1 / 50
【プロローグ】
【第一話】最後のホームルーム
しおりを挟む
~西暦二〇二三年 二月~
灰色の、高校生活だった。
僕こと冬崎雪斗は、ふとそんな事を思った。
高校生活も残すは卒業式だけである。
三年間同じクラスメイトだったけれど、友人はゼロ。
話し掛けられることすら、ほとんど無かった。
だから登校から下校まで、言葉を発さないのはよくある事だった。
「よーし、じゃあ帰りのホームルームはこれで終わりだ。お前たち、卒業式は遅刻するなよー」
担任教師のその言葉で、日直が号令を出す。
「起立、気をつけ、礼」
意味の無いいつものルーティンだけど、それも今日で最後だ。
明日から卒業式までの約一ヶ月間、僕たち三年生は自由登校期間に入る。
よほどの用事が無ければ学校に来ることは無いし、友達が居ない僕はクラスメイトと顔を会わせることすら無いだろう。
「よっしゃあ、これで自由だ!」
「なぁなぁ、この後カラオケ行かねぇ?」
「女子も誘わね?」
荷物をまとめていると、陽キャグループの会話が耳に入った。
放課後のカラオケなんて、僕には夢のまた夢だ。
しかも、女子も居るだなんて。
言うまでもなく、僕はクラスの中で孤立していて、クラスカーストは間違いなく最下位だろう。
目が合っただけで緊張するし、多分、挙動もおかしいと思われている。
教室でクスクスと笑い声が聞こえたら、それはきっと僕の悪口を言って笑っている声だ。
このクラスに、落ち着ける居場所なんて無かった。
それでも、不登校にならずにちゃんと高校に通ったのは我ながら凄いと思う。
小さい時から、耐えることには長けていた。
「あれ、おかしいぞ」
「何やってんだよ?」
「分からねぇ、ドアが動かねぇんだよ」
「後ろのドアも開かないんだけどぉ?」
「やだぁ、なんか怖ぁ~」
異変が起き始めたのは、それからだった。
教室の出入り口のドアが動かなくなったようだ。
不審に思った担任教師もドアを開けようと試みるが、ガタガタと音をたてるだけで、開く気配は無かった。
教室中がざわつき始めた、その時だった。
激しい揺れが、教室を襲う。
机や椅子が倒れ、立っていられないくらいの激しさである。
「きゃああぁぁっ!」
「地震か!」
「痛え!」
「みんなっ! 姿勢を低くして頭を守るんだ!」
担任教師の指示で、僕はその場で床に伏せた。
窓ガラスは割れていないが、揺れが収まる気配は無い。
「何だこれ! 床が!」
誰かが言った。
次の瞬間、床の一面が輝きだした。
僕は無我夢中で頭を守っていたけど、光を放つ床に、幾何学模様があるのがかろうじてみえた。
魔方陣。
とっさに、それが頭に浮かんだ。
そして次の瞬間には、僕の意識は途絶えていた。
灰色の、高校生活だった。
僕こと冬崎雪斗は、ふとそんな事を思った。
高校生活も残すは卒業式だけである。
三年間同じクラスメイトだったけれど、友人はゼロ。
話し掛けられることすら、ほとんど無かった。
だから登校から下校まで、言葉を発さないのはよくある事だった。
「よーし、じゃあ帰りのホームルームはこれで終わりだ。お前たち、卒業式は遅刻するなよー」
担任教師のその言葉で、日直が号令を出す。
「起立、気をつけ、礼」
意味の無いいつものルーティンだけど、それも今日で最後だ。
明日から卒業式までの約一ヶ月間、僕たち三年生は自由登校期間に入る。
よほどの用事が無ければ学校に来ることは無いし、友達が居ない僕はクラスメイトと顔を会わせることすら無いだろう。
「よっしゃあ、これで自由だ!」
「なぁなぁ、この後カラオケ行かねぇ?」
「女子も誘わね?」
荷物をまとめていると、陽キャグループの会話が耳に入った。
放課後のカラオケなんて、僕には夢のまた夢だ。
しかも、女子も居るだなんて。
言うまでもなく、僕はクラスの中で孤立していて、クラスカーストは間違いなく最下位だろう。
目が合っただけで緊張するし、多分、挙動もおかしいと思われている。
教室でクスクスと笑い声が聞こえたら、それはきっと僕の悪口を言って笑っている声だ。
このクラスに、落ち着ける居場所なんて無かった。
それでも、不登校にならずにちゃんと高校に通ったのは我ながら凄いと思う。
小さい時から、耐えることには長けていた。
「あれ、おかしいぞ」
「何やってんだよ?」
「分からねぇ、ドアが動かねぇんだよ」
「後ろのドアも開かないんだけどぉ?」
「やだぁ、なんか怖ぁ~」
異変が起き始めたのは、それからだった。
教室の出入り口のドアが動かなくなったようだ。
不審に思った担任教師もドアを開けようと試みるが、ガタガタと音をたてるだけで、開く気配は無かった。
教室中がざわつき始めた、その時だった。
激しい揺れが、教室を襲う。
机や椅子が倒れ、立っていられないくらいの激しさである。
「きゃああぁぁっ!」
「地震か!」
「痛え!」
「みんなっ! 姿勢を低くして頭を守るんだ!」
担任教師の指示で、僕はその場で床に伏せた。
窓ガラスは割れていないが、揺れが収まる気配は無い。
「何だこれ! 床が!」
誰かが言った。
次の瞬間、床の一面が輝きだした。
僕は無我夢中で頭を守っていたけど、光を放つ床に、幾何学模様があるのがかろうじてみえた。
魔方陣。
とっさに、それが頭に浮かんだ。
そして次の瞬間には、僕の意識は途絶えていた。
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
異世界楽々通販サバイバル
shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。
近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。
そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。
そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。
しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。
「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる