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ここはどこ1

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オーウェンさんはしばらく、図面をひいてひいて、何かを書き込んでいた。

俺にはさっぱりそれが何か分からなかったけれど、迷いなく線はひかれているみたいに見えた。

「サカキと話した内容で助かってるからだよ」

とオーウェンさんは言った。
今まで話した中の何が役に立ったのかはよく分からなかった。

それからしばらくしてオーウェンさんは工房に何度か通っていた。
魔力のまるでない俺は危ないという事でその日はお休みになっていた。

この世界の子供向けの手習いの本を用意してもらって文字の書き方を練習していた。


しばらくして、使用人であるメイドさんたちが「やはりご主人様はすごい方だ」と喜んでいるのを聞いた。

◆ ◆ ◆

オーウェンさんが取り出したのは光を反射して、オーロラの様に光る光沢のある生地だった。

「あなたの世界のレーヨンを参考に糸と布を作る魔道具を作りました」


折角だから水の魔道回路を使って水にも強い布に仕上げました。
魔物繭に比べて安定量産が可能な上、染色が容易なのでアレンジもしやすいと説明をされた。
見せられた布は美しく、ドレスで過ごすことの多いこの国の貴族には人気になるだろうと思った。



「要するにこの世界初の化学繊維ってやつですね」

ちゃんと訳されたでしょうか?とオーウェンさんが言った。

この世界にはこれまで化学繊維が無かったのかと知る。
そして、名前だけ知っているそれは多分こんな布じゃなかったことも分かる。
魔法の力でずいぶんと豪華になっている。

けれど、細かい話は俺ではよくわからなかった。
やっぱり、すごい人なのだと思った。
何故このタイミングなのかは俺にもよくわからないけれど、オーウェンさんが正当な評価を得られるのはいい事だと思う。

「手伝ってくれたサカキにも、お礼をしたいな」


オーウェンさんがいう。
装飾品についての本を一緒に読んだ記憶はあるけれどそれ以外何かを手伝えていた記憶はない。
雑用係として研究室の色々を少し整理したくらいだ。

「と、その前にまずは……」

照れたように笑ってから、オーウェンさんはきれいな装丁がされた本を俺に渡した。

「まだ途中までだけど辞典を作ったんだよ」
「サカキの国の言葉を話したいし読み書きしたいから」

そう言うオーウェンさんから視線を外し、渡された本を開く。

中にはこの国の言葉と日本語、それから一部英語が書かれていた。
英和辞典の様なものがきれいにまとめられていた。

「これはサカキもつかるだろうし、これからこの世界に迷い込んだ人もつかえるだろう?」

そう言った。
呼ばれたと彼が言っていないことに気が付く。
そういえばこの人が勇者召喚についてどう思っているか聞いたことが無いことに気が付いた。

「さて、それで本題だ。
私はサカキにお礼がしたい。なにか困っていることとか新しく発見して欲しいことはないかい?」

オーウェンさんはそう言った。
何が欲しい?と聞かないところが彼らしいと思った。そういう人だ。
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