね」

俺が答えるとその人は笑みを深めた。今度はゆがんだ様な笑みではなくて、思わず愛想笑いを返してしまう。
これが王族のパワーってやつなのだろうかと考えてしまう。

「場所だけは変えたい」

ルイスは俺に顔を寄せると、小声で言った。
ただ、私の居室は無理だ。そう付け加えられ、そんなところへ行って婚前云々と噂をされるのは俺も嫌だなと思った。

「では、俺の研究室はいかがですか?
かなり強固な結界が張られているので、少なくとも国内の魔法使いであれば中は覗けません」
「ああ、それがいいね」

ルイスの返事を聞くとすぐに俺は転移陣を敷く。人二人を自分の研究室に瞬間転移させるためのものだ。
ルイスが瞬きを二度した。

二度目の瞬きが終わった瞬間周りの景色が変わる。

薄暗い室内には本棚がびっしりとある。
雑然としているけれど、自分の研究室が一番落ち着く。

「……すごいな」

彼がなにに対してすごいと言っているのかは分からなかった。
けれど、それが何であってもこれからやることに変わりはない。

神経に絡みついた呪いはしびれと痛みを与えるだろう。

魔法陣を書くために部屋の中央には元々何も置いていないそこに二人で立っているのだからもう準備は万端だった。
両手をルイスの前にかざしてそれから呪いを中和するための魔法陣を発動させた。

自分の魔力がルイスの指先に触れる。
そこから手の甲、腕と撫でるようなイメージで魔力を拡げていく。

呪いはそれと反転する力を呪いがかかっているものとぴったり同等に流してやると中和できる。
他に条件がいろいろあるものもあるけれど、少なくてもこれはそういうものだ。

解く条件が複雑でない代わり増殖力があるタイプの呪いだ。
神経を呪いに絡みつかれながらそれに耐えているルイス王子の精神力はすさまじいと思う。

多分心が折れてしまえばもっとずっとこの呪いは一気に彼に浸食してしまうだろう。
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