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ここはどこ2
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知りたいこと、で一番最初に思い浮かんだことがある。
もったいない事です。と断るべきところなのかもしれない。お給金はきちんともらっているのだから。
だけど少しずつ積み重ねてくれた辞書が彼のやさしさであるのならば、俺の正直な気持ちを伝えた方がいいのかもしれない。
「図書館で話すのでもいいですか?」
「もちろん」
オーウェンさんはそう言った。
二人で図書館に入る。何となくいつも手を差し出されてエスコートされるのが癖の様になってしまっている。
二人で中に入ってそれから子供向けの児童書の先に見える大きな窓の前に来た。
何から話そうか少し悩んだ。
「……この外の道の先に俺の家があるんですよ」
今日も誰も通らない道路を見ながら言う。
「この外の世界は本物だと思いますか?」
俺の今一番知りたいことはそれだった。
この先に俺のうちはあるのか。
「やっぱり、故郷には帰りたいですか?」
「それは、まあ……勿論」
今の生活はオーウェンさんのおかげて穏やかに過ごせているけれど、今までの生活に未練が無いと言ったらウソになる。
「……それではまず、ここはあなたの記憶の通りの図書館だという話でしたね」
「はい。でも、俺の記憶にはない本も沢山あるので」
多分俺の記憶が作り出していることはないだろう。
記憶にない知識が正しいか確認のしようが無いけれど……。
と思ったところで、この人はすでにいくつか確認したのではないだろうかと思った。
最初は文化を知りたいのかと思う様なチョイスだった本選びがだんだんと工業よりになっていた。
魔道具を作るという前提があったのかもしれないけれど、何も検証せずに魔道具というものは作り出せるものなのだろうか。
それができるから天才と言われていたのだろうか。
「じゃあ、ここがいつの図書館なのかまず確認してみましょう」
日付の分かるものを探しましょう。
そう言われ最初に思い浮かんだのが、新刊コーナーだった。
入り口をはいって左に少し行ったところ、勉強用のテーブルセットがいくつか並んでいる奥に確か新刊コーナーはある。
本の最後にある奥付を見れば多分、きっと参考にはなるだろう。
「嘘だろ……」
新刊コーナーで見たものに俺は驚いてしまう。
今月の新刊だよりと書かれた小さなプリントが貼られている。
そこにかかれた年月は――
俺がこの国に召喚されたより後の年月が書かれていた。
もったいない事です。と断るべきところなのかもしれない。お給金はきちんともらっているのだから。
だけど少しずつ積み重ねてくれた辞書が彼のやさしさであるのならば、俺の正直な気持ちを伝えた方がいいのかもしれない。
「図書館で話すのでもいいですか?」
「もちろん」
オーウェンさんはそう言った。
二人で図書館に入る。何となくいつも手を差し出されてエスコートされるのが癖の様になってしまっている。
二人で中に入ってそれから子供向けの児童書の先に見える大きな窓の前に来た。
何から話そうか少し悩んだ。
「……この外の道の先に俺の家があるんですよ」
今日も誰も通らない道路を見ながら言う。
「この外の世界は本物だと思いますか?」
俺の今一番知りたいことはそれだった。
この先に俺のうちはあるのか。
「やっぱり、故郷には帰りたいですか?」
「それは、まあ……勿論」
今の生活はオーウェンさんのおかげて穏やかに過ごせているけれど、今までの生活に未練が無いと言ったらウソになる。
「……それではまず、ここはあなたの記憶の通りの図書館だという話でしたね」
「はい。でも、俺の記憶にはない本も沢山あるので」
多分俺の記憶が作り出していることはないだろう。
記憶にない知識が正しいか確認のしようが無いけれど……。
と思ったところで、この人はすでにいくつか確認したのではないだろうかと思った。
最初は文化を知りたいのかと思う様なチョイスだった本選びがだんだんと工業よりになっていた。
魔道具を作るという前提があったのかもしれないけれど、何も検証せずに魔道具というものは作り出せるものなのだろうか。
それができるから天才と言われていたのだろうか。
「じゃあ、ここがいつの図書館なのかまず確認してみましょう」
日付の分かるものを探しましょう。
そう言われ最初に思い浮かんだのが、新刊コーナーだった。
入り口をはいって左に少し行ったところ、勉強用のテーブルセットがいくつか並んでいる奥に確か新刊コーナーはある。
本の最後にある奥付を見れば多分、きっと参考にはなるだろう。
「嘘だろ……」
新刊コーナーで見たものに俺は驚いてしまう。
今月の新刊だよりと書かれた小さなプリントが貼られている。
そこにかかれた年月は――
俺がこの国に召喚されたより後の年月が書かれていた。
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