言の葉は、君のうたと

渡辺 佐倉

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見合いすら無い結婚 ※義直視点

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* * *

自分の結婚は、腕を失ったことによるものによるものだと信じていた。
生活にも支障をきたす上、今までになっていた淀みを祓う仕事も十全にはできなくなった。

引退を勧告するためと厄介払いのため、同じように厄介払いされた女性と婚姻をねじ込まれたのだと思った。
だから、見合いすらなく決定事項の様に婚姻した。

その時は腕を失った自分にはそんなものかと思った。
嫁に来たのは口のきけない娘だった。

足りないものがあるもの同士お似合いだとでも思われたのだろうか。
美しい娘、綾を見て哀れだとさえ思った。

けれど、昨日彼女の言霊の力を見てその考えが変わった。
彼女は事情を何も知らないようだった。

俺自身も何も知らされていない。
彼女が嫁いできた際に持参した手紙にも淡々と婚姻の事実と口がきけぬことが書かれていただけでそれ以外何も書かれていなかった。

確認をせねばならないことが多い。
仕事で必要な時に付けるための義手は出来上がっていた。
言霊の力で動くそれは指先まで思うまま動かすことが出来る。


戦うことになると予感しているのだろうか。
それは自分でも分からない。
寿命を少しだけ縮めれば綾の力を借りず、義手での生活もできた。
本当は彼女に甘えて居たかっただけかもしれないと思いいたって、昨日恥ずかしくなった。

婚姻を斡旋した、戸田の本家に事情を確認の後、綾の実家に向かう予定だ。
どこで彼女の異能が隠されたのか。

それとも、誰も知らない偶発的な事故だったのか。

後者の可能性は彼女が目を覚ますまでに可能性から外されていた。
彼女には不可視の封印が元々施されていたこと、めちゃくちゃになった部屋を見た調査部の人間が、これは大人になってから発現するような質のものではないことから判明していた。
封印を見た、言霊使いの医師も同じ意見だった。
彼女を封印した人間がいる筈だと。

封印してまで守りたかったのか、隠したかったのかは今はまだ分からない。
けれど、そのどちらだとしても自分の元に歩織り出される様なものではない。

強引に本家を訪ねると、義手を付けた俺を見て当主が驚いていた。

「ふさぎこんでいるものとばかり思っていたが、心境の変化でもあったかな?」

そう言われる。
これは心境の変化と言っていいのだろうか。
状況の変化ではないのだろうか。

「私と、綾の結婚の経緯をお聞かせ願いたい」

俺がそう言うと当主は眉をひそめた。
何故突然俺がそんなことを聞きに態々ここに来たのか分からないと言った表情だった。
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