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【第三章】刺客戦編
【第二十六話】※スタンナード視点
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バーゲス監獄での視察は、五日間の予定だった。
1ヶ月ほど前に、この監獄では二名の囚人が脱走した事件があり、今回の視察ではその事件の調査と、牢城の監視体制の視察が目的とされていた。
しかし、それはあくまで表向きの理由だった。
フユサキ・ユキト。
この人物の、生死を確認するためというのが、最も大きな目的だった。
この監獄で脱獄事件があったと王都に知らせが入った時、ユキトが脱獄したのだと政府上層部の誰もが思っていた。
脱獄した囚人の名前を聞いたものの、疑り深い国王陛下はそれを信じなかった。
そこで視察団として派遣されたのが、自分だったのだ。
自分なら、彼の顔をしっかりと覚えている。
万が一顔を変えていようと、声や仕草に至るまで、全て分かる。
そしてユキトは、まだ生きていた。
彼が生きているのは問題だったが、脱獄されて行方不明になるよりは何倍もマシである。
彼のジョブは、【レジスタンス】だからだ。
放っておけば、この王国にとって魔王以上の脅威となりうる。
本当は処刑するのが最善のはずだが、英雄の方々の意向もあった。
ごく一部ではあったが、彼の処刑に反対意見があったのだ。
困った国王は、彼を罪人として監獄に送ったのだ。
◇◇◇◇◇
バーゲス監獄での視察を終え、王都に帰る前夜のことだった。
執務室として臨時で与えられた部屋で、事務作業を片付けていた時、誰かが扉を叩いた。
「私です」
「クルト・ベッケルか、入れ」
クルト・ベッケルは、直属の部下として使っている者だった。
全般的な能力は高く、与えられた仕事は必ずこなす男である。
「すまないな、こんな夜更けに呼び出して」
「いえ」
彼は、口数が少ない。
「急ぎで頼みたい事がある。この書簡を、【あのお方】へ」
一通の紙を、彼に手渡した。
「御意」
【あのお方】とは、国王陛下のことではない。
明日、王都へ帰るにも関わらず、彼に運ばせるのは、あえての事だった。
「早馬を使え。二十日で着くか?」
「いえ、十五日で」
「分かった、行け」
クルト・ベッケルは、静かに一礼して部屋を出た。
自分には、表の顔と裏の顔の両方があった。
王都の中級役人で、罪人の取り調べを行うのが、表の顔である。
裏の顔は、別にある。
それは、決して見える形では活動しない、言うなれば秘密組織というものだった。
【あのお方】が、その組織での上官にあたる人である。
かすかに、眠気を感じた。
王都を出ての長旅は、久しぶりだった。
歳を感じるような年齢では無かったが、若い時よりも体が疲れやすくなっている。
しかし、疲れている場合ではない立場でもあった。
1ヶ月ほど前に、この監獄では二名の囚人が脱走した事件があり、今回の視察ではその事件の調査と、牢城の監視体制の視察が目的とされていた。
しかし、それはあくまで表向きの理由だった。
フユサキ・ユキト。
この人物の、生死を確認するためというのが、最も大きな目的だった。
この監獄で脱獄事件があったと王都に知らせが入った時、ユキトが脱獄したのだと政府上層部の誰もが思っていた。
脱獄した囚人の名前を聞いたものの、疑り深い国王陛下はそれを信じなかった。
そこで視察団として派遣されたのが、自分だったのだ。
自分なら、彼の顔をしっかりと覚えている。
万が一顔を変えていようと、声や仕草に至るまで、全て分かる。
そしてユキトは、まだ生きていた。
彼が生きているのは問題だったが、脱獄されて行方不明になるよりは何倍もマシである。
彼のジョブは、【レジスタンス】だからだ。
放っておけば、この王国にとって魔王以上の脅威となりうる。
本当は処刑するのが最善のはずだが、英雄の方々の意向もあった。
ごく一部ではあったが、彼の処刑に反対意見があったのだ。
困った国王は、彼を罪人として監獄に送ったのだ。
◇◇◇◇◇
バーゲス監獄での視察を終え、王都に帰る前夜のことだった。
執務室として臨時で与えられた部屋で、事務作業を片付けていた時、誰かが扉を叩いた。
「私です」
「クルト・ベッケルか、入れ」
クルト・ベッケルは、直属の部下として使っている者だった。
全般的な能力は高く、与えられた仕事は必ずこなす男である。
「すまないな、こんな夜更けに呼び出して」
「いえ」
彼は、口数が少ない。
「急ぎで頼みたい事がある。この書簡を、【あのお方】へ」
一通の紙を、彼に手渡した。
「御意」
【あのお方】とは、国王陛下のことではない。
明日、王都へ帰るにも関わらず、彼に運ばせるのは、あえての事だった。
「早馬を使え。二十日で着くか?」
「いえ、十五日で」
「分かった、行け」
クルト・ベッケルは、静かに一礼して部屋を出た。
自分には、表の顔と裏の顔の両方があった。
王都の中級役人で、罪人の取り調べを行うのが、表の顔である。
裏の顔は、別にある。
それは、決して見える形では活動しない、言うなれば秘密組織というものだった。
【あのお方】が、その組織での上官にあたる人である。
かすかに、眠気を感じた。
王都を出ての長旅は、久しぶりだった。
歳を感じるような年齢では無かったが、若い時よりも体が疲れやすくなっている。
しかし、疲れている場合ではない立場でもあった。
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