10 / 50
【第一章】王都追放編
【第十話】城下町
しおりを挟む
王城から出るのは、これが初めてだった。
そもそも地下牢に囚われていたので、王城すらほとんど知らない。
檻車は馬に引かれ、御者と兵士が六人、牢役人が一人同伴していた。
移送される囚人は僕を入れて十名で、それぞれ何の罪を犯したのかは分からない。
誰もがぐったりとしていて、生気は無かった。
檻車が、王城の門を潜った。
「お前たちが移送される先は、王都から東へ一ヶ月ほど進んだ先にある、【バーゲス監獄】というところだ」
騎馬の兵士が檻車のそばに来て、そう言った。
その言葉に耳を貸した囚人は、誰も居なかった。
形式的なものなのだろう。
「監獄に着くまでの間、その檻車から出ることは許さん。抜け出した者は、その場で殺す」
物騒な言い方である。
囚人のことを、人間と思っていない目をしている。
「食事は一日一回、柵の隙間から渡す。糞尿は中のバケツに汲み、溜まったら外に捨てろ」
言い終わると、騎馬は檻車から離れていった。
よっぽど、僕たちの臭いが酷いようだ。
◇◇◇◇◇
城下町には、人と物が溢れていた。
通り沿いには商店や露店が建ち並び、人の行き交いも活発である。
これが、この異世界の日常なのだろうか。
クラスメイトの人達も、すでに城下町にも出入りしているのかもしれない。
「・・・若いな」
近くに居た囚人の一人が、ポツリと言った。
バサバサの髭をはやした、初老の男だった。
「お前、いくつなんだ」
「十八、です」
その囚人の目は、輝きを失っていた。
「とても罪を犯した人間の目じゃねぇ。えん罪か何かか?」
なんと答えたらいいのか、つかの間迷った。
自分が異世界から召喚されたという事を喋っても良いのか分からなかったからだ。
「ええまぁ、そんな所です」
「それは気の毒だな。けどまぁ、このご時世では珍しくない」
この世界の現在は、そんなに治安が悪い世の中なのだろうか。
城下町の様子を見るに、とてもそうだとは思えなかった。
「僕は、フユサキ・ユキト」
「ザイフェルト、苗字は無い」
「苗字が無いとかあるんですね」
ザイフェルトは、初めて顔を僕に向けた。
「お前、この国の人間じゃないんだな。この国では、身分が低い者には苗字が無いんだよ。苗字があっても、罪人になれば剥奪される」
国王が居る時点で予想はしていたが、この国には身分制度があるらしい。
奴隷にあたる身分も、存在しているのだろう。
城下町は思っていたよりも広大で、いくら通りを進んでも建物が途切れる事はなかった。
檻車が近付くと、通行人は嫌がって距離を置いている。
おかげで、檻車はスムーズに道を進んでいた。
「フユサキ君」
何の気もなしに街並みを眺めていると、見知った顔を一つ見付けた。
そもそも地下牢に囚われていたので、王城すらほとんど知らない。
檻車は馬に引かれ、御者と兵士が六人、牢役人が一人同伴していた。
移送される囚人は僕を入れて十名で、それぞれ何の罪を犯したのかは分からない。
誰もがぐったりとしていて、生気は無かった。
檻車が、王城の門を潜った。
「お前たちが移送される先は、王都から東へ一ヶ月ほど進んだ先にある、【バーゲス監獄】というところだ」
騎馬の兵士が檻車のそばに来て、そう言った。
その言葉に耳を貸した囚人は、誰も居なかった。
形式的なものなのだろう。
「監獄に着くまでの間、その檻車から出ることは許さん。抜け出した者は、その場で殺す」
物騒な言い方である。
囚人のことを、人間と思っていない目をしている。
「食事は一日一回、柵の隙間から渡す。糞尿は中のバケツに汲み、溜まったら外に捨てろ」
言い終わると、騎馬は檻車から離れていった。
よっぽど、僕たちの臭いが酷いようだ。
◇◇◇◇◇
城下町には、人と物が溢れていた。
通り沿いには商店や露店が建ち並び、人の行き交いも活発である。
これが、この異世界の日常なのだろうか。
クラスメイトの人達も、すでに城下町にも出入りしているのかもしれない。
「・・・若いな」
近くに居た囚人の一人が、ポツリと言った。
バサバサの髭をはやした、初老の男だった。
「お前、いくつなんだ」
「十八、です」
その囚人の目は、輝きを失っていた。
「とても罪を犯した人間の目じゃねぇ。えん罪か何かか?」
なんと答えたらいいのか、つかの間迷った。
自分が異世界から召喚されたという事を喋っても良いのか分からなかったからだ。
「ええまぁ、そんな所です」
「それは気の毒だな。けどまぁ、このご時世では珍しくない」
この世界の現在は、そんなに治安が悪い世の中なのだろうか。
城下町の様子を見るに、とてもそうだとは思えなかった。
「僕は、フユサキ・ユキト」
「ザイフェルト、苗字は無い」
「苗字が無いとかあるんですね」
ザイフェルトは、初めて顔を僕に向けた。
「お前、この国の人間じゃないんだな。この国では、身分が低い者には苗字が無いんだよ。苗字があっても、罪人になれば剥奪される」
国王が居る時点で予想はしていたが、この国には身分制度があるらしい。
奴隷にあたる身分も、存在しているのだろう。
城下町は思っていたよりも広大で、いくら通りを進んでも建物が途切れる事はなかった。
檻車が近付くと、通行人は嫌がって距離を置いている。
おかげで、檻車はスムーズに道を進んでいた。
「フユサキ君」
何の気もなしに街並みを眺めていると、見知った顔を一つ見付けた。
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう
果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。
名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。
日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。
ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。
この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。
しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて――
しかも、その一部始終は生放送されていて――!?
《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》
《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》
SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!?
暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する!
※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。
※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
一人だけ竜が宿っていた説。~異世界召喚されてすぐに逃げました~
十本スイ
ファンタジー
ある日、異世界に召喚された主人公――大森星馬は、自身の中に何かが宿っていることに気づく。驚くことにその正体は神とも呼ばれた竜だった。そのせいか絶大な力を持つことになった星馬は、召喚した者たちに好き勝手に使われるのが嫌で、自由を求めて一人その場から逃げたのである。そうして異世界を満喫しようと、自分に憑依した竜と楽しく会話しつつ旅をする。しかし世の中は乱世を迎えており、星馬も徐々に巻き込まれていくが……。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる