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【第三章】蓮牙山攻防戦・第二次セトラ村攻防戦

【第四十一話】テジム視点

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 蓮牙山全体が、騒がしくなっていた。


 一千の王国軍が、麓に陣を敷いているらしいのだ。


 テジムは、自分が場違いな気がして居心地が悪かった。


 ゼフナクトは攻めてこないだろうと言ってはいるが、動き回っている賊徒を見ていると、とても安心はしていられなかった。


 王国軍が現れてから、すでに丸一日が経っていた。


「な、なぁ、カイト。本当に戦いは起こらないんだよな?」


 こんな時だと言うのに、カイトは一人で剣を振っていた。


「それは、分からない。戦いでは、何が起こるか分からないだろう」


 その回答が、さらにテジムを不安にさせた。


 そもそも、カイトは戦いたがっているように見える。


 村に来た時よりも、彼は明らかに何かが変わっていた。


 それに比べて、自分は何も変わっていない。
 村では明るいお調子者で通っているが、実際は臆病で、怖がりなのだ。


 カイトに蓮牙山に行くように誘われた時は、自分も変わらなければならないと思ったからだ。


 しかし、いざこの状況になってみると、怖気付いてくる。


 戦う手段と言ったら、狩りで遣っていた弓くらいだ。


 結局その日も動きは無かった。
 日が暮れると、麓に灯りが点々としている。


 王国軍の陣地で、火が焚かれているのだろう。


 山寨にはセトラ村から運び込まれた食糧があるので、食べ物には困らなかった。


 いざとなれば、一ヶ月でも食っていけるだけの蓄えがあるらしいのだ。


 夜になるとガンテスとゼフナクトが、山寨の将校たちを集めた。
 ついでに、カイトと自分もそこに顔を出す。


「王国軍は、全く動こうとしないな」


 ガンテスだった。
 敵襲に備えているのか、具足を着けたままだ。


「攻め落とすのが目的ではないのだろう。数から見ても、それは分かる」


 ゼフナクトは、地図を見下ろしながら言った。


「もしかしたら、実戦を意識した調練なのかもしれない。まぁ、後続に大軍が迫っている可能性も残っているが」


 自分では理解出来ない事が話し合われている、とテジムは思った。
 戦のことなど、全く分からないのだ。


 横のカイトに目をやると、興味深そうに聞いている。


「本気で攻めてくるつもりがないのなら、このまま守りに徹していればいいのだな」


 ガンテスだ。
 他の将校も、思い思いの意見を口にしている。


「しかし、そう思わせて伏軍で一気に攻めるという事も考えられる。とにかく、相手の動きを見ているだけでは、状況は変わらない」


 ゼフナクトがそう言うと、カイトが静かに手を挙げた。


「言ってみろ」








「今夜のうちに、山寨の騎馬隊を山に移しましょう。そして夜明けと同時に、敵に急襲するのです。その反応を見て、敵の思惑を測ればいいのです」
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