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【第一章】 新生活編

【第四話】 ワトからの餞別

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 日が昇り、僕たちは目が覚めた。
 
 
 暖かい季節だった為、夜は厳しくは無かった。
 
 
 これが冬だと、旅は辛いものになるだろう。
 
 
「セキト君、もし良ければ、我々と一緒に旅でもしないかね? 一人きりだと、何かと困る事もあるだろう」
 
 
 焚き火に土をかけて後始末をしていると、ワトがそう言ってくれた。
 
 
 一瞬迷ったけれど、まずは僕の力だけで出来るところまでやってみたいと思った。
 
 
「折角のお誘いですが、僕は自分がどこまで出来るのかを知りたいのです。ワトさん達と一緒に居ると、甘えてしまいそうで」
 
 
 そう言うと、ワトは優しくほほえんだ。
 
 
「成人したばかりだと言うのに、なかなか芯は強いじゃないか。俺の若い時を見ているようだ」
 
 
 ワトは僕の肩に手を置いた。
 
 
 男らしいゴツゴツした手だけど、不思議な暖かさがあった。
 
 
「お互い旅をしていれば、またどこかで会うこともあるかもしれないな。【商業ギルド】に行けば、俺宛に手紙を出すことも出来るから、困った時は相談してくれればいい」
 
 
 他の行商人たちとも、握手を交わした。
 
 
「そうだセキト君。餞別にこれをあげよう」
 
 
 荷馬車に行っていたワトが戻ってきて、布の袋を差し出した。
 
 
 持ってみると、それなりに重さがあった。
 
 
「装飾品に使えると思って、行商の途中で立ち寄ったバザーで手に入れた物だ」
 
 
 袋を開けて中身を覗き込んでみると、大小さまざまな石が入っていた。
 
 ただの石ではなく、光を反射してキラキラしている。
 色もバラバラだった。
 
 
「こんなキレイな石、貰っても良いんですか?」
 
 
「バザーの店主には、売れ残りだと言われてね。ただ同然で譲ってくれた物なんだ。今後も使わなさそうだから、セキト君にどうかと思ったんだ」
 
 
 要らないからあげる、という事に聞こえたが、ワトなりの気遣いなのだろう。
 
 
 僕はワト達にお礼を言って、その袋を腰に結んだ。
 
 
「それではセキト君、良い旅を。『スキルと共に』」
 
 
「ワトさんも、お元気で。『スキルと共に』」
 
 
 荷馬車と共に、ワト達はベルテ村の方向に進み出した。
 
 
 今日一日歩けば、夕方までには【宿場町オーザリー】に到着するはずだ。
 
 
 街に到着してから何をすればいいのかは、着いてから考えれば良い。
 
 
 ワト達と出会ったことで、僕の心にも更に余裕が生まれた。
 
 
 ◇◇◇
 
 
 太陽が真上に昇った頃、道沿いに広い池があったので、少しだけ休む事にした。
 
 
 池のほとりの斜面に腰を下ろし、途中でもぎ取ったリンゴをかじった。
 
 
 野生で育っていたリンゴだったから、甘くはないけれど、お腹の足しにはなった。
 
 
「そう言えば、ワトさんからもらった石はなんだろう」
 
 
 思い出したように袋を取り出し、中に入っていた石を一つだけ掴んだ。
 
 
 
 
 するとここで、僕は不思議な体験をすることになるのだった。
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