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異世界転移について3

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仕事なんてある訳が無かった。


勇者候補として召喚されたと言っても冷遇に近い状態だった。
教育が終わって放り出される時に払われる準備金はこの国の平民の一般的な生活を考えても微々たるものだった。

魔法を使える人がそれなりにいる世界だったけれど俺には魔法の適性もまるでなかった。

他の転移者二人も俺を哀れな者を見るような目で見ていた。

二人は元の世界に未練はあるようだったけれど着々とこの世界で暮らす準備を進めていた。

スキルについてはっきりしたことは聞かなかったけれど、料理ができるものと、ゲームで言うところのアイテムボックスの様なものが使えるらしい。


アイテムボックスと聞いて、図書館に普通のパンを置いておいたけれど、普通に二日後にはカビが生えていた。
このカビが元の世界のものかこの世界のものかを調べるすべもないしどうしようもない。


性能は大きく落ちる上に図書館の入り口をとおるナマモノじゃない物しか運べないけれどそういう仕事を……と思っていたところだった。

二人はここを出ていくそうだから住居を用意されたのも俺だけだった。
しかも家賃は自分で稼いで払わなければならない。

保証人なんていない俺が住む場所を借りられただけ良しと考えるのか、それとも簡単に放り出されたと思うべきなのかも分からない。
どうしたらいいのか分からない中、一人の男が俺を訪ねてきたと神官は言った。

男は伯爵位を持つ貴族オーウェンさんの叔父にあたる人物だった。
俺を奇異の目で頭の上から足の先まで見た後、甥の話し相手になって欲しいと言った。

最初甥は病気かなにかなのだと思った。
けれどそれは違った。

男は話し相手から家庭教師の依頼だと話をずらした。
男は自分の甥に何か瑕疵があるのだと絶対に認めたくは無い様だった。

けれどこの世界のことを碌に知らない俺に誰かの教師になることはできないと思った。
それを伝えると、異世界のことを教えてあげて欲しいとその男は言った。

天才である彼ならきっと新しい知識を喜ぶだろうからと。


「お受けしたらいかがですか?」

俺の世話係になっていた神官がそう言った。
これがろくでもない仕事でもそうでなくても他に選択肢は無いですよ。そんな言い方だった。
叔父を名乗る男は簡単にオーウェンさんについて話した。俺より5歳年下の20歳の天才であることが主だった。

彼が帰った後、神官がオーウェンさんは天才なのではなく“元”天才だから言葉には気を付けてくださいと言った。
そしてとある事故以降彼が魔法を使えなくなっているという事を知った。

そうして、ほとんどなにも知らなオーウェンさんの家庭教師に俺はなった。
特に達成しなければならない義務は何も契約上無いという事はわかっていたけれど、何も教えられなければすぐに解雇になるだろうなという事も分かっていた。

少しでも長く働いてこの世界に慣れたかった。
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