一匹狼の宝石採集記 〜異世界に召喚されたけど、授かったスキルのせいでパーティが組めません。仕方ないので、のんびり宝石でも集めます。〜

尾関 天魁星

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【第一章】新生活編

【第五話】なくし物

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 走り去っていく少女を見守ってから、僕は残りのサンドイッチとホットドッグを食べ始めた。
 
 
「とりあえず、この街から出ないとな・・・・・・」
 
 
 こうも自由だとついつい忘れてしまいそうだが、これでも僕は追放された身なのだ。
 
 
 あまり長居をすると、王国兵に捕らえられてしまうかもしれないと神官には言われている。
 
 
 差し当って必要なのは、移動手段だ。
 
 
 街を歩いていて分かったが、この世界の主な移動手段は馬だった。
 
 
 大きな通りでは馬車が頻繁に往来しているし、移動や運搬など、ほとんどが馬に依存している。
 
 
 しかし、僕は馬に乗ったことがない。
 
 
 この世界で生活していくのなら馬の乗り方を覚えないといけないだろうが、おそらくそんな時間はない。
 
 
 となれば、乗り合わせの馬車か、最悪徒歩になる。
 
 
 徒歩だと時間はかかるけど、馬車代が浮かせられる。
 
 
「迷うけど、途中で行き倒れになるのは嫌だなぁ」
 
 
 王都でも物乞いが居る世界だ。
 郊外に野盗やゴロツキが居てもおかしくはないだろう。
 
 
 そう考え、乗り合わせの馬車で王都を出ることに決めた。
 
 
 ◇◇◇◇◇
 
 
「あのぅ・・・・・・」
 
 
 馬車乗り場に行く前に、僕は雑貨屋に立ち寄ることにした。
 
 
「いらっしゃい、何をお求めで?」
 
 
「ち、地図を欲しくて・・・・・・」
 
 
 人見知りで上がり症の僕は、人と話す時はどうしてもこんな話し方になってしまう。
 
 
 だから学校では、より避けられていたのだった。
 
 
「地図と言っても色々ですが、王都の地図?
 それとも郊外の地図ですか?
 なんなら世界地図だってありますけど」
 
 
 隣町までの地図があれば良いと思っていたが、世界地図も気になる。
 
 
「えっ、八万デナリオン・・・・・・!」
 
 
 世界地図になると、急に値段が上がるのだった。
 
 
「王都の周辺の街とかが載っていれば・・・・・・」
 
 
「そうですか、じゃあこれかな」
 
 
 店員が手頃な価格の地図を教えてくれたので、僕はそれを買う事にした。
 
 
「まいどっ!
 千デナリオンです」
 
 
 僕はお金を出そうと、ポケットに手を入れた。
 
 
「っ!?」
 
 
「ん? どうしました、兄さん」
 
 
 ポケットに入っていたはずの、硬貨の袋が無かったのだ。
 
 
「す、すみませんっ、また来ます!」
 
 
 思わず、僕は店外に飛び出した。
 
 
「えっ、ちょっと!」
 
 
 店員の呼び止める声がしたが、振り返りはしなかった。
 
 
 どこかで落としてしまったのだろうか。
 
 
 さっき食べ物を買った時まではしっかりと持っていた。
 
 
「あのベンチか!」
 
 
 僕としたことが、食事に夢中で気付かなかったみたいだ。
 
 
 あの袋には、全財産が入っているのだ。
 
 
 
 
 
 僕は人が行き交う大通りを駆け抜けて、噴水広場に向かった。
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