それを恋とは呼ばないから

６８

愛というのは多分宗吾さんと同じ形をしている。

彼とキスをしていてそう思った。
宗吾さんの首筋に舌をはわせて、それから鎖骨を撫でる。

もう一度キスがしたいと思うと、今度は宗吾さんが僕の唇を舐める。
それから同じように首筋に舌を這わせて、それから僕の鎖骨を撫でた。

ふう。という熱い吐息がもれてしまう。

この人に触れられることがこんなにうれしい事になるとは思わなかった。
もっとと催促するみたいに腕を宗吾さんに回してしまう。

触れられても、自分が触れてもお腹は満たされないのに、体の別の部分が満たされている気がする。

宗吾さんの手は僕の背中を撫でると、そのまま尻尾に触れる。
尻尾が物欲しげにゆらゆらと揺れているのが自分でも分かる。

「ここ触られるの好き？」

ぞくぞくとする感触がする。

「あなたにされる事なら何でも好きですよ」

多分、他の人では駄目だ。
この人だからこその感覚なのだと思う。

尻尾が宗吾さんに媚びる様に、彼の手に巻き付く。
体の中も外も熱い。

その熱を宗吾さんに移してしまいたいと思う。

宗吾さんがなだめるみたいに僕の尾てい骨を撫でる。

「うつぶせになって」

宗吾さんに言われるけれど、少しだけ離れがたい。
それでもこれから彼が与えてくれるだろう快楽を考えるとノロノロと体を離してうつぶせになる。

宗吾さんが僕を見下ろす

「……紋様が変わってるね」

僕の腰のあたりを撫でながら言う。

「綺麗な紫いろになってるよ」

まるで、夕焼けから宵闇に変わるときの空の色みたいだ。
宗吾さんはそう言いながら多分紋様に沿って指でなぞる。

元々の模様がどんなものだったのかも覚えていない。

僕が淫魔なのだという証の一つではあるのだけれど、それはどうでもいいものの筈だった。

そこに、恭しく宗吾さんは唇を落とした。
セックスに直接関係あるのかも分からないその行為い体がギクリと震える。

僕が人でない証ですら愛おしいと言いたげに、宗吾さんは何度も僕の背中に口付けを落とす。