上 下
16 / 21
【第一章】 新生活編

【第十五話】 冒険者登録完了

しおりを挟む
 契約書にサインをすると、受付嬢は笑顔で続けた。
 
 
「この契約書は複写になってますので、一枚はセキトさん自身で保管しておいて下さいね」
 
 
「は、はい・・・・・・」
 
 
 契約が終わったので、今度は冒険者カードという物を作ることになった。
 
 
 受付嬢はカウンターの裏手から石版を持ってきて、台の上に置く。
 
 
「この石版に利き手で触れると、冒険者カードが作成されます」
 
 
 受付嬢が手を置くように促すので、僕は右手を石版に置いた。
 
 
 見た目はただの石版で、触り心地もひんやりとしている。
 
 
 すぐに石版から淡い光が溢れ、そしてすぐに光が消えた。
 
 
「はい、もう手を離して大丈夫ですよ」
 
 
 言われた通り手を離すと、今度は受付嬢が手のひらサイズの金属製の薄い板を、石版に乗せた。
 
 
 その板には、何も書かれてはいない。
 
 
「おっ・・・・・・」
 
 
 石版に乗せてすぐに、板に文字が彫られていく。
 
 
 僕のフルネームや年齢、そして冒険者ランク。
 
 
 他にもスキル名や、【二つ名】などという項目があったが、そこは空白だった。
 
 
「お待たせしました、こちらがセキトさんの冒険者カードです。冒険者として自分の身分を証明する大切なものなので、無くさないように気を付けてください」
 
 
 僕は冒険者カードを受け取り、そのまま胸ポケットにしまった。
 
 
「これで、必要な手続きは全て終了しました。もし何か分からない事があっても、この受付カウンターでいつでも承っておりますので、何なりとご相談ください」
 
 
 あっさりと手続きが終わったなと思ったが、キャンペーン券のことを思い出して早速話しをしてみた。
 
 
「あ、あの、今朝の新聞に、これがあったのですけど・・・・・・」
 
 
 なかなか緊張がほぐれなかったが、何とか噛まずに言いきれるようにはなってきた。
 
 
「あっ、アイテムポーチのキャンペーン券ですね。ご利用ありがとうございます」
 
 
 受付嬢は明るく微笑むと、キャンペーン券を受け取って裏方に消えた。
 
 
 受付カウンターは他にも並んでいて、それぞれに受付嬢が対応していた。
 
 
 どれもクエスト受注の手続きばかりなようで、冒険者の回転は早い。
 
 
 僕が居る受付カウンターには、時間が掛かっているためが、後ろには誰も並んではいなかった。
 
 
 おかげで、順番待ちのプレッシャーを受けずに済む。
 
 
 ほどなくして、受付嬢が戻ってきた。
 
 
「お待たせしました。こちらがキャンペーンで配布しております、アイテムポーチです」
 
 
 差し出されたポーチは、ごく普通のポーチだった。
 
 
 特に凝ったデザインなどではなかったが、表からは見えない所に、【冒険者ギルド】と刺繍がしてあった。
 
 
「こちらは冒険者のランクに応じて容量が増減する仕様が施されておりますので、是非ランク昇格に挑んでくださいね」
 
 
 僕は早速受け取ったアイテムポーチを装着した。
 
 
 軽い素材で、着け心地に問題は無い。
 
 
「早速、クエストボードからクエストを受注出来ますので、是非ご利用くださいね。以上、受付嬢のエリセアでした!」
 
 
 最後に、一層明るい笑顔を向けてお辞儀をした。
 
 
 僕もお礼を述べて、カウンターをあとにする。
 
 
 緊張で、脇汗がぐっしょりだ。
 
 
 
 
 クエストの度にこうやって受付嬢とやり取りしなければならないのかと思うと、少し億劫おっくうだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る

Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される ・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。 実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。 ※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。

処理中です...