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【第四章】

【第四十話】目が覚めると

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 温かさの中、僕は目が覚めた。
 
 
 木目の天井が見える。
 
 
 なんだか、夢を見ていた気がする。
 
 
 どうやら、ベッドの中で眠っていたようだ。
 
 
「目が覚めたか」
 
 
 老いた声がした。
 
 
 ここは雪の中見た山小屋の中だと、ようやく分かった。
 
 
「五日間、眠っていたぞ」
 
 
「申し訳ありません、ベッドを占有してしまいました」
 
 
 僕はベッドから降り、老人に頭を下げた。
 
 
 着ていた服が、新しい綺麗なものになっている。
 
 
「それは構わん、気にするな」
 
 
 老人は、暖炉に薪をくべた。
 
 
 暖炉の火のおかげで、部屋そのものが暖かい。
 
 
 その感じが、ひどく懐かしく感じる。
 
 
 この異世界に召喚されてから、暖かい部屋でベッドで眠るなど、無かったのだ。
 
 
 ふと隣のベッドを見ると、ヘルベルトが眠っていた。
 
 
「そっちの大男は、まだ目が覚めないと思う」
 
 
「あの、彼の怪我は」
 
 
「短剣が刺さっていて、かなり危ない所だった。あと五分でもここに来るのが遅かったら、死んでいた」
 
 
 老人のその言葉を聞き、僕はゾッとした。
 
 
「短剣を抜き、治療はした。あとは、彼自身が生きたいと思うかどうか、という所だろう」
 
 
 まだ生死の境目を彷徨っているのだ。
 
 
 今僕に出来ることは、何もないだろう。
 
 
「あの、もう一人は」
 
 
 部屋を見回したが、ザイフェルトの姿は見当たらない。
 
 
「心配はいらない、じきに帰ってくるだろう」
 
 
 老人が立ち上がり、台所から鍋を持ってきた。
 
 
 蓋を開けると、粥が入っていた。
 
 
「体力が無くなっている時に、肉などを食うと体を壊す。まずはこれを、少しづつ食べなさい」
 
 
 腹は減っていた。
 
 
 木のスプーンを手渡されると、僕は粥をすすった。
 
 
 染み渡るように、美味い。
 
 
 しばらく粥を食べていると、ザイフェルトが薪を抱えて小屋に入ってきた。
 
 
「おぉ、ユキト」
 
 
 ザイフェルトは、感激しているようだった。
 
 
「ユキトが、俺とヘルベルトを担いでここまで運んできたんだよな」
 
 
 そうだ。
 
 
 僕は暗い吹雪の中、二人を担いで一晩中歩き続けたのだ。
 
 
 やはり今でも、信じられなかった。
 
 
「あの朝、小屋の外からとてつもない気配がしていた。それで外に出てみると、二人を担いだお前が居たのだ」
 
 
 老人は言った。
 
 
 白い髭を蓄えてはいるが、腰は曲がっていない。
 
 
「ハンスさん、薪はこれだけあれば良いかい?」
 
 
 ザイフェルトは、抱えていた薪を下ろした。
 
 
 どうやら、老人の手伝いで薪割りをしていたようだ。
 
 
「申し遅れました、フユサキ・ユキトと申します」
 
 
「ザイフェルトから聞いている。ハンス・ローゼンだ」
 
 
「ハンスさんは、俺たち三人を看病していてくれたんだ」
 
 
「はじめ、担がれていた二人は死んでいるのかと思った。それだけ、身体が冷えていた」
 
 
 
 
 
 
 
 気付けば、出された粥が無くなっていた。
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