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【第三章】刺客戦編

【第二十五話】憎き顔との再開

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 視察団を迎えるため、牢城の兵士だけでなく、囚人たちも駆り出された。
 
 
 厳重に手錠と足かせをされた上で、膝まづいて視察団を迎える。
 
 
 視察団といっても、実際には役人が十数人居るだけで、あとは護衛の部隊だけだった。
 
 
 護衛の兵士は、五~六十人といった所だろう。
 
 
 そして役人の中には、王都で僕を取り調べたテリー・スタンナードも含まれていた。
 
 
 あの顔は、一日たりとも忘れることはない。
 
 
 あの辛い拷問を思い返すと、痛みではなく、憎しみのような感情が湧いてくるのだ。
 
 
 視察団が消えると、僕たち囚人は牢に戻された。
 
 
 視察や調査で、警務労働に人員を割けないのだろうか。
 
 
「視察団は、数日間で戻るそうですよ」
 
 
 牢に入ると、ヘルベルトは言った。
 
 
 スタンナードのことは、ヘルベルトには話していない。
 
 
 昼過ぎ頃に、突然兵士が数人牢の前にやって来て、僕を連行した。
 
 
「視察団の役人様がお前をお呼びだ。何の用か知らないが、失礼の無いようにな」
 
 
 兵士にそう言われ、取り調べ室のような小さな部屋に通された。
 
 
 もちろん、手錠と足かせは厳重なものだ。
 
 
 先に部屋で待ち構えていたのは、例のスタンナードだった。
 
 
「久しぶりだね、フユサキ・ユキト。数か月ぶりじゃないか」
 
 
 相変わらず、感情が見えない顔だった。
 
 
 憎い顔だが、同時に恐ろしいほど不気味でもある。
 
 
「どうして、僕をここに」
 
 
「なに、あくまで脱獄事件の調査と視察だ」
 
 
 スタンナードはそう言ったが、言葉では何とでも言える。
 
 
 しかし、決して本心は見抜かせない男だった。
 
 
「真面目に刑務労働に励んでいるようだね。王都で会った時よりも、体付きが良くなっている」
 
 
 たしかに、数カ月もの刑務労働により、僕の体はかなり筋肉がついていた。
 
 
「そんな事を、言う為だけに僕を呼んだのですか」
 
 
 スタンナードは、それには答えなかった。
 
 
「英雄の方々はそれぞれのジョブを活かして、様々な分野で活動を始めているよ」
 
 
 僕には、どうでもいいことだ。
 
 
 おそらく、クラスメイトの話題を出すことで僕を動揺させようというのだろう。
 
 
「・・・」
 
 
 効果が無いと思ったのか、彼はしばらく口を閉じ、今度は単刀直入に言った。
 
 
「国王陛下が、君の事を心配している」
 
 
「僕のことを、心配?」
 
 
「ああ、君の身を心配しているのではなく、ユキトの存在その者を危惧しているのだよ」
 
 
 そういうことだろうと思った。
 
 
 やはりスタンナードの目的は、僕の様子を確認しに来たのだ。
 
 
 それもおそらく、国王の指示でもあったのだろう。
 
 
 そうでもなければ、いくら脱獄事件があったとはいえ、王都の役人がこんな遠くまで来るはずはない。
 
 
 
 
 
 
 
 そしてスタンナードは、最後に僕にこう言った。
 
 
「刑務労働中は、背後に気をつけたまえ。刑務労働中に、事故死するのは珍しいことではないからな」
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