4 / 50
本編
魔法使いの婚約者2
しおりを挟む
王宮主催のパーティの警備をしたとき第三王子をちらりと見たことがある。
その時よりも一層呪いが深まっている様に見える。
「すごい。神経接続型の呪いなんて初めて見た」
思わずテンションが上がってしまいそう言う。
婚約者になるまでは勝手に口もきいてはいけないと注意を受けていたのにやってしまった。
「ずいぶんと呪いに詳しいみたいですね」
第三王子は嘲るような笑みを浮かべる。
「はい。術式の解析が本業なので」
研究所では魔法使いは各々の研究分野をもっている。
その中で俺の研究分野はすでに存在する術式の解析だ。
主に古代遺跡などから発見される魔法陣や、手紙などに付与された呪いなどの解析を行っている。
他の所員の研究分野は魔道具の開発など、様々な分野に及んでいる。
ただ、いきなり挨拶もなく呪いの話をするのは貴族文化に関係なく明らかに失礼だ。
すみませんと言おうとしたところで遮られた。
俺の行動を無視して第三王子は婚約書にさらさらとサインをする。
これは俺と関わりたくないという意思表示だろうか。
まあ、失礼な人間とは関わり合いになりたくないというのは普通の感情だ。
サインした名前でこの人がルイスという名前なのだと知る。
第三王子、ルイスが婚約書を官吏に渡す。
この人もこの婚約は断れないものだと知っているのだろう。
なんの感情もこもらない婚約だと思った。
それからルイスは人払いをした。
「で、その呪いに詳しい君」
話しかけられて視線を合わせる。
ずいぶんと厭味ったらしい言い方をされたけれどこちらも失礼な物言いをしたのだから仕方がない。
「といってもどうせ、この呪いを解くこともできない程度の詳しさなんだろう?」
王子の口の端がいびつにゆがんだ様に上がったのがわかった。
頬にある呪いの文字がそれにつられてゆがむ。
結婚自体は致し方がないこととお互いに我慢するつもりなのだけれど、わざわざ嫌な気持ちを抱えながら暮らしたいとは思えない。
俺は目を細めると、思わずため息をつく。
「王家お抱えの低能になんて言われたかは知らないですけど、それは解けるタイプの呪いですよ」
神経に絡まりついてなお生きている症例は初めて見たけれど呪い自体は“知っている”ものだ。
解析さえできていれば呪いは昇華できる。
ルイスは疑いぶかくこちらを見て「本当に?」と聞いた。
「黒の魔法使いの名にかけて」
俺はそう答えると、第三王子は驚いた顔をしていた。
きっと婚約の話を持ち掛けられたときは白銀あたりとの話だと思い込んでいたのかもしれない。
彼はとても見目麗しくて結婚となっても仕方がないなと思えるだろう。
実際いたのはみすぼらしい見た目の俺だった。
けれど黒の名は国内外に知れ渡っているらしい。
老人だという噂が流れてしまったのは誤算だったけれど、どうでもいいので放っておいた。
いくつかの発見と新しい魔法式の発明をしたということで一部からは有名だ。
ルイスがその名を知っていることに少しばかりこちらが逆に驚いてしまったけれど別にそれはどうでもいいことだろうと思いなおす。
その時よりも一層呪いが深まっている様に見える。
「すごい。神経接続型の呪いなんて初めて見た」
思わずテンションが上がってしまいそう言う。
婚約者になるまでは勝手に口もきいてはいけないと注意を受けていたのにやってしまった。
「ずいぶんと呪いに詳しいみたいですね」
第三王子は嘲るような笑みを浮かべる。
「はい。術式の解析が本業なので」
研究所では魔法使いは各々の研究分野をもっている。
その中で俺の研究分野はすでに存在する術式の解析だ。
主に古代遺跡などから発見される魔法陣や、手紙などに付与された呪いなどの解析を行っている。
他の所員の研究分野は魔道具の開発など、様々な分野に及んでいる。
ただ、いきなり挨拶もなく呪いの話をするのは貴族文化に関係なく明らかに失礼だ。
すみませんと言おうとしたところで遮られた。
俺の行動を無視して第三王子は婚約書にさらさらとサインをする。
これは俺と関わりたくないという意思表示だろうか。
まあ、失礼な人間とは関わり合いになりたくないというのは普通の感情だ。
サインした名前でこの人がルイスという名前なのだと知る。
第三王子、ルイスが婚約書を官吏に渡す。
この人もこの婚約は断れないものだと知っているのだろう。
なんの感情もこもらない婚約だと思った。
それからルイスは人払いをした。
「で、その呪いに詳しい君」
話しかけられて視線を合わせる。
ずいぶんと厭味ったらしい言い方をされたけれどこちらも失礼な物言いをしたのだから仕方がない。
「といってもどうせ、この呪いを解くこともできない程度の詳しさなんだろう?」
王子の口の端がいびつにゆがんだ様に上がったのがわかった。
頬にある呪いの文字がそれにつられてゆがむ。
結婚自体は致し方がないこととお互いに我慢するつもりなのだけれど、わざわざ嫌な気持ちを抱えながら暮らしたいとは思えない。
俺は目を細めると、思わずため息をつく。
「王家お抱えの低能になんて言われたかは知らないですけど、それは解けるタイプの呪いですよ」
神経に絡まりついてなお生きている症例は初めて見たけれど呪い自体は“知っている”ものだ。
解析さえできていれば呪いは昇華できる。
ルイスは疑いぶかくこちらを見て「本当に?」と聞いた。
「黒の魔法使いの名にかけて」
俺はそう答えると、第三王子は驚いた顔をしていた。
きっと婚約の話を持ち掛けられたときは白銀あたりとの話だと思い込んでいたのかもしれない。
彼はとても見目麗しくて結婚となっても仕方がないなと思えるだろう。
実際いたのはみすぼらしい見た目の俺だった。
けれど黒の名は国内外に知れ渡っているらしい。
老人だという噂が流れてしまったのは誤算だったけれど、どうでもいいので放っておいた。
いくつかの発見と新しい魔法式の発明をしたということで一部からは有名だ。
ルイスがその名を知っていることに少しばかりこちらが逆に驚いてしまったけれど別にそれはどうでもいいことだろうと思いなおす。
38
お気に入りに追加
220
あなたにおすすめの小説
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる