異世界転移しました。元天才魔術師との優雅なお茶会が仕事です。

渡辺 佐倉

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異世界転移について1

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◆ ◆ ◆

仕事終わりのことだったと思う。
俺は普通に大学を卒業して、普通に一人暮らしをして、普通にサラリーマンをしていた。
その時は25歳だった。

離れて暮らす父と母と妹がいる。

今日は少しだけ残業をしてしまった。

誰も歩いていない薄暗がりの道を歩く。
街路灯がついているのがみえた。

それが一瞬ちかちかと瞬いた気がした。

LEDでもそんなことがあるのかと思っていると、道路が淡く光った、……気がした。

そこにはゲームで見るような魔法陣があった。

周りには誰もいなかったそれは確かだった。

次の瞬間そこは見慣れた帰り道ではなかった。

淡いベージュ色の石で作られた大きな建物の中に俺はいた。

俺は周りを見回す。
そこにいたのは俺たちを取り囲む、ファンタジーな恰好と姿をした大勢の人々と、俺と似たような恰好をした人間が五人ほどいた。

「勇者候補の諸君、よくぞ我が国にいらっしゃった」

ファンタジーな恰好をしている人たちの中で一番豪華な恰好をして偉そうな人がそう言った。

俺の横にいた女子高生らしい制服を着た女の子が「異世界召喚」とぼそりと言った。
まさにそんな状況だった。

けれど、候補ってなんだ。
普通は勇者なら勇者を、聖女なら聖女を呼ぶのではないのか。

何故五人もいる。
あの時確かに俺の周りには誰もいなかった。

同じ場所からここへ来たわけではない。

我が国と言っていたから恐らく王様なのだろう、偉そうな男の横にいた神経質そうな男が言葉をつづけた。

「勇者候補諸君は転移に際して女神様よりスキルを賜ったはずである。
その内容によって勇者が決定する」

「……あの」

五人のうちの一人が声を上げた。

「勇者以外の人間は元いた場所に帰れるということですか?」

正直言って勇者なんて胡散臭い。なにか特別な力が得られるとしてもそんなことやってられないと思うのが大人になってしまったという事なのだろう。

「帰還方法は現在確立されておりません」

だから神経質そうな男、後にこの国の宰相だとわかるこの男の次の言葉に俺たちのうち何人かはのどの奥で悲鳴を上げた。

帰れない。その言葉が何度も何度も頭の中で繰り返された。
それから今の状況をもう一度ちゃんと考えなくてはと思った。

勇者候補をと言っていた。
勇者なんて言葉フィクションの中でしか聞いたことが無い。
しかもファンタジーな人たちは恰好だけでなく髪の毛の色もカラフルで瞳の色も様々だ。

なんで言葉が通じているのだろう。
なんだここは……。

何が起きたか分かりたくは無かった。
分かってたまるかと思った。
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