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【第一章】王都追放編
【第六話】取り調べ
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夜が明け、朝になった。
こんなに臭くて汚い地下牢なのに、僕は眠ってしまったようだ。
地面で横たわっていたので、全身が痛い。
疲れを取るどころか、余計に疲労を溜めてしまった。
数人の兵士が、牢の前にやって来る。
「フユサキ・ユキト、出ろ。取り調べだ」
クラスメイトから名前でも聞いたのだろうか、兵士は僕の名前を呼んだ。
脚の鎖は付けられたままで、今度は両手にも鎖が付けられた。
兵士に囲まれたまま、地上に出る。
視線を上げることすら許されず、すぐ側にある兵士の詰め所に入った。
その中にある、小さな机と、椅子だけがある部屋に通される。
ここで何が行われるのか。
僕が座ると、後から数人が入ってきた。
ほとんどが兵士だったが一人だけ、違う服装の男が含まれている。
「フユサキ・ユキトで、名前は合っているか」
なんの感情もこもっていない口調だった。
目を合わせても、瞳には何も見い出せない。
「はい・・・」
「わたしはテリー・スタンナードと言う。罪人の取り調べが、私の任務だ」
僕は、罪人という事になっているのか。
レジスタンスというジョブと鑑定されただけで、そんなにも酷いレッテルを付けられてしまうものなのか。
「君の名前などは、英雄の方々から聞いて知っている」
テリー・スタンナードと名乗った男からは、やはり何も読み取れない。
「しかし、どういった人なのかは、誰に聞いても知らないと言っていたぞ」
返事はしなかった。
これは取り調べなのだ。
僕は何も悪くないけれど、下手な事は言わない方がいい。
「黙秘かね」
スタンナードはそう言ったが、やはり口調に感情は混ざっていない。
「言っておくが、無罪放免される事はもう無い」
衝撃だったが、それでも黙った。
次第に、なぜこの男からは感情が読めないのか分かってきた気がする。
彼の方も僕の感情や思考を、覗いているからだ。
「レジスタンスという名前のジョブを、授かったんだろう? その事実だけで、君はもう英雄として扱われることは決して無い」
「どうして」
「何だね」
「なりたくて、そのジョブになったんじゃない」
思わず、その言葉が出ていた。
「なりたいかどうかじゃない。このテレスリアム王国では、反乱はとても重い罪とされている」
「けど僕は、何もしていない」
「やったかやってないかも、ここでは問題じゃない」
「じゃあ僕は、どうしたら良いんですか」
「白状するんだ。君は、英雄の皮を被った、魔王側のスパイなのだろう」
カッとなるものが、頭に昇った。
「そんなはずは無いです! 僕は・・・、僕はただの、高校生なのですから!」
「吐く気は無いか、仕方ない。・・・拷問だな」
こんなに臭くて汚い地下牢なのに、僕は眠ってしまったようだ。
地面で横たわっていたので、全身が痛い。
疲れを取るどころか、余計に疲労を溜めてしまった。
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「フユサキ・ユキト、出ろ。取り調べだ」
クラスメイトから名前でも聞いたのだろうか、兵士は僕の名前を呼んだ。
脚の鎖は付けられたままで、今度は両手にも鎖が付けられた。
兵士に囲まれたまま、地上に出る。
視線を上げることすら許されず、すぐ側にある兵士の詰め所に入った。
その中にある、小さな机と、椅子だけがある部屋に通される。
ここで何が行われるのか。
僕が座ると、後から数人が入ってきた。
ほとんどが兵士だったが一人だけ、違う服装の男が含まれている。
「フユサキ・ユキトで、名前は合っているか」
なんの感情もこもっていない口調だった。
目を合わせても、瞳には何も見い出せない。
「はい・・・」
「わたしはテリー・スタンナードと言う。罪人の取り調べが、私の任務だ」
僕は、罪人という事になっているのか。
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「君の名前などは、英雄の方々から聞いて知っている」
テリー・スタンナードと名乗った男からは、やはり何も読み取れない。
「しかし、どういった人なのかは、誰に聞いても知らないと言っていたぞ」
返事はしなかった。
これは取り調べなのだ。
僕は何も悪くないけれど、下手な事は言わない方がいい。
「黙秘かね」
スタンナードはそう言ったが、やはり口調に感情は混ざっていない。
「言っておくが、無罪放免される事はもう無い」
衝撃だったが、それでも黙った。
次第に、なぜこの男からは感情が読めないのか分かってきた気がする。
彼の方も僕の感情や思考を、覗いているからだ。
「レジスタンスという名前のジョブを、授かったんだろう? その事実だけで、君はもう英雄として扱われることは決して無い」
「どうして」
「何だね」
「なりたくて、そのジョブになったんじゃない」
思わず、その言葉が出ていた。
「なりたいかどうかじゃない。このテレスリアム王国では、反乱はとても重い罪とされている」
「けど僕は、何もしていない」
「やったかやってないかも、ここでは問題じゃない」
「じゃあ僕は、どうしたら良いんですか」
「白状するんだ。君は、英雄の皮を被った、魔王側のスパイなのだろう」
カッとなるものが、頭に昇った。
「そんなはずは無いです! 僕は・・・、僕はただの、高校生なのですから!」
「吐く気は無いか、仕方ない。・・・拷問だな」
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