一匹狼の宝石採集記 〜異世界に召喚されたけど、授かったスキルのせいでパーティが組めません。仕方ないので、のんびり宝石でも集めます。〜

尾関 天魁星

文字の大きさ
上 下
4 / 6
【第一章】新生活編

【第四話】散策

しおりを挟む
 神殿から追い出された僕は、仕方なく王都の大通りを歩きながら、いくつかの商店を回った。
 
 
 この世界の物価の相場などを確かめるためである。
 
 
 我ながら冷静だった。
 
 
 不安がない訳ではもちろんないが、だからと言って何もしない訳にはいかない。
 
 
 店を回るついでに、旅に必要になるであろう道具なども買った。
 
 
「リンゴが一個で五十デナリオンか・・・・・・」
 
 
 日本より、物価は安いようだ。
 
 
 午前のうちに、着替えやクツ、カバンなどを購入し、お腹が減ったので食べ物を買う事にした。
 
 
 幸いにも賑わいのある街だったため、通り沿いには食べ物を売る屋台がいたる所にある。
 
 
 安ければ何でも良いと思ったので、適当に屋台を見繕い、ホットドッグや肉を挟んだサンドイッチを買った。
 
 
「よし、言葉も通じるし文字も読める。挨拶や礼儀なども日本とほとんど変わらないな」
 
 
 以外にも、苦労することは無かった。
 
 
 今頃、僕以外の召喚者たちはどうしているのだろうか。
 
 
 きっと、僕よりも優秀なスキルを授かっていることだろう。
 
 
「・・・・・・」
 
 
 噴水がある広場のベンチに腰を下ろし、空を見上げた。
 
 
 日本で見る空と、何ら変わらない。
 
 
 しかし、ここは確かに異世界なのだ。
 
 
 スキルの概念があるし、魔法や魔物も存在する。
 逆に、科学技術は皆無だった。
 
 
 日本でも上手に生きてこれなかった僕が、はたしてこの世界でも生きていけるのだろうか。
 
 
 そう考えていると、一瞬だけ不安が強くなった。
 
 
「お兄ちゃん」
 
 
「え?」
 
 
 不意に声を掛けられたので視線を落とすと、目の前に小さな幼女が立っていた。
 
 
 四~五歳くらいだろうか。
 多分、僕の腰くらいまでしか身長はない。
 
 
「ど、どうしたのかな?」
 
 
 幼い子供と触れ合うのは苦手だった。
 
 
 どう接してあげれば良いのか分からず、ついキョドキョドしてしまう。
 
 
「それ、ちょうだい」
 
 
 そう言って幼女が指をさしたのは、僕がこれから食べようとしていたホットドッグとサンドイッチだった。
 
 
 物乞い、だろうか。
 
 
 言われてみれば、幼女の服装は薄汚れていて、手足は痩せ細っているように見える。
 
 
 こんな栄えた王都でも、こういった貧困層は存在しているらしい。
 
 
「えっと・・・・・・、お腹が空いているのかな?」
 
 
 幼女は食べ物から視線をずらさず、こくりとうなずいた。
 
 
 たとえ子供でも、物乞いには食べ物やお金を与えてはいけないと聞いたことがある。
 
 
 簡単にあげてしまうと、それで味をしめてしまうらしい。
 
 
 しかし、こうやって面と向かって言われると、きっぱりと断るのは相当に気が引ける。
 
 
 僕は周囲を見回して、通行人に見られていない事を確認してから、サンドイッチを一つだけ幼女に渡した。
 
 
 
 
 
 サンドイッチを受け取った幼女は、礼も言わずに走り去っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!

海夏世もみじ
ファンタジー
 旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました  動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。  そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。  しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!  戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

処理中です...