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【第三章】刺客戦編
【第二十七話】危惧
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スタンナードが率いる視察団は、五日間の日程を終え、王都に帰って行った。
この五日間で、牢役人のヤン・ネーテンの不正や刑期の改ざんが視察団により明らかになり、その任を解かれた。
すぐさま、新しい牢役人が就任するらしい。
ヘルベルトが、息のかかった兵士から得た情報である。
スタンナードに別れ際に言われた言葉が、僕はずっと引っ掛かっていた。
あれはおそらく、僕の命を狙っているということだろう。
どんな手を使ってくるのか分からないけれど、彼は王都の役人で、しかもそれなりの役職に就いている。
ただの囚人である僕に、何か対策が出来るのだろうか。
一人で考えていても気が塞ぐので、ヘルベルトに相談することにした。
「まさかあの役人が、そんな事を・・・」
夜中、巡回が来ない時間帯である。
王都でスタンナードに何をされて、先日の取り調べで何を言われたのか、僕は全て話した。
「私はここに入る前、王室や政府について色々と調べていましたが、スタンナードという名前の役人は、聞いたことがありません」
「僕と始めて会った時、罪人の取り調べをするのが役割と言っていたよ」
「確かにそれだと、表に名前が出ないのも納得ですが」
ヘルベルトは、何か引っ掛かっている様子だった。
「実は、これはごく一部で囁かれている噂なのですが、王政府には、決して表に顔を出さない組織があると、言われているのです」
決して表に顔を出さない組織。
あの国王なら、そんな組織を抱えていてもおかしくないような気がする。
「それは、どんなことをしている組織なの?」
「私も気になって調べたのですが、全く分かりませんでした」
「そっか・・・」
「本当にただの噂なのかもしれないですが」
しかし、火のないところに煙は立たない、とも言う。
「それはともかく、スタンナードの言葉が気掛かりです」
「うん、それは僕もそう思うよ・・・」
「背後に気を付けろ、と彼は言ったのですね?」
「ああ、事故死は珍しくない、とも言っていたよ」
「暗殺」
暗がりの中、ヘルベルトがポツリと言った。
スタンナードなら、それくらいしてきても不思議では無い。
「やっぱり、ヘルベルトもそう思うかい・・・」
僕の命が狙われている。
それを直接的に実感するのは、初めてだった。
「一番有り得ることとしたら、刺客を送り込んでくるかもしれません」
「けど、ここは牢城だよ」
「スタンナードは、王都の役人です。囚人という形で送り込んでくることも、充分に考えられます」
たしかに、役人という立場を使えば、それは難しくないだろう。
「じゃあ、どうやって防げば」
「ユキト殿、身を守る術を身に付けましょう」
この五日間で、牢役人のヤン・ネーテンの不正や刑期の改ざんが視察団により明らかになり、その任を解かれた。
すぐさま、新しい牢役人が就任するらしい。
ヘルベルトが、息のかかった兵士から得た情報である。
スタンナードに別れ際に言われた言葉が、僕はずっと引っ掛かっていた。
あれはおそらく、僕の命を狙っているということだろう。
どんな手を使ってくるのか分からないけれど、彼は王都の役人で、しかもそれなりの役職に就いている。
ただの囚人である僕に、何か対策が出来るのだろうか。
一人で考えていても気が塞ぐので、ヘルベルトに相談することにした。
「まさかあの役人が、そんな事を・・・」
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ヘルベルトは、何か引っ掛かっている様子だった。
「実は、これはごく一部で囁かれている噂なのですが、王政府には、決して表に顔を出さない組織があると、言われているのです」
決して表に顔を出さない組織。
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「それは、どんなことをしている組織なの?」
「私も気になって調べたのですが、全く分かりませんでした」
「そっか・・・」
「本当にただの噂なのかもしれないですが」
しかし、火のないところに煙は立たない、とも言う。
「それはともかく、スタンナードの言葉が気掛かりです」
「うん、それは僕もそう思うよ・・・」
「背後に気を付けろ、と彼は言ったのですね?」
「ああ、事故死は珍しくない、とも言っていたよ」
「暗殺」
暗がりの中、ヘルベルトがポツリと言った。
スタンナードなら、それくらいしてきても不思議では無い。
「やっぱり、ヘルベルトもそう思うかい・・・」
僕の命が狙われている。
それを直接的に実感するのは、初めてだった。
「一番有り得ることとしたら、刺客を送り込んでくるかもしれません」
「けど、ここは牢城だよ」
「スタンナードは、王都の役人です。囚人という形で送り込んでくることも、充分に考えられます」
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