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【第二章】蓮牙山同盟

【第二十五話】蓮牙山

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 山賊と聞くと下品で野蛮な印象があったが、ガンテスと名乗った頭領は、立ち振る舞いはむしろしっかりとしていた。


 後ろに控えていた七人も、軍隊かと思う程しっかりとしていた。


「山賊の言う事など聞けるか。すぐに立ち去れ」


 カシュカはよほど山賊が嫌いなのか、始めから聞く気は無いようだった。


 彼は、村を護るという使命感が人一倍強いのだ。


 このままだと、埒が明かなそうだ。


「カシュカ。話ぐらいは聞こう」


 俺がそう言うと、カシュカは少しだけ落ち着いた様子だった。


「俺はセトラ村自警団の団長をしているカシュカ。こっちは団員のカイトだ」


「カシュカに、カイトだな」


「それで、話とは?」


 ガンテスは馬から飛び降りた。


「蓮牙山に、食糧を分けてもらえないだろうか」


「なんだと、なぜ山賊に食糧を分けなければならないのだ」


 カシュカの顔は、あからさまに怒っていた。


「冬の間の食糧が、足らないのだ。このままでは、餓死者が出るかもしれない」


「足らないだと、笑わせるな。お前たち山賊は、罪の無い民や商人を殺し、物を奪ってきただろうが。そうした物資が、蓄えてあるだろう」


 カシュカの強い言葉に、ガンテスは深く頭を下げていた。


「村や商人から略奪をしていたのは、前の頭領だった時なのだ。俺が蓮牙山の頭領になってからは、そういった略奪や虐殺は一切禁じている」


「前の頭領だと」


 カシュカの表情が、僅かに変わった。


「蓮牙山の賊は、もともと世直しを掲げて集まったのだ。しかし、いつの間にか民から物を奪う山賊に堕ちてしまった。それを変えるために、俺は前の頭領を殺し、新たな頭領になったのだ」


「しかし、三年前にも蓮牙山の山賊が村に来たぞ」


 カシュカがさっき言っていた、自警団で追い返したという話だろう。


「俺が頭領になったのは、一年ほど前からだ」


 カシュカの方が、動揺し始めた。


「民や商人から物を奪わずに、それまでどうやって食ってきたのだ」


「まず、農耕を始めた。自分で食う分は自分で作ろうとしたのだ。それと、不正を働いている軍人や商人の蔵を襲撃し、半分は自分たちの糧に、もう半分は近隣の集落に分け与えた」


 ようは、義賊のようなことをしていたのだろう。


 オトラス王国に限らず、どこの国でも不正や賄賂が横行しているという。


 そういった国の腐敗が許せず、反乱や革命運動が活発になっていると、村長から教わったことがある。


「村を襲うことも、一切していない。しかし、王国軍や悪徳商人の方も警護を厳しくしてしまい、失敗する事が多くなったのだ」





「それで、冬の間の食糧が足りないのか」
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