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【第四章】
【第四十三話】※ハンス視点
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初めて会った時から、ユキトは不思議な少年だった。
パッと見は強くはないが、恐ろしいほどの気配を放つ時がある。
初めてこの山小屋にやって来た時も、そうだった。
しかし、本人は自覚していないようだ。
身体が回復してから、ユキトは自主的に護身術の稽古をするようになった。
動きは悪くないし、成長速度も早い。
修行次第では、武術家としてかなりの腕に育つだろうと思った。
◇◇◇◇◇
ユキトの目的は、テレスリアム王国を討ち滅ぼすことだった。
ユキトは自身の全てを語ってくれた。
この世界に召喚されてすぐに、罪人と言われてひどい仕打ちを受けてきたのだ。
拷問も受けてきたようで、背中に残った傷跡は、その時にできたものらしい。
国を恨むのも、無理はなかった。
しかし、彼は個人の恨みを晴らすために反乱を企てているのではなかった。
この王国が腐敗しているのは、自分でも分かっている。
重税と圧政により民は苦しみ、逆に軍や役人は私腹を肥やして良い暮らしをしている。
ユキトは、そんな国を変えようとしているのだ。
しかも、中から改革を進めるのではなく、王国そのものを打ち倒し、全く新しいものを作ろうとしている。
単に改革を目指すよりも、何倍も難しいことだった。
しかし、ユキトの稽古を見ていると、どれだけ本気なのかがよく分かるような気がした。
時間は掛かるが、成し遂げそうな、そんな気がしていた。
◇◇◇◇◇
気が付くと、日が傾いていた。
こんなに人と長く喋るのは、久しぶりのことだった。
「ハンス老人は、どうしてジョブについてそんなに詳しいのですか?」
ユキトが聞いてきた。
自分のことについて語る気はあまり無かった。
「それは教えん。知りたかったら、わしに武術で勝つのじゃな」
意地悪いと思いながらも、そう言った。
「分かりました。では時々、手合わせして頂けますか」
かすかに、血がたぎるような感覚を覚えた。
こんな気持ちになるのは、若い時以来だ。
「良いだろう。せっかくだ、今相手してやろう」
そう言うと、ユキトは嬉しそうに笑った。
こういう所は少年らしい。
向き合い、構えた。
いつも通り、基本に忠実な構え方である。
しかし、隙がある。
構えではなく、心に隙があるのだ。
それは迷いともいうものだった。
気を放つと、ユキトはうろたえた。
ほんの少し力が緩んだので、その一瞬で間合いに踏み込み、腹を突いた。
「ぐっ・・・」
ユキトはその一撃で倒れ込み、苦しそうにしていた。
自分に比べればまだまだだと思った。
「そんなのでは、いつになってもワシには勝てんぞ」
そう言って背を向け、小屋に戻った。
パッと見は強くはないが、恐ろしいほどの気配を放つ時がある。
初めてこの山小屋にやって来た時も、そうだった。
しかし、本人は自覚していないようだ。
身体が回復してから、ユキトは自主的に護身術の稽古をするようになった。
動きは悪くないし、成長速度も早い。
修行次第では、武術家としてかなりの腕に育つだろうと思った。
◇◇◇◇◇
ユキトの目的は、テレスリアム王国を討ち滅ぼすことだった。
ユキトは自身の全てを語ってくれた。
この世界に召喚されてすぐに、罪人と言われてひどい仕打ちを受けてきたのだ。
拷問も受けてきたようで、背中に残った傷跡は、その時にできたものらしい。
国を恨むのも、無理はなかった。
しかし、彼は個人の恨みを晴らすために反乱を企てているのではなかった。
この王国が腐敗しているのは、自分でも分かっている。
重税と圧政により民は苦しみ、逆に軍や役人は私腹を肥やして良い暮らしをしている。
ユキトは、そんな国を変えようとしているのだ。
しかも、中から改革を進めるのではなく、王国そのものを打ち倒し、全く新しいものを作ろうとしている。
単に改革を目指すよりも、何倍も難しいことだった。
しかし、ユキトの稽古を見ていると、どれだけ本気なのかがよく分かるような気がした。
時間は掛かるが、成し遂げそうな、そんな気がしていた。
◇◇◇◇◇
気が付くと、日が傾いていた。
こんなに人と長く喋るのは、久しぶりのことだった。
「ハンス老人は、どうしてジョブについてそんなに詳しいのですか?」
ユキトが聞いてきた。
自分のことについて語る気はあまり無かった。
「それは教えん。知りたかったら、わしに武術で勝つのじゃな」
意地悪いと思いながらも、そう言った。
「分かりました。では時々、手合わせして頂けますか」
かすかに、血がたぎるような感覚を覚えた。
こんな気持ちになるのは、若い時以来だ。
「良いだろう。せっかくだ、今相手してやろう」
そう言うと、ユキトは嬉しそうに笑った。
こういう所は少年らしい。
向き合い、構えた。
いつも通り、基本に忠実な構え方である。
しかし、隙がある。
構えではなく、心に隙があるのだ。
それは迷いともいうものだった。
気を放つと、ユキトはうろたえた。
ほんの少し力が緩んだので、その一瞬で間合いに踏み込み、腹を突いた。
「ぐっ・・・」
ユキトはその一撃で倒れ込み、苦しそうにしていた。
自分に比べればまだまだだと思った。
「そんなのでは、いつになってもワシには勝てんぞ」
そう言って背を向け、小屋に戻った。
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