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【第一章】王都追放編
【第五話】地下牢
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衛兵にきつく拘束されたまま、僕は一旦外に出された。
僕たちが召喚された場所は神殿のような建物のようで、広大で巨大な王城の一画に位置している。
これからどうなるのかも分からないというのに、不思議とそれは認識出来た。
いつの間に付けられたのか、両足は鎖で繋がれ、鉄球の重りが付けられていた。
歩く度に鎖が音をたてる。
振り払って逃げようにも、重りが邪魔で走れない。
そもそも、振り払うことすら無理だろう。
地下牢に入れられた。
外からの光はほとんど入ってこない。
湿っぽく、臭い。
牢は幾つかに区切られているが、他の牢から人のいる気配は無かった。
しかし時々、身動きする音が聞こえるので、他の罪人が居るのだと分かった。
もしかしたら、気配が無くなるほど衰弱しきっているのかもしれない。
体感時間で、二~三十分ごとに兵士が巡回に来る。
兵士は持っている松明をかざして、囚人が生きているのか覗いてくる。
ぼくはただ、地面に座って動かなかった。
今頃クラスメイトは、王様から詳しい説明でもされているのだろうか。
召喚された人たちを英雄と呼んでいたから、多分立派な部屋と贅沢な食事でも用意されていることだろう。
「そうだ、ご飯・・・」
初めて、自分が空腹だったと気付いた。
喉もひどく乾いている。
しかし動いても無駄なのは分かっていたので、ひたすら耐えた。
そうだ、耐えるのは得意じゃないか。
それからさらに時間が経ち、日が落ちた。
地上に出る階段から漏れてくる光が消えたので、日が落ちたのだと分かったのだ。
「飯だ」
それだけ言われ、何かが乗った皿が置かれた。
付き添いの別の兵が、説明を始めた。
「食事は一日これだけだ。水もコップ一杯と決まっている。食い終わったら、すぐにロウソクの火を消すからな」
火が灯されると、皿に乗っていた食べ物が見えた。
様々な具材がひと塊に盛られているが、この世界特有の料理だろうか。
「唯一の食事だ。ありがたく食え。英雄の方々の、食べ残しだぞ」
食事を持ってきた兵は、あざ笑うように吐き捨てていった。
一人になった。
他の牢からは、咀嚼音が聞こえてくる。
スプーンすら無い。
素手で食え、ということか。
もちろん食べたくはなかったが、唯一の食事と言われれば食うしかない。
元がなんの料理だったのかも、分からない。
なぜ僕が、こんな目に合わなければならないのか。
他のクラスメイトは、きっと僕がどうしているのかなんて気にもしていないだろう。
涙を流しながら、僕は皿を平らげた。
僕たちが召喚された場所は神殿のような建物のようで、広大で巨大な王城の一画に位置している。
これからどうなるのかも分からないというのに、不思議とそれは認識出来た。
いつの間に付けられたのか、両足は鎖で繋がれ、鉄球の重りが付けられていた。
歩く度に鎖が音をたてる。
振り払って逃げようにも、重りが邪魔で走れない。
そもそも、振り払うことすら無理だろう。
地下牢に入れられた。
外からの光はほとんど入ってこない。
湿っぽく、臭い。
牢は幾つかに区切られているが、他の牢から人のいる気配は無かった。
しかし時々、身動きする音が聞こえるので、他の罪人が居るのだと分かった。
もしかしたら、気配が無くなるほど衰弱しきっているのかもしれない。
体感時間で、二~三十分ごとに兵士が巡回に来る。
兵士は持っている松明をかざして、囚人が生きているのか覗いてくる。
ぼくはただ、地面に座って動かなかった。
今頃クラスメイトは、王様から詳しい説明でもされているのだろうか。
召喚された人たちを英雄と呼んでいたから、多分立派な部屋と贅沢な食事でも用意されていることだろう。
「そうだ、ご飯・・・」
初めて、自分が空腹だったと気付いた。
喉もひどく乾いている。
しかし動いても無駄なのは分かっていたので、ひたすら耐えた。
そうだ、耐えるのは得意じゃないか。
それからさらに時間が経ち、日が落ちた。
地上に出る階段から漏れてくる光が消えたので、日が落ちたのだと分かったのだ。
「飯だ」
それだけ言われ、何かが乗った皿が置かれた。
付き添いの別の兵が、説明を始めた。
「食事は一日これだけだ。水もコップ一杯と決まっている。食い終わったら、すぐにロウソクの火を消すからな」
火が灯されると、皿に乗っていた食べ物が見えた。
様々な具材がひと塊に盛られているが、この世界特有の料理だろうか。
「唯一の食事だ。ありがたく食え。英雄の方々の、食べ残しだぞ」
食事を持ってきた兵は、あざ笑うように吐き捨てていった。
一人になった。
他の牢からは、咀嚼音が聞こえてくる。
スプーンすら無い。
素手で食え、ということか。
もちろん食べたくはなかったが、唯一の食事と言われれば食うしかない。
元がなんの料理だったのかも、分からない。
なぜ僕が、こんな目に合わなければならないのか。
他のクラスメイトは、きっと僕がどうしているのかなんて気にもしていないだろう。
涙を流しながら、僕は皿を平らげた。
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