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【第二章】蓮牙山同盟

【第三十七話】新しい役目

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 ドライスと母のソランは、東に向かったと村長から聞かされた。


 オトラス王国から追われているのだから、その反対方向に行くのは当然のことだろう。


 カシュカは少し前から、村を去ることを知っていたらしい。


 俺は止めるだろうと分かっていたから、ギリギリまで言わなかったのだろうか。


 考えても、何も晴れなかった。


 村長の屋敷に呼ばれたのは、翌日だった。


「カイト、お前には蓮牙山に行ってもらう」


 唐突な事だった。


「俺が、ですか」


「そうだ。蓮牙山からやって来た人達のおかげで、この村の防備はかなり充実してきた。しかし、それらを活用した闘い方を、我々は知らない。お前には、蓮牙山でそれを学んできてもらいたいのだ」


 村長の言っている事は、理にかなっている。


 しかしそれだけでなく、俺に気晴らしをさせようとしているのかもしれなかった。


 俺にとっても村にとっても、良い機会かもしれない。


「分かりました。では、テジムも連れてって良いですか?」


「テジムか? まあ、よいが」


 テジムとは、ここ最近会っていなかった。


 テジムは山で狩りをするのが多くなってきたし、俺も修行やら山賊の件で忙しかったのだ。


 彼なら、きっと喜んで着いてきてくれるだろう。


「蓮牙山からやって来た五十人のうち、三十人が戻るそうだ。彼らと共に、蓮牙山に行きなさい」


 村での作業は、一応は落ち着いたらしい。


 残った二十人でも、充分に役立ってくれるだろう。


 俺はそのままの足でテジムの家に行った。


「おお、久しぶりじゃないか」


 テジムは、相変わらず明るかった。


 彼は畑仕事よりも狩りの方が得意らしく、弓はかなりの腕前で、気配を消して行動するのが上手い。


「突然だが、俺と蓮牙山に行かないか? 村長に言われて、蓮牙山の様子を見てくるんだが」


「俺も一緒に良いのか? 言っとくけど、戦うのは出来ないぞ」


「ああ、蓮牙山の様子や設備なんかを見てくるだけだよ。何日滞在するかは、まだ分からないけど」


「分かった。是非連れてってくれ」


 テジムはこの村から出たことが無いらしく、かなり楽しみにしている様子だった。


 出立は翌日だったので、俺も小屋に戻って支度した。


 カシュカからもらった剣と、ジラサからの槍も持っていく事にした。


 あれから身体を更に鍛えたおかげで、ジラサからもらった槍も何とか持てるようになっている。


 しかし、まだ上手く遣えるとは言えなかった。


 ドライスの修行は、剣が中心だったのだ。


 今ジラサと戦ったら、勝てるだろうか。








「蓮牙山にいる間、少し練習してみるか」
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