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彼の事故について2
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沢山泣いた後、この国ではソーセージの入ったスープを飲む風習があるらしい。
塩気と暖かさ泣きすぎてぼんやりとした頭には正直ありがたかった。
オーウェンさんと一緒に食べて、今日はそのまま休むと良いと言って部屋まで送ってもらった。
俺は、ここで生きていかないといけない。
ようやく俺は少しだけ覚悟できたのかもしれない。
◆ ◆ ◆
翌日新聞の日にちは一つ進んでいた。
そしてオーウェンさんは自分の“忘れ物”を自分で拾っていた。
その時彼が忘れ物をしていたことにはじめて気が付いた。
それから、彼は俺に忘れ物の解析と一緒に確認したいことがあるのだけど、そのための調べ物に協力して欲しいと言った。
俺は「この図書館の研究だけをしてほしいなんて無理、俺言いませんよ」と言うと、彼は申し訳なさそうに笑った。
本当にあの布のインスピレーションがこの図書館が出発点だったとしてそこまでしてもらえるなんて驕っていない。
そう伝えると、オーウェンさんは「俺は俺の選んだことをやるだけだよ」と言った。
彼が欲しいと言った資料は天候や気象についてのものだった。
一瞬夏休みの天気調べのことを思い出したけれど、そういう事ではなくて、気圧の仕組みや雲の流れ、気候変動そういったものについての本を求めていた。
多分学術的な資料は閉架にしかないだろう。
けれど、集められるだけの本を集めた。
そして、確か閉架の本でも予約をすれば借りられることを思い出す。
今集めた本の、出典や参考図書にかかれている学術書をカウンターにある予約申込書に書き込んでおいておく。
明日見に来る予定だ。
図書館のテーブルでできる限り彼に説明をしながら一緒に本を読み残りの本は持ち帰って屋敷で読むことにした。
オーウェンさんは恐ろしい速度で日本語が読めるようになっていることだった。
前の様に完全な読み聞かせではなくなっている。
オーウェンさんはパラパラと本をめくって自分ひとりでとりあえず内容を確認する本を決めている様だった。
それから“区立第三図書館”を二人で出た。
オーウェンさんに引き続き借りた気象関連の本の説明をするのかと思ったら、研究室へ行くという。
そこへ向かうとオーウェンさんは“忘れ物”を取り出した。
「これは記録用の魔道具だ。
一般には流通していないものだけど多分妨害が無ければ機能俺たちが帰ってから今日再び図書館を訪れるまでの記録が収められている」
オーウェンさんはその魔道具を操作すると映写機の様に映像が浮かび上がった。
「妨害はなさそうだね。
少なくとも何か魔術的な関与があるようなスキルではないという事だ」
オーウェンさんは言う、それから魔道具をいじって早送りの状態にした。
彼が何を気にしているのかは分かる。
どうやって新聞は新しい物になっているのか。
本物の図書館は毎日司書の人がやっているのだと思う。
夕暮れが来てそれからあたりが暗くなる。
それでも綺麗に写されているのでこの魔道具はとても優秀だと思った。
オーウェンさんは別のことを考えていた様だ。
「ここにも夜があるんだね」
そういえばそれは不思議だった。
そして夜が明け、朝になった。
人が来るのかとドキドキした、それともデータがリセットされるように図書館が新しく切り替わるのか。
カタンと音がした。
古い新聞を挟んでいたものが一瞬ふわりと浮かび上がると消え、何もないところから新しい新聞が出てきてことりと新聞のコーナーに置かれた。
息が上手くできない気がした。
それを見たオーウェンさんは、ふうと息を吐き出した後「いくつか実験をしよう」と言った。
それから、「他の勇者候補と連絡は取れる?」と聞かれた。
勇者に決まった二人とはすぐに別行動になってしまったけれど、行商をすると言っていた人は商人ギルドに登録したと言っていた、屋号も聞いていた。
その旨伝えると、「それなら多分すぐに連絡がとれるね」と言った。
何故そんなことをを気にするのかと思わず聞くと「異世界のものが欲しいから」とオーウェンさんは言った。
物珍しがるこっちの人間に売り払った後じゃないといいのだけれど。と彼は心配していた。
「何故……?」
「この魔道具は置かれっぱなしだった。じゃああちらの世界のものは?
そちらの方が親和性が高くもしかしたら――という可能性がある。
実験に使えるものは多ければ多いほどいい。色々試せるから。
だけど、思い出の物となると譲ってはもらえなくなるだろう。
なんでもいいんだ商店の明細でも何でも……」
そういうものは俺もそのまま取ってある。あの日持っていた鞄ごと服もすべて取ってある。
「俺のものも」
「できれば大切なもの以外は使わせてくれると嬉しい」
オーウェンさんはそう言った。
それから他の転移者にこのことは秘密だとも。
彼が秘密にしようと決めた理由は何となく想像できたので頷いた。
塩気と暖かさ泣きすぎてぼんやりとした頭には正直ありがたかった。
オーウェンさんと一緒に食べて、今日はそのまま休むと良いと言って部屋まで送ってもらった。
俺は、ここで生きていかないといけない。
ようやく俺は少しだけ覚悟できたのかもしれない。
◆ ◆ ◆
翌日新聞の日にちは一つ進んでいた。
そしてオーウェンさんは自分の“忘れ物”を自分で拾っていた。
その時彼が忘れ物をしていたことにはじめて気が付いた。
それから、彼は俺に忘れ物の解析と一緒に確認したいことがあるのだけど、そのための調べ物に協力して欲しいと言った。
俺は「この図書館の研究だけをしてほしいなんて無理、俺言いませんよ」と言うと、彼は申し訳なさそうに笑った。
本当にあの布のインスピレーションがこの図書館が出発点だったとしてそこまでしてもらえるなんて驕っていない。
そう伝えると、オーウェンさんは「俺は俺の選んだことをやるだけだよ」と言った。
彼が欲しいと言った資料は天候や気象についてのものだった。
一瞬夏休みの天気調べのことを思い出したけれど、そういう事ではなくて、気圧の仕組みや雲の流れ、気候変動そういったものについての本を求めていた。
多分学術的な資料は閉架にしかないだろう。
けれど、集められるだけの本を集めた。
そして、確か閉架の本でも予約をすれば借りられることを思い出す。
今集めた本の、出典や参考図書にかかれている学術書をカウンターにある予約申込書に書き込んでおいておく。
明日見に来る予定だ。
図書館のテーブルでできる限り彼に説明をしながら一緒に本を読み残りの本は持ち帰って屋敷で読むことにした。
オーウェンさんは恐ろしい速度で日本語が読めるようになっていることだった。
前の様に完全な読み聞かせではなくなっている。
オーウェンさんはパラパラと本をめくって自分ひとりでとりあえず内容を確認する本を決めている様だった。
それから“区立第三図書館”を二人で出た。
オーウェンさんに引き続き借りた気象関連の本の説明をするのかと思ったら、研究室へ行くという。
そこへ向かうとオーウェンさんは“忘れ物”を取り出した。
「これは記録用の魔道具だ。
一般には流通していないものだけど多分妨害が無ければ機能俺たちが帰ってから今日再び図書館を訪れるまでの記録が収められている」
オーウェンさんはその魔道具を操作すると映写機の様に映像が浮かび上がった。
「妨害はなさそうだね。
少なくとも何か魔術的な関与があるようなスキルではないという事だ」
オーウェンさんは言う、それから魔道具をいじって早送りの状態にした。
彼が何を気にしているのかは分かる。
どうやって新聞は新しい物になっているのか。
本物の図書館は毎日司書の人がやっているのだと思う。
夕暮れが来てそれからあたりが暗くなる。
それでも綺麗に写されているのでこの魔道具はとても優秀だと思った。
オーウェンさんは別のことを考えていた様だ。
「ここにも夜があるんだね」
そういえばそれは不思議だった。
そして夜が明け、朝になった。
人が来るのかとドキドキした、それともデータがリセットされるように図書館が新しく切り替わるのか。
カタンと音がした。
古い新聞を挟んでいたものが一瞬ふわりと浮かび上がると消え、何もないところから新しい新聞が出てきてことりと新聞のコーナーに置かれた。
息が上手くできない気がした。
それを見たオーウェンさんは、ふうと息を吐き出した後「いくつか実験をしよう」と言った。
それから、「他の勇者候補と連絡は取れる?」と聞かれた。
勇者に決まった二人とはすぐに別行動になってしまったけれど、行商をすると言っていた人は商人ギルドに登録したと言っていた、屋号も聞いていた。
その旨伝えると、「それなら多分すぐに連絡がとれるね」と言った。
何故そんなことをを気にするのかと思わず聞くと「異世界のものが欲しいから」とオーウェンさんは言った。
物珍しがるこっちの人間に売り払った後じゃないといいのだけれど。と彼は心配していた。
「何故……?」
「この魔道具は置かれっぱなしだった。じゃああちらの世界のものは?
そちらの方が親和性が高くもしかしたら――という可能性がある。
実験に使えるものは多ければ多いほどいい。色々試せるから。
だけど、思い出の物となると譲ってはもらえなくなるだろう。
なんでもいいんだ商店の明細でも何でも……」
そういうものは俺もそのまま取ってある。あの日持っていた鞄ごと服もすべて取ってある。
「俺のものも」
「できれば大切なもの以外は使わせてくれると嬉しい」
オーウェンさんはそう言った。
それから他の転移者にこのことは秘密だとも。
彼が秘密にしようと決めた理由は何となく想像できたので頷いた。
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