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【第一章】 新生活編
【第十九話】 鍛冶師ゲルバルト
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冒険者ギルド内に併設されている鍛冶屋では、武器を売り買いしたり、装備品の生産依頼などが出来るのだそう。
多くの冒険者がここの鍛冶屋を利用するそうだけれど、ある程度実力が付いた冒険者は、自分の行きつけの鍛冶屋を利用する者も多いという。
ちなみにヨハンは、わざわざ他の鍛冶屋に行くのが面倒くさいという理由で、よく冒険者ギルドの鍛冶屋を利用するらしい。
鍛冶屋には、いくつも炉が並んでいて、それぞれで職人が作業をしている。
距離を取っていても、熱がここまで伝わってくる。
夏になると、ここは灼熱の地獄になるのだろう。
「やぁ、ゲルバルトのおやじ!」
ヨハンさんは、鍛冶師の一人に声を掛けた。
結構な高齢に見えたが、筋肉はあるし、背筋も曲がってはいない。
典型的な鍛冶師そのものだった。
「なんだ、ヨハンの小僧か」
「何だとは何だよ、せっかく客を連れてきてやったのに」
ヨハンがそう言うと、鍛冶師のゲルバルトは僕に視線を移した。
「おいヨハン、冗談だろう。まだ子供じゃないか」
ゲルバルトさんは僕を一瞥し、興味を無くしたように作業に戻ろうとした。
ゲルバルトさんも、僕が子供に見えるらしい。
「これでも、成人したばかり、なんです・・・・・・」
「そうかい、そりゃ良かったな」
目もくれず、ゲルバルトさんは言った。
「いやぁ、ごめん。このおやじ、愛想無くてさぁ。おまけに頑固者ときた」
「聞こえとるぞ、この小僧」
「耳だけは良いんだよな、耳だけは」
意外にも、ヨハンさんは次から次へと皮肉を言う。
「用件を言わんか! こっちは暇じゃあないんだぞ」
「この子に合う武器を、レンタルしたいんだよ」
「そうかい。じゃあそこに並んでるヤツを、適当に持っていけ」
それだけ言うと、ゲルバルトは作業に夢中になった。
なんと適当な接客だろうと思ったけれど、作業には集中している。
多分だけれど、鍛治の腕は確かなのだろう。
ゲルバルトが示した方には、何種類かの武器が雑多に置かれていた。
無料でレンタルしている物だけに、どれも綺麗とは言えないし、使い込まれている。
「そうだなぁ、セキト君は身体も大きくないし、それに見合った武器にしないとね」
ヨハンさんはそう言いながら、いくつかの武器を手に取って見繕ってくれた。
片手剣やレイピアなど、比較的小さな武器が多かった。
僕は促されるままに武器を構えたり振ったりしてみて、最終的に片手剣を選ぶ事にした。
ヨハンさんが合わせてくれた物だけれど、それでもやっぱり重いと感じる。
畑仕事で使っていた農具とは、全く勝手が違う。
「よーし、準備はこれくらいにして、クエストに行こうか!」
多くの冒険者がここの鍛冶屋を利用するそうだけれど、ある程度実力が付いた冒険者は、自分の行きつけの鍛冶屋を利用する者も多いという。
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結構な高齢に見えたが、筋肉はあるし、背筋も曲がってはいない。
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「なんだ、ヨハンの小僧か」
「何だとは何だよ、せっかく客を連れてきてやったのに」
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「おいヨハン、冗談だろう。まだ子供じゃないか」
ゲルバルトさんは僕を一瞥し、興味を無くしたように作業に戻ろうとした。
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「これでも、成人したばかり、なんです・・・・・・」
「そうかい、そりゃ良かったな」
目もくれず、ゲルバルトさんは言った。
「いやぁ、ごめん。このおやじ、愛想無くてさぁ。おまけに頑固者ときた」
「聞こえとるぞ、この小僧」
「耳だけは良いんだよな、耳だけは」
意外にも、ヨハンさんは次から次へと皮肉を言う。
「用件を言わんか! こっちは暇じゃあないんだぞ」
「この子に合う武器を、レンタルしたいんだよ」
「そうかい。じゃあそこに並んでるヤツを、適当に持っていけ」
それだけ言うと、ゲルバルトは作業に夢中になった。
なんと適当な接客だろうと思ったけれど、作業には集中している。
多分だけれど、鍛治の腕は確かなのだろう。
ゲルバルトが示した方には、何種類かの武器が雑多に置かれていた。
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「そうだなぁ、セキト君は身体も大きくないし、それに見合った武器にしないとね」
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僕は促されるままに武器を構えたり振ったりしてみて、最終的に片手剣を選ぶ事にした。
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