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朝と彼の周りと、研究と
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◆ ◆ ◆
目が覚めた。
俺は酔っぱらっても記憶が無くなるタイプではなかった。
客室なのだろう。1泊3万円のホテルよりもはるかに豪華なベッドの感触に申し訳なくなる。
迷惑をかけたと落ち込む。
けれど、それもあるけれど寝落ちしてしまう直前、オーウェンさんに言われたことが気になった。
『この世界では男もはらめるんですねえ』
自分の言った言葉だ。オーウェンさんは否定していなかった。
そんな重要な事実は先に教えておいてくれ!!!と思ったけれど何が重要かの価値観が多分違うのだろうと思った。
当たり前だから知ってるだろうというものも違う。
オーウェンさんからはさぞかし世間知らずで愚かな者に見えてるんだろうなと思って、少し落ち込む。
二日酔いの症状は無かった。
オーウェンさんが朝食に呼びに来た。
朝食を食べたら一旦アパルトメントに帰る予定だ。
オーウェンさんは叔父さんを読んでいるらしい。
「お待ちくださいませ」
悲鳴、というか悲痛というかそういう声が聞こえる。
そしてバタバタという走る音と共にドアがバンと大きくあいた。
そこには俺にこの仕事を紹介した叔父さんがいた。
叔父さんはこちらを侮蔑を含んだ目で見た。
酔っぱらったことは恥ずかしいけれど昨日あの話をしておいてよかった。
何故彼がこういう目で俺を見るか、理由が分かるからだ。
けれど叔父さんは俺に何も言わず、オーウェンさんに「どういうことだい?」と聞いた。
「これは叔父としての忠告だれけれど、きみには、そこの彼の世話よりももっとやるべきことがあるんじゃないかい?」
「彼の世話?何を言っているんですか」
「突然研究助手にするなんて言い出すのはそういうことだろう?」
「違いますけど……」
「今までだって君はずっと一人でやってきたじゃないか、前みたいにまた一人で素敵な商品を作り出せばいいんだよ。
魔道具の設計に魔法が使えるかどうかは関係ない。
新しい製品をどんどんと作り出して家門を盛り立てていく方を優先すべきだろう」
そこに俺は必要ないとばかりに叔父さんは俺をにらみつけた。
彼はオーウェンさんにまた魔道具の新商品を作って欲しくて俺を家庭教師にしたのだろう。
知らない世界のことを話せばインスピレーションが浮かぶと思って。
叔父さんという人にとって、オーウェンさんは魔道具を作って自分たちを儲けさせてくれる人という事なのだろう。
オーウェンさんは大きくため息をついていた。
けれど、次の瞬間これぞ貴族という感じの張り付いた笑みを浮かべた。
「叔父上の気持ちは大変ありがたいです。
でもだからこそ、新たに始める研究に彼が必要なんですよ。
異世界人である彼が。
わかりますか?」
翻訳では割と普通だけれどきっと慇懃無礼に言ったのだろうという事が分かる。
叔父さんの顔つきが喜んだり苦虫をかみつぶしたり忙しいからだ。
「研究を再開する気になったのか!!!!」
それでも結局叔父さんは喜んでいた。
「だから、俺の好きにさせてもらいますよ」
オーウェンさんはそう言った。
本当に彼は何かを始めるつもりなのだろうか。
そもそも、何故彼は活動の一切をやめて元天才と言われることに甘んじてしまっていたのだろう。
「これで堕ちた天才なんて言われることはないな!!」
ああよかった。よかった。とおじさんは言っていた。
それを聞いている最中ずっとムカムカとしていた。
この人にとってオーウェンさんは魔道具を作ることにしか価値が無いように見えた。
それが、この人にとっての当たり前で、それに付き合わされるオーウェンさんもそれを当たり前としていた。
それがとても気持ち悪かった。
目が覚めた。
俺は酔っぱらっても記憶が無くなるタイプではなかった。
客室なのだろう。1泊3万円のホテルよりもはるかに豪華なベッドの感触に申し訳なくなる。
迷惑をかけたと落ち込む。
けれど、それもあるけれど寝落ちしてしまう直前、オーウェンさんに言われたことが気になった。
『この世界では男もはらめるんですねえ』
自分の言った言葉だ。オーウェンさんは否定していなかった。
そんな重要な事実は先に教えておいてくれ!!!と思ったけれど何が重要かの価値観が多分違うのだろうと思った。
当たり前だから知ってるだろうというものも違う。
オーウェンさんからはさぞかし世間知らずで愚かな者に見えてるんだろうなと思って、少し落ち込む。
二日酔いの症状は無かった。
オーウェンさんが朝食に呼びに来た。
朝食を食べたら一旦アパルトメントに帰る予定だ。
オーウェンさんは叔父さんを読んでいるらしい。
「お待ちくださいませ」
悲鳴、というか悲痛というかそういう声が聞こえる。
そしてバタバタという走る音と共にドアがバンと大きくあいた。
そこには俺にこの仕事を紹介した叔父さんがいた。
叔父さんはこちらを侮蔑を含んだ目で見た。
酔っぱらったことは恥ずかしいけれど昨日あの話をしておいてよかった。
何故彼がこういう目で俺を見るか、理由が分かるからだ。
けれど叔父さんは俺に何も言わず、オーウェンさんに「どういうことだい?」と聞いた。
「これは叔父としての忠告だれけれど、きみには、そこの彼の世話よりももっとやるべきことがあるんじゃないかい?」
「彼の世話?何を言っているんですか」
「突然研究助手にするなんて言い出すのはそういうことだろう?」
「違いますけど……」
「今までだって君はずっと一人でやってきたじゃないか、前みたいにまた一人で素敵な商品を作り出せばいいんだよ。
魔道具の設計に魔法が使えるかどうかは関係ない。
新しい製品をどんどんと作り出して家門を盛り立てていく方を優先すべきだろう」
そこに俺は必要ないとばかりに叔父さんは俺をにらみつけた。
彼はオーウェンさんにまた魔道具の新商品を作って欲しくて俺を家庭教師にしたのだろう。
知らない世界のことを話せばインスピレーションが浮かぶと思って。
叔父さんという人にとって、オーウェンさんは魔道具を作って自分たちを儲けさせてくれる人という事なのだろう。
オーウェンさんは大きくため息をついていた。
けれど、次の瞬間これぞ貴族という感じの張り付いた笑みを浮かべた。
「叔父上の気持ちは大変ありがたいです。
でもだからこそ、新たに始める研究に彼が必要なんですよ。
異世界人である彼が。
わかりますか?」
翻訳では割と普通だけれどきっと慇懃無礼に言ったのだろうという事が分かる。
叔父さんの顔つきが喜んだり苦虫をかみつぶしたり忙しいからだ。
「研究を再開する気になったのか!!!!」
それでも結局叔父さんは喜んでいた。
「だから、俺の好きにさせてもらいますよ」
オーウェンさんはそう言った。
本当に彼は何かを始めるつもりなのだろうか。
そもそも、何故彼は活動の一切をやめて元天才と言われることに甘んじてしまっていたのだろう。
「これで堕ちた天才なんて言われることはないな!!」
ああよかった。よかった。とおじさんは言っていた。
それを聞いている最中ずっとムカムカとしていた。
この人にとってオーウェンさんは魔道具を作ることにしか価値が無いように見えた。
それが、この人にとっての当たり前で、それに付き合わされるオーウェンさんもそれを当たり前としていた。
それがとても気持ち悪かった。
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