クラスカースト最下位の僕、ジョブが【レジスタンス】だったので追放されました。でもなんかムカつくので実際に反乱軍を組織して国家転覆を目指します

尾関 天魁星

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【第四章】

【第四十六話】武術に必要なもの

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 修行の日々は、続いていた。
 
 
 まだ、ハンス老人に勝てたことは一度もない。
 
 
 やはり、心のどこかに迷いのような物があった。
 
 
 漠然とした迷いだったが、ハンス老人と立ち合っている時、ふと刺客の腹を刺した時のことが蘇るのだ。
 
 
「この所、剣を振るにも槍を突くにも、鋭さが足りん」
 
 
 修行中、ハンス老人が寄ってきて言った。
 
 
「すみません」
 
 
「なにか、迷いがあるように見えるぞ。初めて立ち合った時から、それは感じていたが」
 
 
 さすがはハンス老人だった。
 
 
「一度休み、茶を飲もう」
 
 
 そう言って、僕とハンス老人は上衣を羽織り、丸太の上に腰掛けた。
 
 
 ザイフェルトが、暖かい茶を運んでくる。
 
 
 最近は、家事はザイフェルトが中心にやっていた。
 
 
「さぁ、話してみなさい」
 
 
「バーゲス監獄で、刺客に襲われたことは話しましたよね」
 
 
 召喚されてからここに来るまでのことは、全てハンス老人に話してある。
 
 
「その刺客との闘いで、僕は刺客の腹を短剣で刺したのです」
 
 
 そう言って、僕は腰に差してある短剣を見せた。
 
 
 あの時は必死で、刺客を倒した後もずっと持ち続けていたのだった。
 
 
「刺した時の感触が、忘れられないのです。このまま強くなっても、あの感触は味わいたくない・・・」
 
 
 短剣は、手入れをしていないので、かなり汚れていた。
 
 
 ハンス老人が、ゆっくりと茶をすすった。
 
 
「そうか」
 
 
 一息付きながら、ハンス老人は言った。
 
 
「武術を志す者にとって、その様な悩みは誰しもが持つことじゃ」
 
 
「そうなのですか」
 
 
 ハンス老人もそうだったのかと思ったが、口には出さなかった。
 
 
「武術には、気合いや鍛錬は勿論、恐怖や後悔さえも必要になるのじゃよ」
 
 
「どう必要に、なるのですか」
 
 
 哲学的な話だと思った。
 
 
「それは、修行を通して己で見極めるしかあるまい」
 
 
 僕も茶をすすり、短剣を見つめた。
 
 
「ひとつ助言をするとしたら、そうじゃな。その短剣は肌身離さず、親友のように過ごすことじゃ」
 
 
「親友、ですか」
 
 
 ハンス老人が言っていることが、よく分からなかった。
 
 
「今日の修行はそれ位にして、これから武器の手入れの仕方でも教えよう」
 
 
 ハンス老人が茶を飲み干し、立ち上がった。
 
 
 僕も残った茶を飲み干し、後に続く。
 
 
 それからの数日は、常に短剣と共に過ごした。
 
 
 修行の時も携帯し、剣や槍などではなく、その短剣を使った闘い方を中心に修行した。
 
 
 狩りに出る時も、風呂や寝る時も、常に短剣を差し、そこにあるという事を意識し続けた。
 
 
 寝る前には必ず短剣を手入れして、サビやくもりは一切無いようにした。
 
 
 
 
 
 
 
 それを続けていたある日、不思議と短剣が手に馴染み、いつもよりも思うように短剣を遣えるようになっていた。
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