11 / 25
朝と彼の周りと、研究と
しおりを挟む
◆ ◆ ◆
目が覚めた。
俺は酔っぱらっても記憶が無くなるタイプではなかった。
客室なのだろう。1泊3万円のホテルよりもはるかに豪華なベッドの感触に申し訳なくなる。
迷惑をかけたと落ち込む。
けれど、それもあるけれど寝落ちしてしまう直前、オーウェンさんに言われたことが気になった。
『この世界では男もはらめるんですねえ』
自分の言った言葉だ。オーウェンさんは否定していなかった。
そんな重要な事実は先に教えておいてくれ!!!と思ったけれど何が重要かの価値観が多分違うのだろうと思った。
当たり前だから知ってるだろうというものも違う。
オーウェンさんからはさぞかし世間知らずで愚かな者に見えてるんだろうなと思って、少し落ち込む。
二日酔いの症状は無かった。
オーウェンさんが朝食に呼びに来た。
朝食を食べたら一旦アパルトメントに帰る予定だ。
オーウェンさんは叔父さんを読んでいるらしい。
「お待ちくださいませ」
悲鳴、というか悲痛というかそういう声が聞こえる。
そしてバタバタという走る音と共にドアがバンと大きくあいた。
そこには俺にこの仕事を紹介した叔父さんがいた。
叔父さんはこちらを侮蔑を含んだ目で見た。
酔っぱらったことは恥ずかしいけれど昨日あの話をしておいてよかった。
何故彼がこういう目で俺を見るか、理由が分かるからだ。
けれど叔父さんは俺に何も言わず、オーウェンさんに「どういうことだい?」と聞いた。
「これは叔父としての忠告だれけれど、きみには、そこの彼の世話よりももっとやるべきことがあるんじゃないかい?」
「彼の世話?何を言っているんですか」
「突然研究助手にするなんて言い出すのはそういうことだろう?」
「違いますけど……」
「今までだって君はずっと一人でやってきたじゃないか、前みたいにまた一人で素敵な商品を作り出せばいいんだよ。
魔道具の設計に魔法が使えるかどうかは関係ない。
新しい製品をどんどんと作り出して家門を盛り立てていく方を優先すべきだろう」
そこに俺は必要ないとばかりに叔父さんは俺をにらみつけた。
彼はオーウェンさんにまた魔道具の新商品を作って欲しくて俺を家庭教師にしたのだろう。
知らない世界のことを話せばインスピレーションが浮かぶと思って。
叔父さんという人にとって、オーウェンさんは魔道具を作って自分たちを儲けさせてくれる人という事なのだろう。
オーウェンさんは大きくため息をついていた。
けれど、次の瞬間これぞ貴族という感じの張り付いた笑みを浮かべた。
「叔父上の気持ちは大変ありがたいです。
でもだからこそ、新たに始める研究に彼が必要なんですよ。
異世界人である彼が。
わかりますか?」
翻訳では割と普通だけれどきっと慇懃無礼に言ったのだろうという事が分かる。
叔父さんの顔つきが喜んだり苦虫をかみつぶしたり忙しいからだ。
「研究を再開する気になったのか!!!!」
それでも結局叔父さんは喜んでいた。
「だから、俺の好きにさせてもらいますよ」
オーウェンさんはそう言った。
本当に彼は何かを始めるつもりなのだろうか。
そもそも、何故彼は活動の一切をやめて元天才と言われることに甘んじてしまっていたのだろう。
「これで堕ちた天才なんて言われることはないな!!」
ああよかった。よかった。とおじさんは言っていた。
それを聞いている最中ずっとムカムカとしていた。
この人にとってオーウェンさんは魔道具を作ることにしか価値が無いように見えた。
それが、この人にとっての当たり前で、それに付き合わされるオーウェンさんもそれを当たり前としていた。
それがとても気持ち悪かった。
目が覚めた。
俺は酔っぱらっても記憶が無くなるタイプではなかった。
客室なのだろう。1泊3万円のホテルよりもはるかに豪華なベッドの感触に申し訳なくなる。
迷惑をかけたと落ち込む。
けれど、それもあるけれど寝落ちしてしまう直前、オーウェンさんに言われたことが気になった。
『この世界では男もはらめるんですねえ』
自分の言った言葉だ。オーウェンさんは否定していなかった。
そんな重要な事実は先に教えておいてくれ!!!と思ったけれど何が重要かの価値観が多分違うのだろうと思った。
当たり前だから知ってるだろうというものも違う。
オーウェンさんからはさぞかし世間知らずで愚かな者に見えてるんだろうなと思って、少し落ち込む。
二日酔いの症状は無かった。
オーウェンさんが朝食に呼びに来た。
朝食を食べたら一旦アパルトメントに帰る予定だ。
オーウェンさんは叔父さんを読んでいるらしい。
「お待ちくださいませ」
悲鳴、というか悲痛というかそういう声が聞こえる。
そしてバタバタという走る音と共にドアがバンと大きくあいた。
そこには俺にこの仕事を紹介した叔父さんがいた。
叔父さんはこちらを侮蔑を含んだ目で見た。
酔っぱらったことは恥ずかしいけれど昨日あの話をしておいてよかった。
何故彼がこういう目で俺を見るか、理由が分かるからだ。
けれど叔父さんは俺に何も言わず、オーウェンさんに「どういうことだい?」と聞いた。
「これは叔父としての忠告だれけれど、きみには、そこの彼の世話よりももっとやるべきことがあるんじゃないかい?」
「彼の世話?何を言っているんですか」
「突然研究助手にするなんて言い出すのはそういうことだろう?」
「違いますけど……」
「今までだって君はずっと一人でやってきたじゃないか、前みたいにまた一人で素敵な商品を作り出せばいいんだよ。
魔道具の設計に魔法が使えるかどうかは関係ない。
新しい製品をどんどんと作り出して家門を盛り立てていく方を優先すべきだろう」
そこに俺は必要ないとばかりに叔父さんは俺をにらみつけた。
彼はオーウェンさんにまた魔道具の新商品を作って欲しくて俺を家庭教師にしたのだろう。
知らない世界のことを話せばインスピレーションが浮かぶと思って。
叔父さんという人にとって、オーウェンさんは魔道具を作って自分たちを儲けさせてくれる人という事なのだろう。
オーウェンさんは大きくため息をついていた。
けれど、次の瞬間これぞ貴族という感じの張り付いた笑みを浮かべた。
「叔父上の気持ちは大変ありがたいです。
でもだからこそ、新たに始める研究に彼が必要なんですよ。
異世界人である彼が。
わかりますか?」
翻訳では割と普通だけれどきっと慇懃無礼に言ったのだろうという事が分かる。
叔父さんの顔つきが喜んだり苦虫をかみつぶしたり忙しいからだ。
「研究を再開する気になったのか!!!!」
それでも結局叔父さんは喜んでいた。
「だから、俺の好きにさせてもらいますよ」
オーウェンさんはそう言った。
本当に彼は何かを始めるつもりなのだろうか。
そもそも、何故彼は活動の一切をやめて元天才と言われることに甘んじてしまっていたのだろう。
「これで堕ちた天才なんて言われることはないな!!」
ああよかった。よかった。とおじさんは言っていた。
それを聞いている最中ずっとムカムカとしていた。
この人にとってオーウェンさんは魔道具を作ることにしか価値が無いように見えた。
それが、この人にとっての当たり前で、それに付き合わされるオーウェンさんもそれを当たり前としていた。
それがとても気持ち悪かった。
595
お気に入りに追加
607
あなたにおすすめの小説
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
騎士様、お菓子でなんとか勘弁してください
東院さち
BL
ラズは城で仕える下級使用人の一人だ。竜を追い払った騎士団がもどってきた祝賀会のために少ない魔力を駆使して仕事をしていた。
突然襲ってきた魔力枯渇による具合の悪いところをその英雄の一人が助けてくれた。魔力を分け与えるためにキスされて、お礼にラズの作ったクッキーを欲しがる変わり者の団長と、やはりお菓子に目のない副団長の二人はラズのお菓子を目的に騎士団に勧誘する。
貴族を嫌うラズだったが、恩人二人にせっせとお菓子を作るはめになった。
お菓子が目的だったと思っていたけれど、それだけではないらしい。
やがて二人はラズにとってかけがえのない人になっていく。のかもしれない。
ブラッドフォード卿のお気に召すままに~~腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する~~
ゆうきぼし/優輝星
BL
異世界転移BL。浄化のため召喚された異世界人は二人だった。腹黒宰相と呼ばれるブラッドフォード卿は、モブ扱いのイブキを手元に置く。それは自分の手駒の一つとして利用するためだった。だが、イブキの可愛さと優しさに触れ溺愛していく。しかもイブキには何やら不思議なチカラがあるようで……。
*マークはR回。(後半になります)
・ご都合主義のなーろっぱです。
・攻めは頭の回転が速い魔力強の超人ですがちょっぴりダメンズなところあり。そんな彼の癒しとなるのが受けです。癖のありそうな脇役あり。どうぞよろしくお願いします。
腹黒宰相×獣医の卵(モフモフ癒やし手)
・イラストは青城硝子先生です。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。
猫宮乾
BL
異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
(誤字脱字報告は不要)

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる