獣王国の外交官~獣人族に救われた俺は、狂狼の異名を持つ最強の相棒と共に、人間至上主義に喧嘩を売る!~

新橋 薫

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獣王国ヴァイス編

鑑定魔法~加護編~

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「――これは……!」
「どうしました?」
「…………とりあえず、今書くよ」


 俺に与えられた加護を鑑定したジーナが、一度目を見開き、それから困惑した様子で声を上げた。……やがてペンを手に取り、詳細を書き始める。


「あたしはこれまでに、アルベルトを含めて、数名の加護を持つ者を鑑定してきたが――神の言葉を見たのは、これが初めてだね」
「神の言葉……?」
「なになに? 何が書かれてたんだ!」
「お前は後だよ、やんちゃ坊主。……ほら、読んでみな」
「……ありがとうございます」


 鑑定結果が記された紙が、俺の手に渡る。すると、ソファーから立ち上がったアドルフが、俺の肩に腕を乗せて一方的に肩を組み、書面に目を落とした。
 悲しいことだが、近頃は俵担ぎと同様に、こういう接触にも慣れてしまったので、放って置くことにする。


 ――獣神の加護。……獣神デファンスより与えられた加護。獣神の目に留まった、ごく一部の者に与えられる。

 この加護を与えられた者は獣神に守護され、獣神の祝福によって身体能力が大幅に強化される。獣神の眷属からは歓迎され、敬意を払われるだろう。

 ――お前達の友を想う尊い心に感服し、加護とギフトを与えた。

 今後、お前達は様々な困難に遭遇するだろう。だが、互いに友を大切にしていれば、それを乗り越えることができるはずだ。例え何があろうとも――その尊い心を忘れないでくれ。


 ……そう書かれた紙の、後半の文章を凝視した。思わずアドルフと顔を見合わせる。


「……どういうことだよ」
「俺に聞かれても分からないぞ。……これ、お前の方にも同じことが書かれているのか?」
「お前達って書かれてるし、多分そうだろ」


 その後。念のためにジーナに調べてもらったところ、アドルフに与えられた加護の内容も、俺と同じ物だった。後半の神の言葉も同じだ。これは間違いなく、獣神デファンスの言葉だろう。

 神がわざわざ、俺達に宛てたメッセージを残した。……それだけ注目されているということか?


「それで? 何て書いてあった?」


 そう聞いてきた獣王様だけでなく、ヴェーラ達も興味津々といった様子で俺を見つめる。そんな彼らに、神の言葉の内容を教えた。


「へー……なるほど。確か、レイモンドは処刑される直前にアドルフのために祈りを捧げて、アドルフはレイモンドを助けるために、力が欲しいと願ったんだよな? で、その2人の祈りと願いが、獣神様に届いたどころか気に入られた、と」
「友を想う尊い心、か。素晴らしいな。お前達の友情は、獣神様の目に留まる程の強い絆で成り立っているのだろう」
「……それは、さすがに大げさだ」


 ヴェーラの言葉を聞き、目を逸らした。そんな大層なものじゃない。
 確かに、アドルフは自慢の心友だが、絆の強さは獣王様や第一旅団の幹部達には敵わないと思っている。俺はまだ付き合いが短いしな。

 しかし、アドルフはそう思わなかったらしい。子供のように笑い、俺の頭をくしゃくしゃと撫でた。


「そう! 俺とレイの絆は強い! 分かってるなぁ、ボス!」
「鬱陶しい。やめろ」


 決して照れ隠しではないが、アドルフの手を強めに払う。すると、アドルフは軽く仰け反った。目を丸くしている。……何だ、その反応は。


「お前、前より力が強くなったな」
「……おそらく加護が原因だろうな。身体能力が大幅に強化されると書いてあった」


 イルミナルでの戦いの最中、俺は拳だけで大の男をぶっ飛ばした。加護が無かったら、相手を少し怯ませるだけで終わっていただろう。
 それに、アドルフが処刑台から屋根の上に跳べたことも、圧倒的な力で敵を倒していたことも、きっと加護の効果だ。

 アドルフは、ただでさえ化け物レベルだったのに、さらに強くなってどうするんだか……


「……ところで、ここに書かれている獣神の眷属というのは?」
「獣神様にお仕えしている、神獣のことですよ。神話の中でも何度か登場しています」
「どうやら、この世界の何処かに存在しているようなのじゃが……実際に会ったことは無いのう」


 ほう……それは是非とも会ってみたい。どんな存在だ? 何処にいるのだろう? フェンリルか? ペガサスか? ドラゴンだったりするのか? 夢が広がるな!


「さーてと。前置きが随分長くなっちまったが、これでようやく本題に入れる!」


 ……そういえば、まだ仕事の話が残っていたな。神獣について聞きたかったのだが、それはまた今度にしよう。


「レイモンドに頼みたい仕事は、海に住む魚人族と山に住む鳥人族との交渉だ」
「魚人族と、鳥人族……?」


 初耳だ。この世界にそんな種族がいたなんて、アドルフ達からも聞いたことがない。魚人と鳥人……魚や鳥が人型になっているのだろうか?


「説明は……フィデルに任せた!」
「丸投げですか。……仕方ありませんね。私がご説明いたします」
「お願いします、フィデルさん」


 苦労人の宰相殿は、俺にも分かりやすいように説明してくれた。


 まず、魚人の見た目は俺の予想通り、魚が人型を取っているらしい。地上では肺呼吸、水中ではエラ呼吸に切り替えることができる、特殊な種族だそうだ。

 彼らが住んでいるのは、ラルゴ島という島だった。その島に最も近いのは……水上都市ヒュドール。パーヴェルが小舟に乗せて連れて行ってくれた、あの美しい海の何処かに、その島があるという。

 次に、鳥人。彼らも魚人と同様、鳥が人型を取っているそうだ。背中に翼が生えていて、頭は鳥の頭。手足は人間とほとんど同じだとか。

 鳥人は、アネモス山という大きな山に住んでおり、その山はプラシノスにあるカルム森林を越えた先にそびえ立っているという。
 そういえば、カルム森林の近くでトロールと戦った時、遠くに山が見えたな。あれがアネモス山か?

 獣人族は、獣王国という国を建国する程に発展したのだが、残りの二つの種族は保守的で、自分達が住んでいる場所から、あまり離れないようにしているらしい。
 今までその存在を人間に知られずに済んだのは、その保守的な考えのおかげだろう。


「今回の外交の目的は――新たな戦力の確保だ」


 フィデルの説明が終わった後、獣王様が真剣な表情でそう言った。




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