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【第二章】蓮牙山同盟
【第三十三話】同盟
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蓮牙山の山賊達を連れて、俺たちはセトラ村に帰ってきた。
カラバ村長が村の人たちに説明してくれたらしく、不安そうにしている人はいない。
山賊達は歓迎されている事に居心地が悪いのか、大人しくまとまっていた。
「小さいが、明るい村だな」
ゼフナクトが言った。
セトラ村が王国軍を撃退した事は、オトラス王国内でも噂になっているらしい。
それもあって、ガンテスはこの村を頼ってきたのだ。
肝心の食糧は、村の倉に相当量が蓄えられている。
村で収穫した穀物の他に、王国軍から奪った戦馬を売った銭で、多くの食糧を確保していたのだ。
◆◆◆◆◆
一行は、カラバ村長の屋敷に集まった。
村長にドライス、カシュカと俺、そして蓮牙山の頭領二人が列席し、食事が振る舞われた。
ゼフナクトが連れてきた二十人ほどの部下達は屋敷の庭で、自警団たちと共に焚き火を焚いて鍋を作っている。
「蓮牙山の代表として、まずは食糧を提供してくれた事に感謝する」
頭領の二人が並んで頭を下げた。
「よしなさい。同盟関係とは、対等な仲になるという事だ。その様な堅苦しい挨拶はしなくてもいいのです」
カラバ村長が、優しく言った。
食事を摂りながら、お互いの状況を報告しあった。
セトラ村には食糧の蓄えが充分あるものの、王国軍が攻めてきた時に必要な防備が整っていない。
野獣よけの柵などがあるものの、戦では何の役にも立たないのだ。
馬止めの柵や堀などを設置したいが、作れる者が居なかった。
しかし、蓮牙山から人を回してもらえる事になったので、冬が終わるまでには設置出来そうだった。
一方、蓮牙山は武器や拠点の防備に問題は無いものの、食糧が不足しているのは言うまでもない。
蓮牙山には総勢で三百人ほどが集まっているという。
前の頭領の時には五百人が居たそうだが、ガンテスとゼフナクトが頭領になった時に一部が抜けてしまい、その上王国軍との戦闘で犠牲になった者も多く、今では三百人ほどになっているのだ。
「オトラス王国軍は、これまでにも賊徒討伐として軍を差し向けてきたが、その全てを撃退している」
ガンテスは誇らしげに言ったが、ゼフナクトの顔は暗い。
「撃退はしたが、犠牲が多すぎたのだ。入山を希望する者よりも、戦死する者の方が多い。現にこの一年足らずで、二百人も減っているのだ」
お互いに弱点や課題を抱えているものの、お互いの協力があれば少しは改善されるだろう。
村長と頭領達で細かい所までやり取りをし、翌日には食糧を積んだ太平車(荷馬車よりも容量が多く、牛で引く台車)が蓮牙山へ向けて出発した。
まだ寒さが厳しく、冬が開けるのはもう少し先だろうと俺は思った。
カラバ村長が村の人たちに説明してくれたらしく、不安そうにしている人はいない。
山賊達は歓迎されている事に居心地が悪いのか、大人しくまとまっていた。
「小さいが、明るい村だな」
ゼフナクトが言った。
セトラ村が王国軍を撃退した事は、オトラス王国内でも噂になっているらしい。
それもあって、ガンテスはこの村を頼ってきたのだ。
肝心の食糧は、村の倉に相当量が蓄えられている。
村で収穫した穀物の他に、王国軍から奪った戦馬を売った銭で、多くの食糧を確保していたのだ。
◆◆◆◆◆
一行は、カラバ村長の屋敷に集まった。
村長にドライス、カシュカと俺、そして蓮牙山の頭領二人が列席し、食事が振る舞われた。
ゼフナクトが連れてきた二十人ほどの部下達は屋敷の庭で、自警団たちと共に焚き火を焚いて鍋を作っている。
「蓮牙山の代表として、まずは食糧を提供してくれた事に感謝する」
頭領の二人が並んで頭を下げた。
「よしなさい。同盟関係とは、対等な仲になるという事だ。その様な堅苦しい挨拶はしなくてもいいのです」
カラバ村長が、優しく言った。
食事を摂りながら、お互いの状況を報告しあった。
セトラ村には食糧の蓄えが充分あるものの、王国軍が攻めてきた時に必要な防備が整っていない。
野獣よけの柵などがあるものの、戦では何の役にも立たないのだ。
馬止めの柵や堀などを設置したいが、作れる者が居なかった。
しかし、蓮牙山から人を回してもらえる事になったので、冬が終わるまでには設置出来そうだった。
一方、蓮牙山は武器や拠点の防備に問題は無いものの、食糧が不足しているのは言うまでもない。
蓮牙山には総勢で三百人ほどが集まっているという。
前の頭領の時には五百人が居たそうだが、ガンテスとゼフナクトが頭領になった時に一部が抜けてしまい、その上王国軍との戦闘で犠牲になった者も多く、今では三百人ほどになっているのだ。
「オトラス王国軍は、これまでにも賊徒討伐として軍を差し向けてきたが、その全てを撃退している」
ガンテスは誇らしげに言ったが、ゼフナクトの顔は暗い。
「撃退はしたが、犠牲が多すぎたのだ。入山を希望する者よりも、戦死する者の方が多い。現にこの一年足らずで、二百人も減っているのだ」
お互いに弱点や課題を抱えているものの、お互いの協力があれば少しは改善されるだろう。
村長と頭領達で細かい所までやり取りをし、翌日には食糧を積んだ太平車(荷馬車よりも容量が多く、牛で引く台車)が蓮牙山へ向けて出発した。
まだ寒さが厳しく、冬が開けるのはもう少し先だろうと俺は思った。
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