思い出レストラン

渡辺 佐倉

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「おじちゃんに言われなくても、そんな事は分かってる。だけど、だけどね……。」

美和はぽろぽろと涙をこぼした。
それをただ横で眺めながら葬儀屋は何も言わなかった。



しばらく泣いて、ようやく落ち着いたらしい美和はポケットからだしたハンカチで目元を拭いた。

「ちゃんとごめんなさいって言って仲直りしなきゃいけないんだけどね。
あーあ、こういう時おばあちゃんの特製チャーハンって決まってたのに。」

ポツリとこぼした美和の言葉に、葬儀屋はそういうことであればと伝えた。

「貴方のおばあちゃんの弟子が知り合いにいます。おばあちゃんの味に叶うかは分かりませんが是非食べていただきたいです。」

葬儀屋が言う。

「でも今もう9時よ!」
「その辺の事はご心配なく。」

葬儀屋は笑ったつもりだった。30分程お待ちくださいと言ってその場を離れた。



「もしもし春田だ。」
「特製チャーハンを今すぐ出前して欲しいんだけど。」
「はあ!?今何時だと思ってるんだ。」
「美和ちゃんからの注文だから急いでね。」

名前を強調すると少し沈黙があった後春田は溜息と共に「分かった。」と返した。
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