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【第二章】バーゲス監獄編
【第十九話】決意
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月明かりが、出てきた。
牢の外側には鉄格子がついた小さな窓があり、そこから明かりが入ってくる。
その明かりが、ヘルベルトを淡く照らした。
やはり彼は、床に正座していた。
何とも言えない感情が、僕の中で湧き上がってくる。
不条理。
それを壊し、解放されたい。
僕だけじゃなく、同じように苦しんでいる人も、解放してあげたい。
僕がこの世界に召喚された意味とは、まさにこの事ではないのか。
「王国にとって都合の悪いジョブなのか、さっき聞きましたよね」
高揚感に似たようなものを抑えながら、僕は言葉を続けた。
「僕が」
大きく、ひと息した
「僕が授かったジョブは、【レジスタンス】です」
「なんと」
ヘルベルトの表情が、変わったように見えた。
「ユキト殿こそ、この国に生きる全ての民草の、【真の英雄】でありましょう」
「僕が」
「この国は、国王を元凶に政府や役人、軍隊から商人まで、あらゆるものが腐っている。圧政と重税、不正と賄賂、それらが民を苦しめているのです」
それを僕が、打ち壊す。
一人の高校生が、それを成し遂げられるのか。
とても長く、険しい道になる。
かと言って、このままこの監獄で収まっていては、人々の苦しみは無くならないままだ。
僕が。
僕しかいない。
【レジスタンス】のジョブを持っている、僕が。
「ヘルベルト」
「はい」
「僕は、決めました。レジスタンスを組織して、この国を打ち壊す。この世の不条理から、人々を救うんだ」
ついでに、僕をハブったクラスメイトにも一泡吹かせてやりたい。
それは口には出さず、頭の片隅に置いておいた。
「その言葉を、待っておりました」
初めて、ヘルベルトは笑った。
顔は影になっていたが、やはり笑っていると分かる。
◇◇◇◇◇
夜が明けた。
ヘルベルトと話し込んだ後、興奮が止まずに眠ることは出来なかった。
そして巡回は、一度も無かった。
「結局昨夜は巡回が無かったけど、どうしてかな?」
刑務労働中、それとなくヘルベルトに聞いた。
ちなみにヘルベルトの希望で、僕はタメ口で話すことになった。
なのにヘルベルトの方は、僕に対して敬語を使っていた。
タメ口でもいいと話したが、なぜか彼は固辞したのだった。
頼れる護衛がついたようで、何だか心強い。
心なしか、監視の兵も距離を置いている気がする。
「それは、ここの兵士たちの怠慢によるものです」
「サボってるってこと?」
「そうです。この監獄に限らず、王国軍の大半は腐敗していて、真面目に任務をこなそうとしている部隊はほとんどありません」
「よくそれで、王国を維持してきたな・・・」
牢の外側には鉄格子がついた小さな窓があり、そこから明かりが入ってくる。
その明かりが、ヘルベルトを淡く照らした。
やはり彼は、床に正座していた。
何とも言えない感情が、僕の中で湧き上がってくる。
不条理。
それを壊し、解放されたい。
僕だけじゃなく、同じように苦しんでいる人も、解放してあげたい。
僕がこの世界に召喚された意味とは、まさにこの事ではないのか。
「王国にとって都合の悪いジョブなのか、さっき聞きましたよね」
高揚感に似たようなものを抑えながら、僕は言葉を続けた。
「僕が」
大きく、ひと息した
「僕が授かったジョブは、【レジスタンス】です」
「なんと」
ヘルベルトの表情が、変わったように見えた。
「ユキト殿こそ、この国に生きる全ての民草の、【真の英雄】でありましょう」
「僕が」
「この国は、国王を元凶に政府や役人、軍隊から商人まで、あらゆるものが腐っている。圧政と重税、不正と賄賂、それらが民を苦しめているのです」
それを僕が、打ち壊す。
一人の高校生が、それを成し遂げられるのか。
とても長く、険しい道になる。
かと言って、このままこの監獄で収まっていては、人々の苦しみは無くならないままだ。
僕が。
僕しかいない。
【レジスタンス】のジョブを持っている、僕が。
「ヘルベルト」
「はい」
「僕は、決めました。レジスタンスを組織して、この国を打ち壊す。この世の不条理から、人々を救うんだ」
ついでに、僕をハブったクラスメイトにも一泡吹かせてやりたい。
それは口には出さず、頭の片隅に置いておいた。
「その言葉を、待っておりました」
初めて、ヘルベルトは笑った。
顔は影になっていたが、やはり笑っていると分かる。
◇◇◇◇◇
夜が明けた。
ヘルベルトと話し込んだ後、興奮が止まずに眠ることは出来なかった。
そして巡回は、一度も無かった。
「結局昨夜は巡回が無かったけど、どうしてかな?」
刑務労働中、それとなくヘルベルトに聞いた。
ちなみにヘルベルトの希望で、僕はタメ口で話すことになった。
なのにヘルベルトの方は、僕に対して敬語を使っていた。
タメ口でもいいと話したが、なぜか彼は固辞したのだった。
頼れる護衛がついたようで、何だか心強い。
心なしか、監視の兵も距離を置いている気がする。
「それは、ここの兵士たちの怠慢によるものです」
「サボってるってこと?」
「そうです。この監獄に限らず、王国軍の大半は腐敗していて、真面目に任務をこなそうとしている部隊はほとんどありません」
「よくそれで、王国を維持してきたな・・・」
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