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【第三章】蓮牙山攻防戦・第二次セトラ村攻防戦
【第四十話】ゼフナクト視点
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この所、ガンテスが活き活きとしていた。
カイトと立合いをしてからだ、とゼフナクトは思った。
自分は、ガンテスと違って戦うのは苦手だった。
身体を使うよりも、頭を使って策を立てたりする方が合っているのだ。
最近の蓮牙山の課題は、どうやって人を集めるかという事だった。
セトラ村から食糧を提供してくれた事で、冬の間の食糧不足は解決したものの、今度は人が足らないのだ。
前の頭領の頃は、各地で暴れていた山賊やならず者達が次々と入山を希望してきたが、ガンテスと自分が頭領になってからは、それもかなり減ってしまった。
王国軍の輸送隊や食糧庫を襲撃しても、失敗する事が続いたからだと、ゼフナクトは考えている。
どこかで、民の耳にも入るような勝利を得なければならないのだ。
そうすれば、きっと人は集まってくるだろう。
◆◆◆◆◆
山寨の見張り台から、敵襲を知らせる鉦が鳴らされた。
それを聞いたゼフナクトは、すぐに見張り台に登って遠くを見た。
蓮牙山の南に拡がる平原に、王国軍が出現していた。
「冬が明けたら来るとは思っていたが、まさかこんなにも早いとは」
山寨の広場で調練を指揮していたガンテスが、見張り台の下までやって来た。
「ゼフナクト、王国軍か」
「そうだ。全軍でおよそ一千、その内の二百は騎馬だ」
「一千か。この山寨を攻め落とすつもりではないな」
ガンテスの言う通りだろう。
これまでも、少なくとも二千から三千の軍で攻めてきたのだ。
たった一千でこの山寨を攻めるのは、無謀だった。
王国軍は、麓から一キロ程のところで停止し、陣を組み始めた。
ゼフナクトはその様子を確認し、見張り台を降りた。
山寨の広場では、ガンテスの指示ですでに部下たちが集まっている。
ガンテスの傍には、カイトとその友人のテジムも居た。
「一キロほどの平地で陣地を築いている。たった一千で攻めてくることもないだろうが、後から大軍が来ることも考えられる。最大限の警戒をしておけ」
ゼフナクトが皆に向かってそう言うと、ガンテスが細かい指示を出していった。
「カイトとテジム、時期が悪かったな。もし戦闘になったら建物に隠れるか、山に伏せるなどして身を守れよ」
テジムは、緊張しているようだった。
セトラ村も王国軍に攻められたことがあるようだが、テジムはまだ慣れていないのだろう。
一方カイトは、関心するほど冷静だった。
いつ戦闘が始まっても参戦しようとしているのが、立っているだけで伝わってきた。
「カイト。もしかして戦おうと思っているのか」
彼は、こくりと頷いた。
カイトと立合いをしてからだ、とゼフナクトは思った。
自分は、ガンテスと違って戦うのは苦手だった。
身体を使うよりも、頭を使って策を立てたりする方が合っているのだ。
最近の蓮牙山の課題は、どうやって人を集めるかという事だった。
セトラ村から食糧を提供してくれた事で、冬の間の食糧不足は解決したものの、今度は人が足らないのだ。
前の頭領の頃は、各地で暴れていた山賊やならず者達が次々と入山を希望してきたが、ガンテスと自分が頭領になってからは、それもかなり減ってしまった。
王国軍の輸送隊や食糧庫を襲撃しても、失敗する事が続いたからだと、ゼフナクトは考えている。
どこかで、民の耳にも入るような勝利を得なければならないのだ。
そうすれば、きっと人は集まってくるだろう。
◆◆◆◆◆
山寨の見張り台から、敵襲を知らせる鉦が鳴らされた。
それを聞いたゼフナクトは、すぐに見張り台に登って遠くを見た。
蓮牙山の南に拡がる平原に、王国軍が出現していた。
「冬が明けたら来るとは思っていたが、まさかこんなにも早いとは」
山寨の広場で調練を指揮していたガンテスが、見張り台の下までやって来た。
「ゼフナクト、王国軍か」
「そうだ。全軍でおよそ一千、その内の二百は騎馬だ」
「一千か。この山寨を攻め落とすつもりではないな」
ガンテスの言う通りだろう。
これまでも、少なくとも二千から三千の軍で攻めてきたのだ。
たった一千でこの山寨を攻めるのは、無謀だった。
王国軍は、麓から一キロ程のところで停止し、陣を組み始めた。
ゼフナクトはその様子を確認し、見張り台を降りた。
山寨の広場では、ガンテスの指示ですでに部下たちが集まっている。
ガンテスの傍には、カイトとその友人のテジムも居た。
「一キロほどの平地で陣地を築いている。たった一千で攻めてくることもないだろうが、後から大軍が来ることも考えられる。最大限の警戒をしておけ」
ゼフナクトが皆に向かってそう言うと、ガンテスが細かい指示を出していった。
「カイトとテジム、時期が悪かったな。もし戦闘になったら建物に隠れるか、山に伏せるなどして身を守れよ」
テジムは、緊張しているようだった。
セトラ村も王国軍に攻められたことがあるようだが、テジムはまだ慣れていないのだろう。
一方カイトは、関心するほど冷静だった。
いつ戦闘が始まっても参戦しようとしているのが、立っているだけで伝わってきた。
「カイト。もしかして戦おうと思っているのか」
彼は、こくりと頷いた。
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