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【第一章】王都追放編
【第十一話】監獄への移送
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僕の名前を呼んだのは、クラスメイトで幼なじみの一野あまり(いちの あまり)だった。
人混みの中から、檻車を追いかけていた。
「ど、どうして」
あまりに意外な人物だったので、僕はただ驚いた。
「心配だったの」
周りの喧騒があまりにも大きく、何とかそれだけは聞き取れた。
彼女とは家が近くて、幼稚園の頃から顔は知っていた。
小学校も中学校も同じで、高校が同じだったのは全くの偶然だった。
しかし、会話した記憶は小学生の時が最後である。
「フユサキ君、どうか無事で」
そこまで言い切ったところで、檻車を護衛していた騎兵に遮られてしまった。
何か喋ろうと思っても、言葉は何も出てこない。
「イチノさんこそ、がんばっt・・・」
「おい、喋るな」
僕が言い終わる前に、護衛の騎兵は遮った。
そして気付くと、彼女の姿は見えなくなっていた。
どうしてわざわざ、僕に会いに来たのだろう。
いや、そもそも僕に会いに来たとは限らない。
彼女が通りを歩いていた所に、たまたま檻車が通っただけだ。
きっとそうに決まっている。
「なんだ、女がいたのか」
そう言ったのは、ザイフェルトだった。
「違います」
今度は、護衛の兵も注意はしてこない。
「なに、羨ましいと思っただけだ。気にしないでくれ」
ザイフェルトは何の罪で捕まったのだろう。
ふと、そう思った。
しかし、聞くな、という雰囲気が彼からはしていた。
会ったばかりで、色々聞くのも野暮というものだろう。
いつの間にか、檻車は王都の外れまで来ていた。
大きな屋敷や店などは消え、旅人向けの宿や民家などが増えていた。
見掛ける通行人も、王城の近くよりは少ない。
僕たちが移送されるバーゲス監獄までは、一ヶ月も掛かる道のりである。
その間、この柵から外には出られない。
もしかしたら、地下牢よりも苦しいのではないか。
もしそうだとしても、耐えるしか無い。
逃げ出そうとしても、殺されるだけだ。
◇◇◇◇◇
~王国暦七〇九年 三月~
王都を出発してから半月が過ぎ、月をまたいで三月に入った。
どうやらこの国にも四季はあるそうで、不思議なことに、周期や時期は日本と同じだった。
だから現在は日本の三月と同じような気候である。
冬を過ぎたと言っても、夜は寒い。
防寒具など一切ない囚人にとっては、その寒さは命に関わる程である。
実際に、王都を出発した時に居た十人のうち、四人が死んでいた。
皆ろくに食事が摂れなかったが為に、衰弱して死んでいったのだ。
ザイフェルトは、生きている。
「まだ半分も残ってるのに、このままだと監獄に到着した時には二人しか残らないぞ」
そう言いながらザイフェルトは、笑っていた。
人混みの中から、檻車を追いかけていた。
「ど、どうして」
あまりに意外な人物だったので、僕はただ驚いた。
「心配だったの」
周りの喧騒があまりにも大きく、何とかそれだけは聞き取れた。
彼女とは家が近くて、幼稚園の頃から顔は知っていた。
小学校も中学校も同じで、高校が同じだったのは全くの偶然だった。
しかし、会話した記憶は小学生の時が最後である。
「フユサキ君、どうか無事で」
そこまで言い切ったところで、檻車を護衛していた騎兵に遮られてしまった。
何か喋ろうと思っても、言葉は何も出てこない。
「イチノさんこそ、がんばっt・・・」
「おい、喋るな」
僕が言い終わる前に、護衛の騎兵は遮った。
そして気付くと、彼女の姿は見えなくなっていた。
どうしてわざわざ、僕に会いに来たのだろう。
いや、そもそも僕に会いに来たとは限らない。
彼女が通りを歩いていた所に、たまたま檻車が通っただけだ。
きっとそうに決まっている。
「なんだ、女がいたのか」
そう言ったのは、ザイフェルトだった。
「違います」
今度は、護衛の兵も注意はしてこない。
「なに、羨ましいと思っただけだ。気にしないでくれ」
ザイフェルトは何の罪で捕まったのだろう。
ふと、そう思った。
しかし、聞くな、という雰囲気が彼からはしていた。
会ったばかりで、色々聞くのも野暮というものだろう。
いつの間にか、檻車は王都の外れまで来ていた。
大きな屋敷や店などは消え、旅人向けの宿や民家などが増えていた。
見掛ける通行人も、王城の近くよりは少ない。
僕たちが移送されるバーゲス監獄までは、一ヶ月も掛かる道のりである。
その間、この柵から外には出られない。
もしかしたら、地下牢よりも苦しいのではないか。
もしそうだとしても、耐えるしか無い。
逃げ出そうとしても、殺されるだけだ。
◇◇◇◇◇
~王国暦七〇九年 三月~
王都を出発してから半月が過ぎ、月をまたいで三月に入った。
どうやらこの国にも四季はあるそうで、不思議なことに、周期や時期は日本と同じだった。
だから現在は日本の三月と同じような気候である。
冬を過ぎたと言っても、夜は寒い。
防寒具など一切ない囚人にとっては、その寒さは命に関わる程である。
実際に、王都を出発した時に居た十人のうち、四人が死んでいた。
皆ろくに食事が摂れなかったが為に、衰弱して死んでいったのだ。
ザイフェルトは、生きている。
「まだ半分も残ってるのに、このままだと監獄に到着した時には二人しか残らないぞ」
そう言いながらザイフェルトは、笑っていた。
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