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【第二章】バーゲス監獄編
【第十四話】ザイフェルトとの再会
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バーゲス監獄に到着した際、ここは他よりも厳しくないとザイフェルトが言っていたのを思い出した。
しかし、それは全くあてにならなかった。
荒れ地を開墾し、重い石材を運搬する。時々森に行き、木を切り倒す。
種類は他にもあったが、そのどれもが過酷を極めていた。
「おらぁっ、休むな!」
見張りの兵士から怒鳴られるのは、当たり前だった。
それでもなお休もうとすると、ムチや棒で叩かれる。
強制労働に駆り出されてからまだ一週間程だったが、僕の身体は早くも悲鳴を上げていた。
「ユキト、久しぶりだな」
切った木を運んでいると、ザイフェルトが声を掛けてきた。
牢は別だったし、この一週間もそれぞれ違う作業をしていたので、実に一ヶ月以上ぶりである。
「ひ、久し振りです・・・」
身体が疲れ切っており、返事をするのに精一杯だった。
「何だ、身体が弱っているな」
ザイフェルトは、いつも通りだった。
特に疲れている様子もなく、淡々と肉体労働をこなしている。
「こんな重労働は、初めてで」
「そうか、良い家の出だったんだな」
「いえ、違うんですが」
しかし周りの囚人達と比べてみると、僕の体付きはまさにぜい弱そのものだった。
彼らから見ると、僕の身体は良い生活を送ってきたように見えるのだろう。
ザイフェルトも他の囚人も、筋肉は盛り上がっている。
「三ヶ月もやれば、体付きは変わるだろう。その頃には、ここの生活にも慣れてくる」
今の僕には、全く想像が出来ないことだった。
「三ヶ月もですか」
「おいおい、何を言っている。ひと月やふた月で出られると思っていたのか? 冗談だろう」
鼻で笑うように言われたが、不思議と嫌な気分はしなかった。
ザイフェルトと話していると、そういう時が時々ある。
「これでも、他の監獄よりは作業は楽なんだがな」
「まるで、以前に服役していたような言い方ですね」
つい気になって、僕はザイフェルトにそう言った。
「まぁな。しかし、ここの牢役人があいつに変わって、ここも変わった」
牢役人のあいつとは、ヤン・ネーテンのことだ。
「牢役人のことを、知っているのですか」
ザイフェルトは様々なことを知っているようだ。
「不正を働く役人で有名なんだ。ここに来る時に言ったように、刑期を改ざんすることなんか平気でやってのける」
あれは脅しではなかったということか。
ザイフェルトの口ぶりからするに、おそらく他にも様々な不正を働いているのだろう。
日本なら、すぐにニュースに取り沙汰される案件である。
「今だから話そう。俺は数年前も、ここで服役していた」
珍しく、ザイフェルトの方から話を切り出した。
「どこから話そうか」
しかし、それは全くあてにならなかった。
荒れ地を開墾し、重い石材を運搬する。時々森に行き、木を切り倒す。
種類は他にもあったが、そのどれもが過酷を極めていた。
「おらぁっ、休むな!」
見張りの兵士から怒鳴られるのは、当たり前だった。
それでもなお休もうとすると、ムチや棒で叩かれる。
強制労働に駆り出されてからまだ一週間程だったが、僕の身体は早くも悲鳴を上げていた。
「ユキト、久しぶりだな」
切った木を運んでいると、ザイフェルトが声を掛けてきた。
牢は別だったし、この一週間もそれぞれ違う作業をしていたので、実に一ヶ月以上ぶりである。
「ひ、久し振りです・・・」
身体が疲れ切っており、返事をするのに精一杯だった。
「何だ、身体が弱っているな」
ザイフェルトは、いつも通りだった。
特に疲れている様子もなく、淡々と肉体労働をこなしている。
「こんな重労働は、初めてで」
「そうか、良い家の出だったんだな」
「いえ、違うんですが」
しかし周りの囚人達と比べてみると、僕の体付きはまさにぜい弱そのものだった。
彼らから見ると、僕の身体は良い生活を送ってきたように見えるのだろう。
ザイフェルトも他の囚人も、筋肉は盛り上がっている。
「三ヶ月もやれば、体付きは変わるだろう。その頃には、ここの生活にも慣れてくる」
今の僕には、全く想像が出来ないことだった。
「三ヶ月もですか」
「おいおい、何を言っている。ひと月やふた月で出られると思っていたのか? 冗談だろう」
鼻で笑うように言われたが、不思議と嫌な気分はしなかった。
ザイフェルトと話していると、そういう時が時々ある。
「これでも、他の監獄よりは作業は楽なんだがな」
「まるで、以前に服役していたような言い方ですね」
つい気になって、僕はザイフェルトにそう言った。
「まぁな。しかし、ここの牢役人があいつに変わって、ここも変わった」
牢役人のあいつとは、ヤン・ネーテンのことだ。
「牢役人のことを、知っているのですか」
ザイフェルトは様々なことを知っているようだ。
「不正を働く役人で有名なんだ。ここに来る時に言ったように、刑期を改ざんすることなんか平気でやってのける」
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ザイフェルトの口ぶりからするに、おそらく他にも様々な不正を働いているのだろう。
日本なら、すぐにニュースに取り沙汰される案件である。
「今だから話そう。俺は数年前も、ここで服役していた」
珍しく、ザイフェルトの方から話を切り出した。
「どこから話そうか」
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