40 / 65
【第三章】蓮牙山攻防戦・第二次セトラ村攻防戦
【第三十九話】ガンテス視点
しおりを挟む
冬が終わろうとしていた。
蓮牙山に積もっていた雪も、ほとんどが溶けている。
ガンテスは、カイトという少年の事を気に入り始めていた。
セトラ村で初めて会った時から、彼には不思議なものを感じていた。
自分はカシュカと立ち合って負けたが、カイトは更に強いのかもしれない。
実際に馬に乗った七人の部下がカイトに襲いかかったが、いとも簡単に武器を弾き落としていたのだ。
かなりの手練でも、簡単に出来ることではない。
そんな彼が蓮牙山に滞在すると知った時には、内心楽しみだった。
蓮牙山に到着したカイトは興味深そうに見学し、翌日には部下達の調練に参加するようになった。
調練に参加する時はいつも大きな槍を背負っていた。
その槍には王国軍の紋章が彫られていて、セトラ村を襲撃した王国軍の指揮官から貰ったという。
カイトに頼んでその槍を持たせてもらった事があったが、ガンテスは構えるだけで精一杯だった。
カイトも同じで、いつかその槍を遣いこなせるように毎日鍛錬していた。
◆◆◆◆◆
ある日、ガンテスはカイトを呼び出した。
「カイト。お前は元武術師範のドライスに剣術を教わったんだったな」
「はい。たった数ヶ月でしたが、剣だけでなく、槍や棒術、弓や素手での格闘術など、様々な武術を教えて頂きました」
カイトの身体つきは、実にしっかりとしていた。
姿勢を見ただけで、強いのだと分かる程だ。
「俺と、立ち合ってみないか」
強い人間と会うと、つい力比べをしてみたくなるのだ。
「はい。武器は、何にしましょう」
何とでもないという感じで、カイトは言った。
しかし、自信があるという態度でもない。
やはり面白い少年だと、ガンテスは思った。
「俺は槍を遣うが、武器は何でもいい。好きなのを遣え」
そう言うと、カイトはいつも遣っていた剣を抜いた。
カシュカから貰った剣らしい。
構え合う。
その瞬間、ガンテスは不思議な感覚を覚えた。
恐怖などではない。
むしろ、興奮や高揚に近かった。
それなのに、固まったように自分の身体が動かない。
一瞬だけ混乱したが、すぐに気を取り直した。
カイトに、隙が無いからだ。
先に動いたのは、カイトの方だった。
ほんの少し身体を動かしただけのようにガンテスには見えたが、恐ろしく鋭い斬撃が目の前をかすった。
鳥肌が立つ。
ガンテスも槍を突いた。
自然な動きで突きを避け、避けた動きの延長線で斬撃を繰り出してきた。
応用力も、ちゃんと持ち合わせているようだ。
やはり、カシュカよりも強い。
セトラ村で闘ったのがカイトだったら、もっと早くに倒されていたのかもしれない。
そう思った直後には、彼の剣が眉間にかざされていた。
やはりカイトは間違いなく強いのだと、ガンテスは肝を冷やしながら思った。
蓮牙山に積もっていた雪も、ほとんどが溶けている。
ガンテスは、カイトという少年の事を気に入り始めていた。
セトラ村で初めて会った時から、彼には不思議なものを感じていた。
自分はカシュカと立ち合って負けたが、カイトは更に強いのかもしれない。
実際に馬に乗った七人の部下がカイトに襲いかかったが、いとも簡単に武器を弾き落としていたのだ。
かなりの手練でも、簡単に出来ることではない。
そんな彼が蓮牙山に滞在すると知った時には、内心楽しみだった。
蓮牙山に到着したカイトは興味深そうに見学し、翌日には部下達の調練に参加するようになった。
調練に参加する時はいつも大きな槍を背負っていた。
その槍には王国軍の紋章が彫られていて、セトラ村を襲撃した王国軍の指揮官から貰ったという。
カイトに頼んでその槍を持たせてもらった事があったが、ガンテスは構えるだけで精一杯だった。
カイトも同じで、いつかその槍を遣いこなせるように毎日鍛錬していた。
◆◆◆◆◆
ある日、ガンテスはカイトを呼び出した。
「カイト。お前は元武術師範のドライスに剣術を教わったんだったな」
「はい。たった数ヶ月でしたが、剣だけでなく、槍や棒術、弓や素手での格闘術など、様々な武術を教えて頂きました」
カイトの身体つきは、実にしっかりとしていた。
姿勢を見ただけで、強いのだと分かる程だ。
「俺と、立ち合ってみないか」
強い人間と会うと、つい力比べをしてみたくなるのだ。
「はい。武器は、何にしましょう」
何とでもないという感じで、カイトは言った。
しかし、自信があるという態度でもない。
やはり面白い少年だと、ガンテスは思った。
「俺は槍を遣うが、武器は何でもいい。好きなのを遣え」
そう言うと、カイトはいつも遣っていた剣を抜いた。
カシュカから貰った剣らしい。
構え合う。
その瞬間、ガンテスは不思議な感覚を覚えた。
恐怖などではない。
むしろ、興奮や高揚に近かった。
それなのに、固まったように自分の身体が動かない。
一瞬だけ混乱したが、すぐに気を取り直した。
カイトに、隙が無いからだ。
先に動いたのは、カイトの方だった。
ほんの少し身体を動かしただけのようにガンテスには見えたが、恐ろしく鋭い斬撃が目の前をかすった。
鳥肌が立つ。
ガンテスも槍を突いた。
自然な動きで突きを避け、避けた動きの延長線で斬撃を繰り出してきた。
応用力も、ちゃんと持ち合わせているようだ。
やはり、カシュカよりも強い。
セトラ村で闘ったのがカイトだったら、もっと早くに倒されていたのかもしれない。
そう思った直後には、彼の剣が眉間にかざされていた。
やはりカイトは間違いなく強いのだと、ガンテスは肝を冷やしながら思った。
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う
月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる