5 / 6
【第一章】新生活編
【第五話】なくし物
しおりを挟む
走り去っていく少女を見守ってから、僕は残りのサンドイッチとホットドッグを食べ始めた。
「とりあえず、この街から出ないとな・・・・・・」
こうも自由だとついつい忘れてしまいそうだが、これでも僕は追放された身なのだ。
あまり長居をすると、王国兵に捕らえられてしまうかもしれないと神官には言われている。
差し当って必要なのは、移動手段だ。
街を歩いていて分かったが、この世界の主な移動手段は馬だった。
大きな通りでは馬車が頻繁に往来しているし、移動や運搬など、ほとんどが馬に依存している。
しかし、僕は馬に乗ったことがない。
この世界で生活していくのなら馬の乗り方を覚えないといけないだろうが、おそらくそんな時間はない。
となれば、乗り合わせの馬車か、最悪徒歩になる。
徒歩だと時間はかかるけど、馬車代が浮かせられる。
「迷うけど、途中で行き倒れになるのは嫌だなぁ」
王都でも物乞いが居る世界だ。
郊外に野盗やゴロツキが居てもおかしくはないだろう。
そう考え、乗り合わせの馬車で王都を出ることに決めた。
◇◇◇◇◇
「あのぅ・・・・・・」
馬車乗り場に行く前に、僕は雑貨屋に立ち寄ることにした。
「いらっしゃい、何をお求めで?」
「ち、地図を欲しくて・・・・・・」
人見知りで上がり症の僕は、人と話す時はどうしてもこんな話し方になってしまう。
だから学校では、より避けられていたのだった。
「地図と言っても色々ですが、王都の地図?
それとも郊外の地図ですか?
なんなら世界地図だってありますけど」
隣町までの地図があれば良いと思っていたが、世界地図も気になる。
「えっ、八万デナリオン・・・・・・!」
世界地図になると、急に値段が上がるのだった。
「王都の周辺の街とかが載っていれば・・・・・・」
「そうですか、じゃあこれかな」
店員が手頃な価格の地図を教えてくれたので、僕はそれを買う事にした。
「まいどっ!
千デナリオンです」
僕はお金を出そうと、ポケットに手を入れた。
「っ!?」
「ん? どうしました、兄さん」
ポケットに入っていたはずの、硬貨の袋が無かったのだ。
「す、すみませんっ、また来ます!」
思わず、僕は店外に飛び出した。
「えっ、ちょっと!」
店員の呼び止める声がしたが、振り返りはしなかった。
どこかで落としてしまったのだろうか。
さっき食べ物を買った時まではしっかりと持っていた。
「あのベンチか!」
僕としたことが、食事に夢中で気付かなかったみたいだ。
あの袋には、全財産が入っているのだ。
僕は人が行き交う大通りを駆け抜けて、噴水広場に向かった。
「とりあえず、この街から出ないとな・・・・・・」
こうも自由だとついつい忘れてしまいそうだが、これでも僕は追放された身なのだ。
あまり長居をすると、王国兵に捕らえられてしまうかもしれないと神官には言われている。
差し当って必要なのは、移動手段だ。
街を歩いていて分かったが、この世界の主な移動手段は馬だった。
大きな通りでは馬車が頻繁に往来しているし、移動や運搬など、ほとんどが馬に依存している。
しかし、僕は馬に乗ったことがない。
この世界で生活していくのなら馬の乗り方を覚えないといけないだろうが、おそらくそんな時間はない。
となれば、乗り合わせの馬車か、最悪徒歩になる。
徒歩だと時間はかかるけど、馬車代が浮かせられる。
「迷うけど、途中で行き倒れになるのは嫌だなぁ」
王都でも物乞いが居る世界だ。
郊外に野盗やゴロツキが居てもおかしくはないだろう。
そう考え、乗り合わせの馬車で王都を出ることに決めた。
◇◇◇◇◇
「あのぅ・・・・・・」
馬車乗り場に行く前に、僕は雑貨屋に立ち寄ることにした。
「いらっしゃい、何をお求めで?」
「ち、地図を欲しくて・・・・・・」
人見知りで上がり症の僕は、人と話す時はどうしてもこんな話し方になってしまう。
だから学校では、より避けられていたのだった。
「地図と言っても色々ですが、王都の地図?
それとも郊外の地図ですか?
なんなら世界地図だってありますけど」
隣町までの地図があれば良いと思っていたが、世界地図も気になる。
「えっ、八万デナリオン・・・・・・!」
世界地図になると、急に値段が上がるのだった。
「王都の周辺の街とかが載っていれば・・・・・・」
「そうですか、じゃあこれかな」
店員が手頃な価格の地図を教えてくれたので、僕はそれを買う事にした。
「まいどっ!
千デナリオンです」
僕はお金を出そうと、ポケットに手を入れた。
「っ!?」
「ん? どうしました、兄さん」
ポケットに入っていたはずの、硬貨の袋が無かったのだ。
「す、すみませんっ、また来ます!」
思わず、僕は店外に飛び出した。
「えっ、ちょっと!」
店員の呼び止める声がしたが、振り返りはしなかった。
どこかで落としてしまったのだろうか。
さっき食べ物を買った時まではしっかりと持っていた。
「あのベンチか!」
僕としたことが、食事に夢中で気付かなかったみたいだ。
あの袋には、全財産が入っているのだ。
僕は人が行き交う大通りを駆け抜けて、噴水広場に向かった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。


日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる