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彼の事故について1
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いい大人が年下の前で、泣いて泣いて泣きじゃくってしまった。
泣きすぎて鼻がつまっているし多分あちこち赤くなっている。
それから申し訳ない気分になった。
オーウェンさんにはかなり気を使って俺の生活を良い物にしてもらっている自覚はあった。
まともな給料に良い食事、仕事もそれほどきつくなく、まさに破格の対応をしてもらっている。
それなのに、本音は、そんなものより帰りたくて帰りたくてたまらなかったという事を吐露しているのだ。
なんて酷い人間なのだろうと思う。
彼のやさしさを、もてなしを何もかも無碍にしているという罪悪感が募る。
けれど、オーウェンさんはそれをあたり前の感情として受け止めてくれている。
俺の背中を撫でる手が優しい。
それがより申し訳ない気持ちを募らせる。
「すみません。こんなによくしていただいているのに」
嗚咽交じりで俺はオーウェンさんにそう言った。
オーウェンさんは「勝手に連れてこられたサカキが申し訳なく思う必要なんてないんだよ……」と言ってくれた。
それから「勇者と呼ばれる人間が持っているスキルに頼らなければいけないこの世界が悪い」と付け加えるように言った。
その声は固く、思わず俺は涙目のままオーウェンさんを見上げる。
オーウェンさんは難しい顔をしていた。そしてその表情ととても悲しげだった。
俺に同情しているというのとは何か違うように思えた。
そして、オーウェンさんの様な天才がいても勇者召喚をしなければならないことに気が付いた。
勇者が必要になる脅威とは何かを聞かされていない事にも……。
そうやって考えてしまうことがもう、諦めてこの世界で先を探していかなければいけないと理性ではわかっている証拠で、それが悲しくてまた涙が零れ落ちた。
泣いて泣いて、少しだけ気分が軽くなった気がした。
男の人がこんなに近くにいたのは初めてだと気が付いたけれど、それをオーウェンさんに伝えるつもりは無かった。
泣きすぎて鼻がつまっているし多分あちこち赤くなっている。
それから申し訳ない気分になった。
オーウェンさんにはかなり気を使って俺の生活を良い物にしてもらっている自覚はあった。
まともな給料に良い食事、仕事もそれほどきつくなく、まさに破格の対応をしてもらっている。
それなのに、本音は、そんなものより帰りたくて帰りたくてたまらなかったという事を吐露しているのだ。
なんて酷い人間なのだろうと思う。
彼のやさしさを、もてなしを何もかも無碍にしているという罪悪感が募る。
けれど、オーウェンさんはそれをあたり前の感情として受け止めてくれている。
俺の背中を撫でる手が優しい。
それがより申し訳ない気持ちを募らせる。
「すみません。こんなによくしていただいているのに」
嗚咽交じりで俺はオーウェンさんにそう言った。
オーウェンさんは「勝手に連れてこられたサカキが申し訳なく思う必要なんてないんだよ……」と言ってくれた。
それから「勇者と呼ばれる人間が持っているスキルに頼らなければいけないこの世界が悪い」と付け加えるように言った。
その声は固く、思わず俺は涙目のままオーウェンさんを見上げる。
オーウェンさんは難しい顔をしていた。そしてその表情ととても悲しげだった。
俺に同情しているというのとは何か違うように思えた。
そして、オーウェンさんの様な天才がいても勇者召喚をしなければならないことに気が付いた。
勇者が必要になる脅威とは何かを聞かされていない事にも……。
そうやって考えてしまうことがもう、諦めてこの世界で先を探していかなければいけないと理性ではわかっている証拠で、それが悲しくてまた涙が零れ落ちた。
泣いて泣いて、少しだけ気分が軽くなった気がした。
男の人がこんなに近くにいたのは初めてだと気が付いたけれど、それをオーウェンさんに伝えるつもりは無かった。
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