言霊の國

渡辺 佐倉

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伴侶というもの2

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結局すぐにリーンのもっている屋敷の一つに引っ越しになった。
伴侶なのだからという同衾の申し出は断った。

この世界でも同性愛者は普通にいる。
けれど目の前の男がそうなのかは分からない。

仕事としておそらくそこまでやるつもりなのだろうなと考えて、こちらがその仕事に付き合う必要はないのだと強く自分を律する。
それから、少しばかり何かを期待してしまった自分に自嘲する。

恋愛感情は自分ひとりで完結するはずのものだったのではなかったのか。

一人で何をやっているのだと思う。

これではあの友人主従の方がよほどまともな恋愛に近い何かになっているんじゃないかとさえ思う。

「必要なものはありますか?」

用意された部屋はシンプルだが高級な品だと分かる調度品が置かれていた。

「紙と、墨と、それから彫金細工用の道具一式を……」

備えねばならないものは沢山あった。

必死になっている友人を見て、蟲とすみ分けるのではなく、確実に駆除することについても考えねばならない。
彼の力は弱い。
拡声器は言霊を使うのに必須だ。

それを量産してやらねばならない。

「あとは餅という食品を調べて手配してや」
「モチ?」

リーンはオウム返しの様に言葉を返す。

「こっちで見たことあったで。米をついて丸くまとめたもんや。
言霊を使うことによって削られた魂を少し回復できるんやけど」

出来れば販路を独占したい。
これからこの国にいるかもしれない言霊使いを探すつもりだが、言霊に関わる産業はこちらで抑えておきたい。

「悪い笑顔ですねえ」

リーンは俺に向かってそう言った。
そんなにひどい顔をしていただろうか。
まあ、していたのだろう。

「伴侶に向かって、よい言い草やな」

だが、そちらの方がいい。それが多分彼の素だから。
そう思ってしまった。

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