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家に来ているハウスキーパーの人が変わった。

最初の一か月くらいは、数人の人が交代で来ていた気がするのだけど、それ以降、三日に一度のペースで同じ人が来るようになっていた。

その人が俺と同じサキュバスの一種であることはすぐに分かった。

美しい見た目と絹の様な肌。
僕にニッコリと笑いかけられる笑顔も美しい。

僕なんかとは違う、とても上等な淫魔だと思った。

けれど、宗吾さんは彼をちらりと見て「書斎の掃除はいい」と言っただけだった。

元主のところにも僕より綺麗な人がたくさんいた。
男も女も何人もいたのに、彼が手をのばしたのは僕だけだ。

なんのために彼は僕を選んだのだろう。

「あ、あの、僕もお手伝い」

した方がいいですか? という言葉は飲み込んでしまった。

宗吾さんは「大丈夫だから」と言って笑顔を浮かべた。
特段掃除が上手いという訳でも無い。当然だと思った。



それからハウスキーパーの人は宗吾さんのいない時間にも時々来る。
気の利いた世間話もできないので大体はソファーの上でなるべく小さくなって過ごすようにしている。

宗吾さんに貰った本は、あれから何冊も増えている。
僕が本をときどき眺めていると知った宗吾さんが、その後何度も何度もお土産に買ってきてくれたものだ。

今日は雪の結晶の写真集をぼんやりと眺めていた。

ハウスキーパーの人が僕の方をちらりと見る。

視線があって、体が固まる。
こういう時どうしたらいいのか分からない。

友達もいない。家族も今はいない。
誰かと話すことも無い。

「大丈夫ですよ」

ハウスキーパーさんは笑顔を浮かべる。
彼が何を大丈夫と言っているのかよく分からない。

彼は笑みを深めたあと「俺は絶対にあなたに危害をくわえないし、エッチなこともしないからって理由で選ばれたんですよぉ」と言った。

パートナーさん独占欲強めですよね。と言われて最初ハウスキーパーさんが何を僕に伝えようとしているのかよく分からなかった。

それが宗吾さんの事で、この人は僕の事を宗吾さんのパートナーだと思っていることに数秒経ってようやく気が付く。

僕は宗吾さんのパートナーではない。
じゃあ、僕は何なのか。それは自分でもよく分からなかった。
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